1.Advance Life Planning(ALP)とは?
Advance Life Planningが注目される背景
「Advance Life Planning(ALP)」は、直訳すれば「人生の計画を前もって立てること」。終末期の準備だけではなく、定年後からの生活全体を見通し、働き方・暮らし・健康・人間関係・自己実現といったテーマを統合的に考える取り組みです。
高齢化が進む日本では、平均寿命は伸び続ける一方、「何をして生きるか」が問われる時代に入りました。特に65歳以上の高齢者のうち、70代で再就職を希望する人が年々増加している中、「人生100年時代」のライフデザインとしてALPが注目を集めています。
<エンディングノートや終活とは何が違う?
「終活」や「エンディングノート」との違いは、“人生の終わり”ではなく“これから”にフォーカスしている点です。
比較項目 | Advance Life Planning(ALP) | 終活/エンディングノート |
---|---|---|
主な対象 | 定年後〜高齢期の全体設計 | 死後や介護に関する備え |
目的 | 人生の再設計・自己実現 | 家族への情報整理・遺言代用 |
キーワード | 働き方・役割・社会参加 | 相続・葬儀・医療・施設選び |
つまりALPは、“最期を整える”のではなく、「どう生きるかを主体的に決めていく」前向きな人生戦略だと言えるでしょう。
2.なぜ今、シニア世代にALPが必要なのか
定年後の“空白期間”を埋める準備
多くの人が65歳で定年を迎えた後、まだ20年以上の人生が残されています。にもかかわらず、「定年後は自由に過ごしたい」と曖昧なままリタイアし、結果として何をしていいか分からない“空白期間”に突入してしまう人も少なくありません。
ALPでは、こうした“空白”を事前に可視化し、自分がどんな生活を望み、何をして過ごしたいのかを明らかにしていきます。特に、男性は職場との関係が中心だった人が多いため、定年後に急に孤立感や目的の喪失を感じる傾向も。そのため、「第二の人生」の設計が不可欠なのです。
たとえば以下のような問いを自分に投げかけることが、ALPの第一歩です。
・今後の生活資金はどれくらい必要か?
・どんな働き方なら無理なく続けられそうか?
・どの地域で、誰と、どんなふうに暮らしたいか?
・健康を維持するために日常でできることは?
これらに答えるプロセス自体が、“生きがい”につながる再出発の準備となります。
精神的・経済的な安心感につながる理由
Advance Life Planningの大きな価値のひとつは、「将来に対する不安を、見通しに変える」という点です。
たとえば年金だけでの生活に不安を感じているなら、パートやアルバイトなど短時間の仕事を取り入れることが解決の糸口になりますし、健康不安があるなら定期的な運動や地域活動を生活に組み込むなど、不安を“行動”に置き換えることが可能になります。
また、ALPを通して「自分らしさ」や「自分の役割」を再確認できれば、経済面だけでなく心の安定にもつながります。これは、定年後の孤独やうつを防ぐためにも非常に重要です。
参考:内閣府「高齢社会白書」(令和5年版)によると、60代後半~70代前半のうち「今後も働きたい」と答えた人は約70%に上るというデータもあります。
つまりALPは、お金・健康・つながりといった生活のベースをバランスよく見直すきっかけになり、安心して“これから”を迎える準備となるのです。
3.Advance Life Planningの具体的な進め方
仕事・収入・健康・家族関係をどう整理する?
Advance Life Planning(ALP)では、自分の生活に関わる要素を「見える化」し、これからの人生をどう設計するかを段階的に整理していきます。
以下は、ALPで重視すべき4つの主要領域です。
領域 | 考えるポイント例 |
---|---|
仕事・役割 | 「今の自分に合った働き方は?」「地域で貢献できる活動はあるか?」 |
収入・生活費 | 「年金以外にどれくらい必要?」「資産の見直しは?」「副収入は得られるか?」 |
健康・介護 | 「どのような健康状態を維持したいか?」「かかりつけ医や運動習慣の準備は?」 |
家族・関係性 | 「自分が困った時に誰を頼れるか?」「家族との話し合いはできているか?」 |
これらを一覧にまとめ、現状と目標のギャップを把握することが、ALPの第一歩となります。エクセルやノートに簡単な表を作るだけでも十分。「書き出すこと」こそが、将来への行動のトリガーになります。
ALPで役立つチェックリスト・質問集とは
Advance Life Planningをサポートするために、各種の質問集やワークシートが活用されています。たとえば、以下のような簡単なチェックリストから始めてみましょう。
【Advance Life Planning 簡易チェックリスト】
チェック項目 | 状態 |
---|---|
自分が働きたい理由が言語化できている | □できている/□まだ |
月々に必要な生活費が把握できている | □できている/□まだ |
病気や介護への不安について話せる相手がいる | □いる/□いない |
今後の暮らしで大切にしたい価値観が整理できている | □できている/□まだ |
5年後の理想の生活像をイメージできている | □できている/□まだ |
チェックが「まだ」の項目は、今後の検討テーマとして書き留めておきましょう。
