知らないと損!高年齢者雇用安定法でシニア人材を戦力化する方法

【企業様向け】シニア採用

1. 高年齢者雇用安定法とは?押さえておくべき基本ポイント

改正の背景と制度の目的

少子高齢化が進行する日本において、労働力人口の減少は企業経営にとって避けられない課題となっています。そのなかで、高齢者の活躍推進を目的に制定されたのが「高年齢者雇用安定法」です。特に2021年の法改正では、従来の「65歳までの雇用確保義務」に加えて、「70歳までの就業確保措置」が企業の努力義務として新たに盛り込まれました。

この制度の根底には、「人生100年時代」の到来と「生涯現役社会」の実現があります。高齢者が年齢に関係なく、自らの希望に応じて長く働ける環境づくりを目指すものであり、企業にもその姿勢が求められているのです。


企業に課される「70歳までの就業確保措置」とは

改正法により企業は、以下のいずれかの措置を講じることが努力義務となりました(出典:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の概要」)。

1.70歳までの定年延長
2.70歳までの継続雇用制度の導入(再雇用・勤務延長)
3.定年廃止
4.雇用以外の就業機会提供(フリーランス契約、社会貢献事業への参加など)

    これらは“努力義務”ではあるものの、対応が進んでいる企業ほど、シニア層の活用に成功し、採用競争力でも一歩先を行っています。


    2. シニア人材を活かす企業が増えている理由

    人手不足時代におけるシニア層の価値

    現在、多くの企業が人手不足に直面しています。特に中小企業や地方企業においては、若年層の採用が思うように進まず、業務が回らないケースも少なくありません。そのなかで注目されているのが、豊富な経験と高い就業意欲を持つシニア層の人材です。

    総務省の「労働力調査(令和5年)」によると、65歳以上の就業者数は912万人に達し、10年間で約53%も増加しています。このデータは、多くのシニアが「まだ働きたい」「社会に貢献したい」と考えていることを示しています。

    企業にとっては、この意欲の高い層を戦力化することが、採用難を乗り越える有効な手段となり得るのです。


    年齢を理由にしない実力主義への転換が始まっている

    かつては「年を取れば引退」「定年で一線を退く」が当たり前とされてきましたが、今やその常識も変わりつつあります。年齢よりも実力や経験、そして役割への適性を重視する“実力主義型”の人事制度を導入する企業が増えています。

    例えば、定年後の再雇用においても、従前の役割と給与水準を維持する仕組みや、正社員と同様に責任あるポジションを任せる仕組みを整えている企業が注目されています。これにより、シニア層のモチベーションが維持され、若手への技術継承や組織の安定化にもつながっているのです。

    年齢で区切るのではなく、「働く意志と能力がある限り活躍できる」仕組みを整えることが、これからの人材戦略には欠かせません。


    3. 高年齢者雇用安定法を活かす3つの実践策

    制度対応と同時に行うべき業務再設計

    高年齢者雇用安定法に対応するうえで、多くの企業が見落としがちなのが「業務設計の見直し」です。シニア人材の活用には、体力的な負荷を軽減し、経験や知識を活かせるポジションを作る工夫が必要です。

    たとえば、製造業であれば重量物を扱う作業から品質管理や後進育成にシフトさせたり、小売業であればレジ対応ではなく案内や商品補充など比較的負担の少ない業務に振り分けたりすることが考えられます。

    これは「業務分解」とも呼ばれ、企業全体の効率化にもつながります。若手とシニアそれぞれが得意とする業務に集中できる体制をつくることが、長期的な戦力化のカギとなります。


    再雇用・継続雇用制度の見直しポイント

    制度対応の中核となるのが「再雇用・継続雇用制度」です。これまでのように「形だけの雇用延長」「名ばかりの再雇用」では、シニア人材の活躍は見込めません。実力に応じた役割や待遇を明確に設定し、モチベーションを維持することが求められます。

