1.なぜ“働くシニア”が増えているのか?
高齢化が進む日本では、「元気な高齢者=元気シニア」が注目されています。総務省の労働力調査(※)によると、65歳以上の就業者数は2023年時点で約920万人と過去最多を更新しました。これは高齢者全体の約25%にあたる数字であり、もはや「高齢者が働くこと」は特別なことではなくなっています。
背景にはさまざまな理由がありますが、まず大きいのは経済的な事情です。年金だけでは生活が成り立たないという声は多く、特に単身高齢者世帯では実感を伴って語られる問題です。総務省の家計調査によると、高齢単身無職世帯の月平均支出は約16万円。対して年金等の平均収入は13〜14万円程度と、毎月2〜3万円の赤字が生まれています。
また、働くこと自体が生活のリズムや目標を生み出し、日常に張り合いをもたらすことも見逃せません。長年会社員として活躍してきた人ほど、急な引退後に「することがない」「社会との接点がなくなった」と感じるケースが多く、再び働くことで生きがいを取り戻す人も増えています。
つまり、シニアが働く理由は「お金」だけでなく「社会とのつながり」「健康維持」など、心身の充実と深く結びついているのです。
※参考:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2023年」
2.働くことで得られる“元気”と“やりがい”
働くことは、単に収入を得る手段にとどまらず、シニアの心身に良い影響を与えることが多くの調査で明らかになっています。特に70代以降は、日々の生活に“目的”があるかどうかが、健康寿命を大きく左右します。
たとえば、軽作業や接客業などで体を動かすことで、自然と運動量が増え、足腰の衰えや筋力低下を防ぐ効果があります。座りっぱなしや寝たきりになると加速度的に体力が落ちてしまいますが、働くことで「移動」「立ち仕事」「会話」などの軽い活動が日常に組み込まれるため、無理なく健康を保つことができます。
さらに注目したいのが“社会的交流”によるメンタル面の効果です。定期的に職場に通い、人と話し、役割を果たすことで、「自分が必要とされている」という実感が生まれ、うつ病や孤独感の予防にもつながります。高齢者のうつ病の大きな要因は「孤立感」と言われており、それを防ぐ上でも“働くこと”は非常に有効なのです。
また、「ありがとう」と言ってもらえる仕事に就くことで、達成感や自己肯定感も得られます。70代であっても新しいことに挑戦したり、誰かの役に立てる喜びを味わうことで、表情が明るくなったという声も多く聞かれます。
このように、働くことはシニアにとって、健康の維持とともに「自分らしさ」や「社会との接点」を持ち続ける貴重な手段となっています。
3.高齢者が活躍する職場の特徴とは?
「働きたい」という意欲を持つシニアが安心して活躍できる職場には、いくつかの共通した特徴があります。高齢者の強みを活かしながら、無理なく働ける環境づくりがされていることが、職場選びの重要なポイントです。
まず注目したいのが、「柔軟な勤務形態」が整っているかどうかです。週2〜3日、1日4時間など、体力に合わせたシフト制を導入している企業では、シニア層の定着率も高く、長く働き続けることができる傾向にあります。また、急な通院や家族の用事にも対応しやすい「相談しやすい風土」も大切です。
次に、「業務内容が過度に複雑ではない」こともポイントです。特別なITスキルが必要だったり、短期間で多くを覚えなければならない職場は、シニアには負担が大きくなりがちです。反対に、接客や清掃、施設の受付・案内、商品陳列など、体への負担が少なく、過去の社会経験を活かせる仕事は人気があります。
また、高齢者を積極的に受け入れている企業は、「職場の雰囲気」にも違いがあります。年齢にとらわれず、感謝や尊重の気持ちを持って接してくれる職場では、自分の居場所を実感でき、モチベーションの維持にもつながります。
近年では、シニア層専用の研修制度や、働く前に職場体験ができるプログラムを設ける企業も増えています。これにより、働く前に不安を解消でき、自信を持ってスタートできるのも大きなメリットです。
シニアが安心して働ける職場には、「無理のない業務設計」「理解ある職場環境」「過去の経験を活かせる仕事」という三拍子がそろっていることが重要なのです。
4.シニア世代におすすめの仕事タイプとは?
