1.なぜ今、若手が採れないのか?採用難の背景を読み解く
人口減少と若者の職業志向の変化
少子高齢化が加速する日本では、労働市場における若年層の絶対数が年々減少しています。総務省の統計によれば、2024年時点で15〜24歳の人口は約1,150万人と、ピーク時の半分以下にまで縮小しています(出典:総務省「人口推計」)。このような構造的な人口減少により、「若手人材を採る」こと自体が極めて困難な時代に突入しています。
さらに近年の若年層は、職場に対する価値観も大きく変化しています。かつてのような「長時間働いてでも出世する」スタイルではなく、「自分の時間」「やりがい」「働きやすさ」を重視する傾向が強くなりました。その結果、地方企業や中小企業にとっては、待遇や働き方の面で選ばれにくくなっているのが現状です。
中小企業におけるブランド力・待遇格差の課題
若手が採用できないもう一つの大きな理由は、知名度や待遇の差にあります。特に中小企業は、大手と比較して給与水準や福利厚生が見劣りしがちです。加えて、採用ブランディングが十分にできていない企業では、求人を出しても「応募がこない」「面接に来ない」といった課題が頻発しています。
実際、経済産業省の「中小企業白書2023」では、多くの企業が「人材が採れない」最大の理由として“応募者数の不足”を挙げており、それに拍車をかけるのが「採用媒体の選び方が若年層偏重であること」です。つまり、いくらコストをかけて媒体に掲載しても、母集団が偏っていては結果に結びつかないのです。
2.60代以上の採用が注目される3つの理由
高い就業意欲と豊富な経験
高齢者の労働意欲は年々高まっており、総務省「労働力調査(2024年)」によれば、60〜69歳の就業率は68.7%と過去最高を記録しています。生活費の補填という理由だけでなく、「働くことで社会とつながっていたい」「経験を生かして役に立ちたい」といった前向きな動機が多く見られます。
また、彼らは長年にわたって培ってきた業務スキルやマナー、対人対応力を持っています。新卒や20代にはない“即戦力”としての期待ができるのも大きな魅力です。特に中小企業では、マニュアルに頼らず臨機応変に動ける人材は重宝されます。
定着率の高さと職場の多様性向上への効果
シニア人材は「安定志向」が強く、転職を繰り返す若手層に比べて離職率が低い傾向にあります。定年後に再就職した人のうち、6割以上が「同じ職場で長く働きたい」と回答した調査結果(※高齢・障害・求職者雇用支援機構 2023年報告)もあり、安定した人材確保が見込めます。
また、シニア層の採用は職場の多様性にもつながります。年齢の異なる人が共に働くことで、若手が人生経験から学ぶ機会が増え、企業文化に柔軟性が生まれます。これにより、従業員満足度の向上や離職率の低下にもつながるのです。
業務効率化を支える“シニアの強み”
60代以上の人材は、単なる労働力としてだけでなく、“業務を見直すきっかけ”としても有効です。若手不足の中、限られた人数で成果を出すためには「業務の分解と再設計」が求められます。そこに、手際よく・無駄なく作業を進めるシニア人材の存在が大きな支えになります。
例えば「書類整理」「清掃・軽作業」「電話対応」など、経験と判断力で自律的にこなせる業務を任せることで、他の社員がコア業務に集中できるようになります。結果として、全体の生産性が底上げされるという好循環が生まれるのです。
3.シニア人材に強い採用媒体とは?
60代以上の応募が集まりやすい媒体の特徴
シニア人材を集めるには、若手向け媒体とは異なる視点が必要です。60代以上の求職者は、派手なビジュアルや最新トレンドよりも「仕事内容の明確さ」「働きやすさ」「職場の雰囲気」に価値を置く傾向があります。
そのため、以下のような特徴をもつ媒体が有効です。
・シニア層に特化した求人カテゴリやフィルターがある
・文字が大きく、読みやすいUI設計
・スマートフォンよりパソコンでも使いやすい
・求人情報に勤務時間・年齢層・職場写真など詳細な情報がある
このような媒体は、求職者の不安を和らげ、「応募してみよう」と思わせる後押しになります。
具体的なシニア向け求人媒体例
ここでは、60代以上の採用に活用できる代表的な媒体を紹介します。
媒体名 | 特徴 | 費用体系 |
---|---|---|
シニアジョブ | 60代以上専門の求人サイト。職種も豊富。 | 掲載無料・採用時課金制 |
キャリア65 | 65歳以上専門。公共性が高く信頼感あり。 | 掲載無料・2人目から成果報酬制 |
求人ボックス | 年齢問わず使える総合型。条件指定が可能。 | 無料枠あり(クローリング) |
indeed | シニア向けキーワードでの検索が可能。 | 無料〜クリック課金型 |
地元のシルバー人材センター | 地域密着で信頼性が高い。 | 利用料が必要な場合あり(自治体により異なる) |
※2025年5月時点の情報に基づいて作成
「無料で始められる」「シニアからの反応が高い」という視点で見ると、まずは シニアジョブ や キャリア65 を活用しつつ、求人ボックスやindeedの無料枠を併用するのが効果的です。
媒体選びのポイントと注意点
シニア人材の採用にあたっては、媒体選びが採用成功のカギを握ります。次の3つのポイントを押さえると失敗しにくくなります。
1.自社の求める人材像に合った媒体か?
