高齢者が地域を守る!こども110番の家に参加する方法とそのやりがい

地域

1. 「こども110番の家」とは?地域で子どもを守る安心の仕組み

「こども110番の家」とは、通学中や外出中の子どもたちが危険を感じたとき、助けを求めて駆け込むことができる安全な場所のことです。自宅や店舗、事業所などが地域の協力のもと登録され、「子どもの駆け込み場所」として役割を果たしています。門や玄関に「こども110番の家」や「こどもSOSの家」といったステッカーやプレートが掲げられているのを見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。

この制度は地域によって名称や仕組みに多少の違いがあります。たとえば、東京都や埼玉県では「こども110番の家」という名称が一般的ですが、大阪府や愛知県などでは「こどもSOSの家」「こどもを守る家」「子ども見守り協力店」などと呼ばれることもあります。いずれも目的は共通しており、「子どもがトラブルに巻き込まれそうなときに、安全に助けを求められる場所を提供する」ことです。

具体的には、不審者に声をかけられた、つきまとわれた、道に迷ってしまったなどの場面で、子どもが助けを求めることが想定されています。駆け込まれた場合、家主や店舗の責任者はすぐに警察や学校、保護者へ連絡を取り、適切な対応をとるという流れになっています。

この取り組みは、学校やPTA、警察、市区町村の防犯協会などが連携して進めており、住民が主体となって地域の安全を守る一つの防犯活動とされています。

子どもたちにとって、街中で「ここに逃げ込めば安心できる」と思える場所があることは、何よりも心強いものです。そして、それを支えているのが、地域に暮らす高齢者や主婦、個人商店の方々など、日常的に地域に目を配ることができる人たちです。


2. 高齢者が担う重要な役割とは?防犯と見守りの第一線に立つ

「こども110番の家」の活動において、高齢者が果たす役割は非常に大きなものです。地域に根差し、顔なじみの人が多いシニア世代は、子どもたちにとっても安心できる存在であり、地域防犯の最前線に立つことができます。

まず、高齢者は日中に自宅にいることが多いため、こども110番の家としての条件に合いやすいという点が挙げられます。共働き世帯が増え、昼間に不在がちな家庭が多くなる中、在宅率の高い高齢者の協力は、防犯ネットワークを維持・強化する上で非常に貴重です。

また、長年地域に住んでいる方は、近所の子どもや保護者、他の住民とのつながりが強く、異変にもすぐ気づくことができます。不審な人物の出没や、見慣れない車の停車など、地域の“ちょっとした違和感”を見逃さない観察力と経験が、防犯活動には欠かせません。

さらに、子どもに声をかけたり、落ち着かせたりといった対応においても、高齢者の温かみや包容力が大いに役立ちます。子どもが駆け込んできたときに「大丈夫だよ」「怖かったね」と優しく受け入れることで、子どもの不安は大きく軽減されます。そうした一言一言が、地域全体の信頼と絆を深めるきっかけにもなります。

実際、各自治体では高齢者による防犯活動が広がっており、警察や学校と連携しながら、通学路の見守りや安全マップ作りに貢献している例もあります。文部科学省の調査(※1)によると、地域の見守り活動におけるシニアの参加割合は年々増加傾向にあり、「自分にもできることがある」と感じた高齢者が自主的に関わるケースが増えていることが分かります。

高齢者が「こども110番の家」として地域を支えることは、単に防犯という役割にとどまらず、社会的なつながりを築く手段にもなっています。地域における“頼れる存在”として、安心と信頼を生み出す大きな力になっているのです。


(※1)文部科学省「地域と学校の連携・協働による安全・安心な学校づくり事例集」(2022年)


3. どうすれば参加できる?こども110番の家になるための手続きと条件

「こども110番の家」になるには、特別な資格や費用は必要ありませんが、一定の条件や手続きが必要です。以下では、主な流れと参加条件について詳しくご紹介します。

● 参加条件

各自治体によって若干の違いはありますが、共通して求められる条件は次の通りです。

日中に原則として誰かが在宅していること
子どもが助けを求めてきた際に、安全な場所を提供できること
警察や学校との連絡に協力できること
継続的に協力の意思があること

特に高齢者は、退職後に自宅にいる時間が長いことから、この条件に合致しやすく、多くの自治体でシニア層の登録が進んでいます。


● 登録の手続き

一般的な登録の流れは以下のようになります。

1.市区町村の防犯担当窓口、または地元の警察署・交番に相談
2.申請書類の提出(必要に応じて面談や説明会の参加)
3.防犯協会や教育委員会の承認を受ける
4.ステッカーやプレート(「こども110番の家」など)の配布・掲示
5.年1回程度の活動確認や連絡事項の共有

