年齢を超えてつながる力|エイジギャップフレンドシップがもたらす人生の豊かさとは

生活

1.エイジギャップフレンドシップとは?

世代を超えた友情の定義と背景

「エイジギャップフレンドシップ」とは、年齢差がある者同士の友情関係を指します。たとえば、70代のシニアと20代の若者が、趣味や価値観を通じて対等な関係を築くようなケースです。
こうしたつながりは、従来の“同年代でつるむ”という価値観から離れ、年齢を超えた人間関係が当たり前になってきた現代だからこそ、注目されています。

背景には、少子高齢化や地域コミュニティの変化、働き方の多様化があります。特に定年後のシニアにとって、かつての同僚や近隣との関係が希薄になる一方で、「新たなつながり」を求める気持ちが高まりやすく、世代を超えた友情は心の支えとなるのです。


なぜ今、注目されているのか

現代はSNSや地域交流イベント、オンラインサロンなどを通じて、年齢や肩書きを問わず人とつながれる時代です。若い世代にとっても「年上=古い考えの人」ではなく、「知恵や経験を持つ頼れる存在」としてシニアを捉える傾向が広がっています。

また、厚生労働省の調査によれば、孤立を感じる高齢者の割合は年々増加傾向にあり※1、その対策として世代間交流が効果的とされています。
こうした背景から、「年齢差があっても、心を通わせられる関係性=エイジギャップフレンドシップ」が人生の充実度を高める一つの手段として注目されているのです。


※1 出典:厚生労働省「高齢者の生活と意識に関する調査(2022年)」より


2.シニア世代が若者とつながるメリット

新しい価値観に触れ、視野が広がる

年齢を重ねるにつれて、人はどうしても自分の経験や価値観に固まりがちになります。しかし、若い世代との交流を持つことで、これまでの常識がくつがえされるような発見や驚きが生まれます。

たとえば、スマートフォンの活用術やSNSでの情報発信、最近の働き方や恋愛観など。そうした話を聞くうちに「こんな考え方もあるのか」と、自分の枠を広げられるのが世代間交流の魅力です。

実際に、シニア向け地域活動に参加している人の中には「若い人の話を聞くだけで元気になる」「自分もまだ学べることがあると感じた」と語る方が多くいます。こうした刺激は、日常に新鮮さをもたらし、年齢に関係なく“成長”を感じられる貴重な機会になるのです。


自己肯定感の向上と生きがいづくり

シニア世代が若者とつながることは、自分の経験や知識が誰かの役に立つことを実感する機会にもなります。「昔こんなことがあってね」と語った体験談が、若い人にとっては新鮮な学びや気づきになることもあります。

こうしたやりとりは、「自分はまだ社会に必要とされている」「自分にもできることがある」という自己肯定感を育みます。そしてその感覚が、再び働く意欲やボランティア活動への参加といった“次の一歩”につながっていくのです。

心理学では、社会とのつながりが強い人ほど幸福度が高いとされており※2、孤独や孤立を防ぐことは心身の健康にもつながります。若者との友情を育むことは、まさに人生の質を高める“生きがいづくり”の一環といえるでしょう。


※2 出典:厚生労働省「健康日本21(第2次)」関連資料「孤独・孤立と健康との関連」より


3.交流のきっかけはどこにある?

地域活動・ボランティア・仕事現場での出会い

エイジギャップフレンドシップを育む場として、まず注目したいのが地域活動やボランティアです。
たとえば、地域の清掃活動や子ども食堂、図書館での読み聞かせイベントなど。こうした活動には学生や子育て世代が参加することも多く、自然と会話が生まれるきっかけになります。

また、シニア世代向けの短時間パートや公共施設での仕事でも、若いスタッフと一緒に働く場面があります。
施設管理員として働くAさんも、20代の事務スタッフとのやり取りを通じて「年齢が違っても、仕事の話で盛り上がれるのはうれしい」と感じたそうです。

世代間の交流は、無理に築こうとするものではなく、“一緒に何かをする”中で自然に育まれる関係です。自分から飛び込んでみることが、思わぬ友情の始まりになるかもしれません。


デジタルツールを使った世代間コミュニケーション

「若い人との交流は難しそう」と感じている方にこそおすすめしたいのが、デジタルツールを活用したつながりです。
SNSやオンライン学習、趣味のフォーラム、LINEグループなどを通じて、年齢を問わず共通の関心で人と出会うことができます。

たとえば、Facebookには“世代間交流”をテーマにしたコミュニティグループも存在します。Zoomで行う読書会や歴史談義、趣味の写真共有など、オンラインだからこそ全国の若い人と気軽に交流が可能です。

最初は使い方がわからなくても大丈夫。最近ではスマホ講座やITサポートを行う自治体・NPOも多く、学びながら新しい世界を広げることができます。
テクノロジーを味方につければ、交流のチャンスは無限に広がります。


3.交流のなかで気をつけたいこと

距離感・言葉遣い・先入観を手放す心構え

エイジギャップフレンドシップを築くには、「年下だから」「最近の若者は…」といった先入観を手放すことが大切です。
年齢に関係なく、相手もひとりの人間として尊重する姿勢が、信頼関係を築く第一歩になります。

