はじめに|なぜ今「人生設計」と「キャリアプラン」が注目されるのか
「定年を迎えたら、あとはのんびり暮らすだけ」——そんな時代は終わりつつあります。人生100年時代と言われる今、60代後半からの生活はむしろ“これから”が本番です。
特に注目されているのが、シニア世代の「人生設計」と「これからのキャリアプラン」。年金だけでは生活が難しいという現実に直面しながらも、体力や経験はまだまだ豊富。「もう一度働きたい」「社会とのつながりを持ちたい」と考える方が増えています。
この記事では、定年後の生活に不安を抱える方に向けて、これからの人生を前向きに描くための視点とヒントをご紹介します。働き方や暮らし方を見直すことで、収入・健康・生きがいのすべてをバランスよく手に入れる——そんな第二の人生をスタートさせましょう。
1.シニア世代が直面する“第二の人生設計”の課題とは
シニア世代がこれからの人生を考えるうえで、避けて通れないのが「収入」「健康」「社会との関わり」の3つです。特に定年後はこれらが一気に揺らぐこともあり、早めの見直しが重要です。
年金だけでは足りない?定年後のお金のリアル
厚生労働省の「令和4年簡易生命表」によると、男性の平均寿命は81.05歳。仮に65歳で定年を迎えた場合、15年以上の生活資金が必要になります。しかし、公的年金の平均支給額は、厚生年金受給者で月額約14万6,000円(※2023年厚労省データ)。家賃や光熱費、食費を差し引くと、ほとんど余裕がないという方も多いのではないでしょうか。
また、持病や家族の支援などで突然の出費がかかる可能性もあるため、「あといくら稼げるか」ではなく、「どう収入源を持続させるか」が大切になります。
健康・孤立・役割喪失…「心と体」の備えも必要に
経済的な問題だけでなく、「健康」と「孤独」も見逃せない課題です。仕事を辞めたことで毎日のリズムが乱れたり、人との関わりが減ったりすることで、心身ともに不調を訴えるシニアは少なくありません。
特に男性の場合、「仕事=社会的役割」と感じていた方が多く、退職後は“居場所のなさ”に悩むケースも目立ちます。何もすることがない日々は、運動不足や認知機能の低下にもつながりかねません。
だからこそ、収入を得る手段としてだけでなく、「自分の健康」や「社会とのつながり」も考慮に入れた人生設計が必要なのです。
2.これからのキャリアプランを考えるうえで大切な3つの視点
キャリアプランというと若い世代向けの言葉と思われがちですが、実はシニアこそ「キャリアを再設計する力」が求められる時代です。では、定年後に自分らしい働き方を選ぶためには、どんな視点が必要なのでしょうか?ここでは特に大切な3つのポイントを紹介します。
「収入」だけでなく「やりがい」も見つける
定年後に働く理由として、「年金だけでは生活が苦しい」という声が多いのは事実です。しかし、実際にシニア求人に応募する方の中には、「人の役に立ちたい」「誰かに必要とされたい」といった“やりがい”を求める気持ちを持っている方も少なくありません。
これは、厚生労働省「高年齢者の雇用に関する調査(2020年)」でも明らかになっており、60歳以上で働いている人の約半数が「生きがい・社会参加のため」と回答しています。
収入の確保だけでなく、自分が「気持ちよく働けるか」「続けたいと思えるか」を軸に選ぶことが、長く安定して働く秘訣です。
「体に合う働き方」を選ぶことの重要性
シニア世代にとって、身体的な負担の少ない仕事を選ぶことは非常に重要です。特に長時間の立ち仕事や重い荷物を運ぶ仕事は、健康リスクを高めるおそれもあります。
そのため、近所で働ける短時間勤務の仕事や、週2〜3回のペースで無理なく続けられるシフト制の仕事など、自分の体力に応じた働き方を選ぶことが必要です。
また、1日の拘束時間が短いほど、趣味や家族との時間も確保しやすく、生活全体のバランスをとりやすくなります。
「社会とのつながり」を意識する
働くことには、経済的メリット以上に「社会との接点を持ち続けられる」という大きな価値があります。
退職後は人付き合いが減ることで孤独を感じやすくなりますが、仕事を通じて他人と関わる機会があるだけで、精神的な充足感が大きく変わってきます。
特に高齢者向けの福祉や地域支援の分野では、人生経験豊富なシニアの存在が歓迎されており、“役割”を持つことが心身の健康維持にもつながると各種研究でも示唆されています。
3.キャリアと人生設計をつなげる「行動計画」の立て方
キャリアプランは「頭で考えるだけ」では実現しません。大切なのは、日々の行動に落とし込んで初めて「人生設計」が形になっていくということです。ここでは、シニア世代が自分のキャリアと暮らしをどう“つなげて”いくか、その具体的なステップをご紹介します。
自分の強みや経験を再確認する
まず取り組みたいのが、自分自身のこれまでの経験を棚卸しすることです。たとえば以下のような問いかけを、自分にしてみてください。
・長年続けてきた仕事の中で「得意だったこと」は?