    見直しのポイントは以下の3つです。

    ・職務内容の明文化(責任の範囲と役割)
    ・給与体系の納得性(成果や貢献度に応じた水準設定)
    ・評価制度の再整備(年齢に偏らない公平な基準)

    これらを整備することで、シニア層にも「この会社でなら続けて働きたい」と思ってもらえる環境を実現できます。


    教育・研修で新しい役割に適応させる仕組み

    制度や制度設計だけでなく、「学び直し」の環境を整備することも重要です。特にITリテラシーや新しい業務手順への対応に不安を感じるシニア層も多いため、eラーニングやOJTを通じて段階的に慣れさせることが大切です。

    企業によっては、「リスキリング研修」「職場適応トレーニング」など、60代・70代に合わせたプログラムを用意し、再配置や業務転換に成功している例もあります。

    高年齢者雇用安定法の目的は“就業機会の確保”だけではありません。“活躍の場の創出”まで実現することが、本当の意味での制度活用といえるでしょう。


    4. 活用できる助成金・支援制度も併せてチェック

    主な高齢者雇用関連助成金の一覧

    高年齢者雇用安定法への対応を進めるうえで、企業の負担を軽減してくれるのが「助成金制度」です。特にシニア人材の採用・継続雇用を検討している企業にとって、活用価値は非常に高いものとなっています。以下に代表的な助成金を紹介します。

    1.65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース 等)
     定年の引き上げ、定年制の廃止、継続雇用制度の導入に対して助成。
     例:65歳定年の導入で最大160万円の支給(※条件により変動)
     出典:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構

    2.特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
     60歳以上のハローワーク紹介人材を雇用した企業に支給。
     例:中小企業であれば最大60万円(1年ごとに30万円×2回)
     出典:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金」

    3.トライアル雇用助成金(高年齢者トライアルコース)
     試用期間を設けてシニア人材を受け入れることで、職場定着を支援。
     1人あたり月額4万円(最大3カ月)
     出典:厚生労働省「トライアル雇用助成金」

      これらの助成金は、制度変更時だけでなく、実際の採用現場での実務にも活用できるため、ぜひ活用を検討しましょう。


      申請における注意点と成功事例のポイント

      助成金は「条件を満たせば必ずもらえる」ものではありません。よくある申請失敗の要因には以下のようなものがあります。

      ・ハローワーク経由での採用が要件となっていることを見落とした
      ・雇用契約書や就業規則の内容と助成金の要件が一致していない
      ・申請時期や提出書類に不備があった

      こうしたミスを防ぐには、制度に詳しい社労士や労務管理担当者と連携するのが得策です。特に中小企業にとっては、外部の支援機関(例:商工会議所、地域の雇用支援センター)を活用することでも申請成功率を高めることができます。

      また、成功企業の多くは「制度活用だけで終わらせない」姿勢を持っています。つまり、助成金をきっかけに制度を整備し、その後も継続的にシニア人材の育成・活用に取り組んでいるのです。


      まとめ:制度をチャンスに変え、シニア戦力化を進めよう

      高年齢者雇用安定法は、単なる「制度対応」ではなく、企業にとって“人材戦略の転換点”ともいえる重要な法律です。放置すれば、将来的な人手不足や人材定着の課題に直面する一方、うまく活用すればシニア人材という豊富なリソースを戦力に変えることができます。

      特に、以下の3点を実行することで、法制度を「攻めの採用戦略」に変えることが可能です。

      制度の正確な理解と社内体制の整備
      シニア層に適した業務設計と処遇の見直し
      助成金、支援制度の積極的な活用

      今後、70歳まで働くことが当たり前の時代になれば、「年齢に関係なく活躍できる企業」こそが人材市場で選ばれるようになります。

      これからの採用活動は、「若手だけを求める時代」から、「多様な世代が力を発揮できる時代」へと確実に変化しています。高年齢者雇用安定法をきっかけに、ぜひ貴社でもシニア人材の活用を前向きに検討してみてください。

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