また、距離感や言葉遣いも重要なポイントです。親しみを込めたつもりの言葉が、相手にとっては上から目線に感じられることもあります。
たとえば、「今の若い人は大変だね」といった言葉も、相手からすると自分の価値観を否定されたように受け取られる可能性があります。

大切なのは、「教えてもらう」「一緒に考える」という対等なスタンス。会話のなかに「なるほどね」「その考えは面白いね」といった相手を認める表現を入れるだけでも、関係性はぐっと深まります。


共通点より“違い”を楽しむ姿勢が大切

世代を超えた関係では、共通点を探すよりも、“違い”を面白がる視点が大切です。
話がかみ合わなかったり、価値観にギャップがあると感じる場面もあるでしょう。しかし、それは悪いことではありません。違いを受け入れ、そこから学ぼうとする気持ちこそが、豊かな関係の土台になります。

たとえば、音楽の趣味、仕事への考え方、休日の過ごし方など、若者との違いに驚くこともあるかもしれません。そんなときこそ「その感覚、面白いね」「それってどういう意味?」と、好奇心を持って聞く姿勢が信頼を育みます。

また、自分の考えを無理に押しつけず、相手の意見も尊重する“聴く力”を意識することで、自然と会話がスムーズになります。違いを楽しめる心の余裕が、エイジギャップフレンドシップを育てるカギです。


4.エイジギャップフレンドシップがもたらす人生の豊かさ

人とのつながりが健康と幸福感を生む理由

人との良好な関係は、私たちの心身に大きな影響を与えます。
特に年齢を重ねると、人とのつながりの有無が、生活の質(QOL)や健康状態に直結することが明らかになっています。

厚生労働省が公表しているデータによると、高齢者のうち「孤独を感じていない」人の方が、健康状態や幸福度が高い傾向にあることが報告されています(※3)。
また、他者との交流がある高齢者は、要介護認定を受けるリスクが低く、精神的にも安定しているという研究もあります。

エイジギャップフレンドシップは、そうした“人とのつながり”を補う手段のひとつです。
家族や同年代の友人とは違った刺激をくれる若者との交流は、脳や感情に新たな活性をもたらし、日々の生活にハリを与えてくれます。


交流から得られる“働く意欲”と“役割意識”

若い世代と関わることで、「自分にもまだできることがある」と感じる瞬間が生まれます。
たとえば、過去の仕事で培った経験や、人生の節目で得た知恵を誰かに伝えること。それが若者にとって貴重な助言となり、感謝されることで、自分の存在価値を実感できます。

この“誰かの役に立っている”という感覚は、心理学的にも「役割意識」と呼ばれ、働く意欲や生きがいに直結すると言われています。

実際に、地域で活動するシニアの中には「若者に頼られると嬉しい」「誰かの力になれることで、毎日が充実する」と語る方が多くいます。
それは、単に友情を築くこと以上に、自分の人生が誰かの役に立っているという肯定感を与えてくれるのです。

エイジギャップフレンドシップは、人生の後半においても、自分の中に眠っている力を再び引き出してくれる関係性。
そうした友情を通じて得られる豊かさは、年齢を問わず、かけがえのないものとなります。


※3 出典:厚生労働省「高齢者の健康支援に関する調査(2021年)」より


5.新たな一歩を踏み出すために

まずは一言かけることから始まる

エイジギャップフレンドシップは、特別な才能やスキルが必要なものではありません。
きっかけは、日常の中にいくらでもあります。たとえば、地域のイベントや職場で「最近どう?」「これ手伝おうか?」といった一言をかけるだけでも、関係は一歩前進します。

大切なのは、自分から心を開くこと。年齢の違いを意識しすぎて遠慮したり、「若い人は話しかけにくい」と思い込んでしまうのはもったいないことです。
実際、若い世代も「人生の先輩と話すのは勉強になる」「自分に関心を持ってくれるのが嬉しい」と感じている人は多くいます。

まずは相手の話に耳を傾けてみましょう。質問してみる、共感してみる。そんなささやかなやりとりの積み重ねが、信頼と友情を育てていきます。


人との関わりが、仕事のチャンスにもつながる

人とのつながりは、単なる交流にとどまらず、次のステップへ進む“橋渡し”にもなります。
たとえば、若者との会話の中で新しい働き方を知ったり、地域での活動が仕事のオファーにつながることもあります。

最近では、世代を超えた協働が生まれる現場も増えており、たとえば地域の農作業や子ども支援ボランティアなどで、若者とシニアがチームを組むケースも。
その中で「〇〇さんにこの仕事、お願いできませんか?」と声がかかることも珍しくありません。

こうした流れを生むのは、“関係性の中で生まれる信頼”です。スキルや経験はもちろんですが、「話しやすい人」「一緒にいて心地いい人」として関係を築いておくことが、仕事や役割につながる重要な要素になります。

新しいことに挑戦するのは勇気が要るかもしれません。ですが、ほんの小さなきっかけが、大きな変化につながることもあるのです。
エイジギャップフレンドシップは、そんな一歩を踏み出すための“心強い追い風”になるかもしれません。

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