・友人や同僚から「頼りにされたこと」は?
・これまでの人生で「人の役に立てた」と感じた経験は?
これらを掘り下げることで、「業界経験はないけれど、人と接するのは得意」「体力はあるので外で体を動かす仕事が向いている」など、自分だけの“武器”が見えてきます。
再就職活動でアピール材料に困るシニアの方も、こうした“経験”を明文化しておくと、求人サイトでの検索や面接時にも役立ちます。
小さく始めて大きく広げるステップ思考
人生設計とキャリアプランは、「いきなり大きなゴールを目指す」よりも、段階的に“試して・学んで・修正する”進め方が現実的です。
たとえば、いきなりフルタイムで働こうとせず、
・週2〜3日の短時間勤務から始めてみる
・家事代行や軽作業など、体に無理のない業務から入ってみる
・地元のシルバー人材センターなどでボランティアからスタートする
こうした「小さな一歩」は、自分に合う仕事・環境を見極める貴重な機会になります。そして経験を積むことで、「もう少し働いてみよう」「資格を取って幅を広げたい」など、次のステップが自然と見えてきます。
重要なのは、「やってみないとわからない」ことを前提に、柔軟なマインドで行動に移すこと。人生の後半戦こそ、“慎重かつ前向きに動く”ことが、自分らしい働き方と生活の両立につながります。
4.人生設計を見直すときに役立つチェックポイント
これからのキャリアを考えるうえで、仕事探しに直結する行動だけでなく、自分自身の生活全体を見直すことも欠かせません。特にシニア世代にとっては、経済面・健康面・人間関係といった「生活の基盤」を整理することが、現実的な人生設計とキャリアプランをつくる土台となります。
お金・健康・人間関係を“棚卸し”しよう
まずは、自分の今の状況を冷静に見つめ直してみましょう。以下の3つは、人生設計の土台として必ず確認しておきたいポイントです。
①お金(収支バランス)
・年金収入/貯金/持ち家の有無
・月々の固定支出(家賃、光熱費、食費、保険、医療費など)
・今後想定される支出(介護費用、住み替え、老朽リフォームなど)
→ 今の生活を維持するには、あといくら必要か? という視点で計算すると、働く目的や必要な収入の目安が見えてきます。
②健康(体力・持病・通院状況)
・持病や既往歴は?
・1日どれくらい動けるか?長時間の勤務は可能か?
・通院/服薬が必要か?勤務に支障はないか?
→ 働き方を決めるうえでの「限界」や「条件」を明確にしておくと、無理のない選択ができます。
③人間関係(家族構成・交流状況)
・配偶者や子どものサポート体制は?
・近所づきあいや趣味の仲間との関係は?
・「社会とのつながり」に不安はないか?