また、厚生労働省やNPO法人が提供する「人生会議」「ライフプラン支援シート」なども、信頼できる資料として活用できます。
参考:厚生労働省「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」推進ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html
ALPに正解はありません。大切なのは、「今の自分」を知り、「これからの自分」に向けて、具体的な行動を小さく積み重ねていくことです。
4.Advance Life Planningを通じて得られる3つのメリット
メリット1:将来の不安が軽くなる
Advance Life Planning(ALP)の最大のメリットは、将来の「見えない不安」を「見える課題」に変えられることです。多くのシニアが抱える漠然とした悩み──「お金は足りるか?」「健康は大丈夫か?」「自分にできる仕事はあるか?」──は、考えるだけで気持ちが重くなります。
しかし、ALPを通じて生活費を見直し、働き方を選び、健康維持の方法を明確にすることで、不安を“自分で管理できるもの”に変えていくことが可能になります。
これは心理学的にも有効な手法で、「行動に移せる課題」に変えることは、ストレスの軽減にもつながるとされています。
メリット2:自分らしい生活を描ける
ALPのプロセスでは、「何を優先したいか」「どんな生活を望んでいるか」を整理していきます。これにより、“他人に決められた老後”ではなく、“自分で選んだ暮らし”が実現しやすくなります。
たとえば、「毎日決まった時間に軽作業をして収入を得たい」「地域の子どもと関わる活動をしたい」「週に1度は妻と外出する時間を持ちたい」など、自分にとっての“豊かな時間”が何かを具体的にイメージできるようになります。
このようにALPは、単なる老後の備えではなく、「自分の人生の軸を再発見する」作業でもあるのです。
メリット3:家族との対話がスムーズになる
Advance Life Planningを行うことで、家族とのコミュニケーションも円滑になります。老後に関する話題──特に「お金」や「介護」など──は、つい後回しになりがちです。しかしALPの内容をベースにすれば、感情論に偏らず、現実的な視点で対話を進めやすくなるのです。
たとえば、「このくらいの生活費が必要だから、週3日だけ働きたい」「健康面が心配だから運動を始めたい」というように、自分の考えを具体的に家族と共有できます。
これにより、将来の介護や相続、住まいの選択といった話し合いのハードルも下がり、“いざというとき”の備えとしても役立つのがALPの大きな強みです。
5.ALPを実践するために今すぐできること
小さな行動から始める“人生の棚卸し”
Advance Life Planning(ALP)を難しく考える必要はありません。大切なのは、「今できることから少しずつ始める」姿勢です。たとえば、以下のような身近なアクションも立派なALPの一歩になります。
・ノートに「これからやりたいこと」を5つ書き出してみる
・今の生活費をざっくりと計算してみる
・健康診断の結果を見直して、気になる項目をメモする
・家族や友人と「将来どうしたいか」を雑談してみる
こうした行動の積み重ねが、「自分はこう生きたい」という軸を明確にし、将来の選択肢を増やすことにつながります。特に、これまで仕事中心で生きてきた方ほど、リタイア後は「自分自身と向き合う時間」をあえて持つことが大切です。
一度に全部やろうとせず、「週末に30分だけALPタイムをつくる」といった習慣も効果的です。
仕事探しや学び直しも立派なALPの一歩
実は、「再び働く」「新しいスキルを学ぶ」ことも、ALPの一環として非常に有効です。
それは、以下のような理由からです。
・経済的な基盤の安定につながる
・日々の生活にメリハリが生まれる
・社会とのつながりを保つことができる
・新たな知識や経験を通じて、自己肯定感が高まる
たとえば、週2〜3日の軽作業や、地域のイベントスタッフ、パソコン操作を学ぶ講座への参加など、自分の体力や興味に合った形でチャレンジするのがおすすめです。
最近では、シニア向けの再就職支援サイトや、無料で学べるオンライン講座なども充実しています。学びや仕事を通じて「自分はまだ成長できる」と実感することは、心の若さを保ち、前向きな生活につながるALP的アクションなのです。
まとめ|Advance Life Planningで“これからの人生”を自分らしく設計しよう
Advance Life Planning(ALP)は、老後の「備え」ではなく、これからの人生をどう生きるかを考える前向きな計画です。
定年後の時間は、思っている以上に長く、そして自由です。だからこそ、「何となく過ごす」だけではもったいない──。ALPを通じて、自分の価値観や理想の暮らしを見つめ直し、小さな行動を積み重ねていくことで、経済的な安心・健康な生活・社会とのつながりが手に入りやすくなります。
すぐにすべてを整える必要はありません。大切なのは、「自分の人生の舵を自分で取る」意識を持つこと。
そして、それを言葉にして整理しておくことです。
今日できることから始めましょう。たとえば、ノートに「これからやりたいこと」を書くだけでも一歩です。
Advance Life Planningは、誰もが今すぐ取り組める“人生の再設計”なのです。
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