70代でも無理なく続けられ、やりがいを感じられる仕事にはいくつかの傾向があります。特に「元気シニア」として活動的に暮らしたい方には、以下のような仕事タイプが人気です。
1. 長く続けやすい「軽作業」や「接客業」
軽作業とは、商品の仕分け・検品・袋詰めなど、体への負担が比較的少ない業務のこと。一定のペースで行う作業が多く、短時間勤務にも対応しやすいため、シニアにとって始めやすい仕事です。また、清掃や施設管理などの業務も人気があります。体を適度に動かしながらも、激しい力仕事は少ないため、健康維持にもつながります。
接客業も、長年の人生経験を活かせる仕事のひとつです。例えばスーパーのレジや品出し、飲食店のホールスタッフ、受付業務などでは、「笑顔」や「丁寧な応対」が求められます。こうした仕事は、若者以上に人生経験豊富なシニア層が信頼されやすく、現場でも重宝されています。
2. 地域とつながる「地域密着型」の仕事
地域の活動や人とのつながりを大切にしたい方には、「見守りスタッフ」「配達・巡回」「公共施設の案内係」など、地域密着型の仕事がおすすめです。自分の暮らす街で働くことで、移動の負担も少なく、近隣住民との交流も生まれます。
また、近年では「園芸ボランティア」や「地域の子ども見守り隊」など、非営利ながら充実感を得られる活動も広がっています。これらは報酬は少ないものの、やりがいが大きく、精神的な充足感につながるため“元気シニア”を目指すうえで非常に有意義です。
3. オンラインでできる仕事も
体力に自信がない場合は、在宅でできる仕事に注目するのも一案です。データ入力や文章作成、文字起こし、カスタマーサポートなど、パソコンを使った仕事は年齢に関係なく活躍できる場があります。初歩的なスキルがあれば始められるものも多く、最近ではシニア向けのパソコン教室やサポートも充実しています。
このように、自分の体力や生活スタイルに合わせて仕事を選ぶことで、無理なく、かつ充実感のある働き方が可能になります。
5.元気に働き続けるために気をつけたいこと
シニア世代が無理なく、そして長く働き続けるためには、体力面・心のケア・家族とのバランスといった複数の観点での配慮が欠かせません。「働くことで元気になる」ためには、自分自身を大切にしながら、周囲と協調する姿勢が求められます。
1. 体調管理と無理のない勤務時間の設定
最も大切なのは、自分の体調を正しく把握することです。若い頃と違って、無理をすると体に不調が出やすく、回復にも時間がかかります。例えば、毎日ではなく「週2〜3日」「1日4時間」といった短時間勤務から始めてみるのが無理のないスタートです。
また、定期的な健康診断を受け、体調の変化に敏感になることも重要です。高齢者は慢性疾患(高血圧・糖尿病・関節痛など)を抱えていることも多く、それらの病気とうまく付き合いながら働くためには、休養の取り方や食生活の見直しも必要です。
2. 家族や周囲の理解を得ておく
高齢になってから再び働き出すことに、周囲が心配したり反対するケースもあります。そのため、「なぜ働きたいのか」「どれくらいの時間働くのか」「どんな仕事なのか」などを、家族としっかり話し合っておくことが大切です。
家族の理解があると精神的にも安心でき、働くことへのプレッシャーが減ります。特に同居している家族がいる場合は、家事の分担や通院予定などをすり合わせ、無理のないスケジュール管理が求められます。
3. 自分のペースを大事にする
「もっと働かなきゃ」「迷惑をかけてはいけない」と無理をすることは、かえって体調を崩す原因になります。あくまで“自分の元気を保つために働く”という視点を忘れずに、自分のリズムで無理なく続けられる仕事を選ぶことが、長続きのコツです。
6.まとめ:働くことが“元気の源”になる
「元気シニア」の秘訣は、健康だけではなく、社会との関わりや役割意識を持ち続けることにあります。働くことは、シニアにとって“生活費の補填”という現実的な面だけでなく、“生きがい”や“社会参加”という精神的な充足感をもたらしてくれるものです。
本記事で紹介したように、現在では70代で働くことは決して珍しいことではありません。柔軟なシフト制や、体への負担が少ない仕事、そして地域とのつながりを意識した働き方など、多様な選択肢が広がっています。
特に、退職後に「やることがない」「話す人が減った」と感じていた人が、仕事を再開することで「毎日が充実した」「元気になった」と語るケースは非常に多くあります。働くことで自然と規則正しい生活になり、人との交流が増え、身体も心もリフレッシュされていく――これは、年齢を問わず得られるメリットです。
もちろん、無理をせず、自分の体力やライフスタイルに合わせた働き方を見つけることが前提です。そして家族の理解や、職場の配慮もあってこそ、シニアの就業は成功します。
第二の人生をもっと元気に、もっと自分らしく生きるために。「働く」という選択肢を、前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
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