→ 孤立を避ける仕組みをつくるためにも、日常的に話せる人がいるかを見直しておくことは重要です。
使える制度や支援を上手に活用する
人生設計を考える際、行政や地域の支援制度を知っておくことは大きな助けになります。
たとえば、
・各自治体の就労支援窓口やシルバー人材センター
・高齢者向け職業紹介所(ハローワーク)
・一部自治体の高齢者向け給付制度/家賃補助
・無料の健康相談窓口や認知症チェックサービス
などを活用することで、経済的・健康的な不安を減らしながら、前向きな行動につなげやすくなります。
特に「働きたいけれど不安がある」「何から始めていいかわからない」という方は、まず地域の窓口に相談してみることをおすすめします。
自分の状況を客観的に整理することで、「できること・できないこと」「したいこと・したくないこと」が明確になり、人生設計もキャリアプランも、より現実的で実行しやすいものに変わっていきます。
5.現実的なキャリア実例から学ぶ「これから」の選択肢
「もう一度働きたい」と思ったときに、実際にどんな仕事があるのか、どのように始めたらいいのか——そんな疑問を持つ方は多いでしょう。ここでは、シニア世代に人気があり、実際に採用事例が多く、無理なく続けやすい現実的な仕事を3つご紹介します。
近所のマンション管理員として、無理なく安定収入を確保
もっとも身近で安定した仕事の一つが、「マンション管理員」です。主な業務は、共用部の掃除やゴミ出し、簡単な巡回・点検、住人からの問合せ対応などで、身体への負担が比較的少ないのが特徴です。
多くの求人が「週2~3日・午前中のみ」といった短時間勤務で、勤務地が自宅から徒歩圏内という案件も多く、通勤負担を減らしたいシニアにとっては理想的です。
実際、マンション管理業協会によると、60代以上の採用比率は約6割を超えており、シニアの雇用先として非常に定着している職種といえます。
家事代行スタッフとして“日常の経験”を活かす
家事が得意な方には、「家事代行」の仕事もおすすめです。掃除・洗濯・料理といった家庭で培ったスキルを、そのまま活かせるのが魅力です。
近年は共働き家庭の増加により、需要が急増しており、業界大手のカジーやベアーズなどでは、60代以上の採用実績も豊富。週1日・1案件2時間から働ける柔軟なスタイルが多く、「家庭と両立しながら」「週に1〜2回だけ」働きたい方にぴったりです。
また、事前研修やマニュアルが整っている企業も多く、未経験からでも安心して始められるのも大きなポイントです。
福祉施設の補助スタッフとしてやりがいを感じながら働く
「人の役に立つ仕事がしたい」「社会と関わり続けたい」と考える方には、福祉施設での補助業務が向いています。
具体的には、利用者の食事の配膳、車椅子の移動補助、清掃やベッドメイキングなど、資格が不要で身体に負担の少ない作業が中心です。
近年は高齢者介護の人手不足が深刻化しており、施設側もシニア層の採用に前向きです。「週3日・1日4時間」といった短時間シフトも多く、体調や生活リズムに合わせて働きやすい環境が整っています。
さらに「ありがとう」と感謝される場面も多く、やりがいを感じやすい職場としても人気があります。
いずれの仕事も、体力や経験に不安がある方でも無理なく始められるものばかりです。最初の一歩として、こうした仕事を選ぶことで、無理なく社会参加と収入の両立を実現することができるでしょう。
まとめ|人生設計とこれからのキャリアプランで迷わないシニアライフへ
定年を迎えたからといって、人生が“下り坂”になるわけではありません。むしろ、時間や経験に余裕がある今だからこそ、自分らしい働き方や生き方を再構築するチャンスです。
この記事では、シニア世代が直面する現実的な課題から、人生設計とキャリアプランを見直すための視点、そして実際の仕事の例までを紹介してきました。重要なのは、次の3つです。
・収入/健康/社会的つながりのバランスを考えること
・今の自分に合った働き方を“選ぶ”という視点を持つこと
・無理のない一歩からスタートし、生活全体を設計し直すこと
人生の後半に入った今だからこそ、焦らず、無理せず、自分に合ったペースで新たな一歩を踏み出すことが大切です。
「どんな人生を送りたいか」という問いに、これからの働き方を通して応えていく——それが、シニア世代の人生設計とキャリアプランの本質です。
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