    申請書には「氏名」「住所」「連絡先」「在宅の時間帯」「活動への理解」などを記載します。多くの自治体では、町会や自治会を通じての申請も可能です。


    ● 活動内容は難しくない

    「何かあったときにどう対応すればいいのか不安」という声もありますが、登録前に自治体や警察から対応マニュアルや説明資料が配布されるため、安心して始められます。緊急時にはすぐ警察に通報し、子どもを落ち着かせながら保護するという対応が基本です。

    また、見守り活動を通じて、近所の子どもたちとのあいさつや交流が生まれるなど、自然な関わりの中で活動が進むケースが多くあります。


    ● こんな人におすすめ

    ・地域に貢献したいけれど、体力には自信がない方
    ・自宅でできる社会参加を探している方
    ・子どもや孫世代と関わりを持ちたい方

    このような方にとって、「こども110番の家」は無理なく取り組める、やりがいのある活動です。


    4. 高齢者にとってのやりがい──地域貢献がもたらす生きがいと喜び

    「こども110番の家」の活動は、地域の安全を守るだけでなく、参加する高齢者にとっても多くのやりがいをもたらします。退職後の生活で「社会とのつながりが減った」「毎日に張り合いがない」と感じていた方が、この活動を通じて充実感を得ているケースは少なくありません。

    ● 人に必要とされる実感

    子どもたちが「こんにちは!」と元気に声をかけてくれる。保護者や地域の方から「いつもありがとう」と声をかけられる――そんな小さな出来事の一つひとつが、「自分はまだ地域の役に立てている」という実感につながります。特別な技術や体力がなくても、人の役に立てるというのは、誰にとっても大きな自信になります。


    ● 社会的孤立を防ぎ、健康にも効果

    高齢になると、人との交流が減りがちになりますが、こども110番の家として活動することで、自然と人との関わりが生まれます。子どもや保護者との日常的なあいさつ、見守りボランティアとの情報交換などを通じて、心身ともに活性化され、孤立の防止にもつながります。

    また、地域活動に参加することが認知症予防やうつの軽減に効果があるとした研究もあり(※1)、医療や福祉の現場でも注目されています。単なる防犯活動ではなく、「健康寿命を延ばす取り組み」としても評価できるのです。


    ● 孫世代とのふれあいの喜び

    なかには「自分の孫と重なって見える」「子どもたちの成長を見るのが楽しみ」と語るシニアも多くいます。遠くに住む孫と会えないことが多くても、地域の子どもたちとふれあうことで、自然と心が和み、活力が湧いてくるという声は少なくありません。


    ● 新たな仲間との出会いも

    地域の防犯活動には、同じように参加している高齢者が多く、定期的な連絡会や研修、町内会との交流を通じて、新たな人間関係が生まれます。趣味や価値観を共有できる仲間ができ、「これからも長く続けたい」と感じる方が増えているのもこの活動の魅力です。


    (※1)国立長寿医療研究センター「高齢者の社会参加と健康寿命に関する研究報告」(2021年)


    5. まとめ:地域の安心と自分の生きがいを両立できる活動とは

    「こども110番の家」は、子どもたちが安心して暮らせる地域づくりに欠かせない存在であり、同時に高齢者にとっても大きな意味を持つ活動です。特別なスキルや体力がなくても、自宅にいながら、地域の安全に貢献できるという点で、多くのシニアにとって現実的で始めやすい取り組みといえるでしょう。

    活動を通じて得られるのは、防犯という社会的役割の遂行だけではありません。人とのつながり、感謝の言葉、子どもたちの笑顔、そして「自分はまだまだ必要とされている」という確かな実感。これらすべてが、高齢者にとっての生きがいとなり、健康的な日常を支える原動力になります。

    地域全体で子どもを守るという意識が高まるなかで、「こども110番の家」としての参加は、まさに“地域と共に生きる”という実践の一つです。小さな取り組みであっても、それは確実に誰かの命を守り、暮らしを支える力になっています。

    退職後の生活にやりがいを求める方、地域とつながりたい方、日々の暮らしに少しでも意味を感じたい方にとって、「こども110番の家」は、理想的な活動といえるでしょう。地域の安心と、自分自身の生きがい。その両方を実現する第一歩として、ぜひ検討してみてください。

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