体力が求められる現場職ならシルバー人材センター、専門的な経験が必要な場合はシニアジョブやキャリア65などを選ぶとマッチしやすくなります。
2.掲載費用と成果報酬のバランスを見る
無料で掲載できても、採用時に高額な成果報酬が発生するケースもあります。あらかじめ費用体系を確認し、採用単価の目安を持っておきましょう。
3.応募後の対応フローも設計しておく
シニア世代はメールより電話連絡を好む傾向があり、対応にスピードと配慮が求められます。応募対応から面接設定までの体制も整えておきましょう。
4.高齢者採用を成功させるための工夫と注意点
求人票で意識すべき記載ポイント
60代以上の求職者に響く求人票には「安心」と「明確さ」が欠かせません。若年層とは違い、シニア層は「自分に本当にできる仕事か」「体に負担はないか」といった不安を持ちやすいため、それを払拭する情報提供が重要です。
特に以下のポイントは丁寧に記載しましょう。
・年齢制限の有無(歓迎年齢)
・業務内容の詳細(1日の流れなど)
・勤務時間の柔軟性(短時間・週2日~OKなど)
・同年代の従業員の有無(安心感に)
・応募~採用までの流れ(丁寧に説明)
たとえば「70代の方も活躍中!」といった一文があるだけでも、応募のハードルが大きく下がります。
職場環境や業務設計の見直し
シニア人材が無理なく働き続けるには、業務設計の工夫も必要です。たとえば「重たい荷物の持ち運び」や「長時間の立ち仕事」が多い現場では、年齢問わず負担がかかります。そこで以下のような対応が求められます。
・作業工程の分解、軽量化(若手とシニアで役割分担)
・作業時間の区切り、休憩の導入
・椅子やカートなどの備品導入による補助
・マニュアルの整備とOJTの実施
また、シニア世代が働きやすい職場は、他の年代にとっても働きやすくなり、結果として職場全体の生産性や満足度向上にもつながります。
法的な配慮と活用できる助成制度
高齢者の採用には、法的な配慮と制度の活用も欠かせません。特に注意すべきポイントは以下のとおりです。
・年齢による差別的な取り扱いは禁止(高年齢者雇用安定法)
・雇用契約、労働条件は明示的に提示
・業務内容や安全配慮義務の強化
また、条件を満たせば以下のような助成制度も活用できます。
助成金制度 | 内容 | 支給例 |
---|---|---|
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース) | 高齢者(60歳以上)をハローワーク経由で採用 | 最大60万円/人 |
65歳超雇用推進助成金 | 定年延長・継続雇用制度の導入 | 制度整備で最大160万円 |
※制度内容は年度により変更されるため、詳細は厚生労働省または最寄りのハローワークでご確認ください。
これらをうまく活用すれば、コストを抑えながら戦力となるシニア人材を確保でき、企業にとってもメリットが大きくなります。
5.まとめ:人手不足時代を乗り切る鍵は“年齢にとらわれない採用戦略”
柔軟な人材戦略が企業の未来を左右する
若手採用の難易度が高まるなか、企業が生き残るには「年齢で人を選ばない」柔軟な発想が欠かせません。60代以上の人材は、労働市場において確実に存在感を増しており、その活用は単なる人手不足対策にとどまりません。
経験豊富な人材による現場の安定化、若手への技術継承、職場の多様性促進といった副次的な効果も見逃せません。いまこそ、「年齢=制限」と考えるのではなく、「年齢=可能性」と捉える採用戦略が求められています。
まずは媒体選びとシニア受け入れ体制から
第一歩としてできるのは、シニア人材に強い採用媒体を選ぶことです。今まで通りの若年層向け媒体ではなく、60代以上の求職者が多く集まる場所に切り替えるだけで、応募数やマッチ率は大きく変わります。
そして受け入れ体制も整えておくことが肝心です。業務の分担や職場環境の見直し、小さな工夫の積み重ねが、結果として職場全体の働きやすさにつながります。
企業の持続的成長のためには、「誰をどう活かすか」が問われる時代です。60代以上の力を活かす採用こそが、新しい競争力になる――その視点こそが、これからの人事戦略に求められています。
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