1.内定承諾率が低いのはなぜ?企業が直面する課題とは
採用活動において、せっかく内定を出したのに辞退されてしまう——。この「内定承諾率の低さ」は、多くの企業が抱える共通の悩みです。特に人手不足が深刻化するなかで、候補者から選ばれる企業になれるかどうかは、今後の事業成長を左右するといっても過言ではありません。
内定承諾率が下がる背景には、いくつかの要因があります。まず、労働人口の減少に伴い、求職者側の選択肢が増えたこと。優秀な人材ほど複数社から内定を獲得し、条件や職場環境を比較したうえで意思決定を行います。企業にとっては「他社との競争に勝ち抜く」視点が欠かせません。
また、採用担当者の面接スキルも大きな影響を及ぼします。面接で企業の魅力が十分に伝わらなかったり、逆に圧迫的な態度を取ってしまったりすると、候補者の不安や不信感を招きます。特にシニア層の求職者は、給与や待遇よりも「人間関係」「安心して働ける環境」を重視する傾向が強いため、面接でのコミュニケーションは重要なカギとなります。
リクルートマネジメントソリューションズの「2024年新卒採用大学生の就職活動に関する調査」では、内定承諾した学生が多い理由として「やりたい仕事ができる」「企業の社員や社風が魅力的」といった要素が上位を占めています。一方、辞退理由には「仕事内容や企業イメージとのギャップ」「待遇への不安感」なども含まれており、内定承諾率を高めるには、応募者の“納得感”や“安心感”をどれだけ与えられるかが重要です。つまり、単に条件を提示するだけでなく、安心感と信頼を生む「納得感のある採用プロセス」が求められているのです。
このように、内定承諾率の低さは「他社比較」「面接対応」「候補者心理」の3つが複合的に絡み合って生じます。次のステップでは、応募者に選ばれる企業になるための具体的な面接準備について解説します。
2.応募者に選ばれる企業になるための面接準備
面接の場は「企業が応募者を見極める場所」であると同時に、「応募者が企業を見極める場所」でもあります。内定承諾率を高めるには、面接前の準備段階から「選ばれる企業」になる意識が不可欠です。
まず重要なのは 面接官の統一した理解と姿勢 です。採用担当者や現場の管理職など複数人が面接に関わる場合、それぞれが企業のビジョン・求める人物像・働き方の特徴を正しく共有できていないと、応募者に矛盾したメッセージを与えてしまいます。これでは「本当に安心して働けるのか」と不信感を抱かれる可能性があります。事前に面接官同士で打ち合わせを行い、質問内容や伝えるべき魅力をそろえておくことが大切です。
次に、応募者が知りたい情報をあらかじめ整理しておきましょう。厚生労働省「令和4年 雇用動向調査結果の概要」(2023年)によると、転職・再就職者が重視した項目の上位には「仕事内容」「人間関係」「勤務時間・休日」が並んでいます。つまり、給与や待遇だけでなく、日々の働きやすさや安心感に直結する情報が求められているのです。これらを丁寧に伝えられる準備をしておくことで、候補者の不安を解消できます。
また、 会社資料や職場紹介の工夫 も承諾率アップに直結します。求人票に書かれていない情報を補足した説明資料、実際の働く風景を写真や動画で見せることは、候補者にリアルなイメージを持たせる効果があります。特にシニア人材にとっては「無理なく続けられる環境かどうか」が判断基準となるため、現場の雰囲気を感じ取れる工夫は有効です。
最後に、応募者一人ひとりに寄り添う姿勢を示すことが大切です。事前に応募者の職務経歴や希望条件をよく把握し、「あなたの経験はこの業務に活かせます」という形で具体的に言及すると、応募者は「自分が必要とされている」と実感できます。この“納得感”が内定承諾につながる最大の要因となるのです。
3.面接で意識すべき!応募者の心をつかむ質問と態度
面接は企業と応募者の“最初の接点”であり、ここでの印象が内定承諾率を大きく左右します。面接で心がけるべきは、単なる質疑応答ではなく「応募者の心をつかむコミュニケーション」です。
1. 応募者の経験を引き出す質問
応募者に「自分の強みを理解してくれている」と感じさせるためには、職務経歴や過去の経験に即した質問を投げかけることが効果的です。例えば「これまでの経験で特にやりがいを感じたことは何ですか?」というオープンな質問は、応募者に自己表現の機会を与えると同時に、企業がその人を尊重している姿勢を示します。
2. 共感を示すリアクション
応募者の回答に対して「なるほど」「その経験は当社でも活かせそうですね」といった共感や評価を言葉にすることで、面接の場は単なる評価ではなく“対話”になります。これにより応募者は安心感を抱き、企業への好意度が高まります。特にシニア人材は「長年の経験をきちんと理解してもらえた」と感じた時に、承諾意欲が大きく上がります。
3. 圧迫的な態度は逆効果
内定辞退の理由の一つに「面接官の態度の悪さ」が挙げられることも少なくありません。内定辞退の理由としては、選考中や内定後に抱いた企業イメージと、実際に伝えられた条件や職場環境とのギャップが挙げられることが多いことが確認されています。つまり、面接時の態度や説明の仕方が応募者の期待とずれると、「この会社は自分に合わないかもしれない」と不安を抱き、辞退につながるのです。
高圧的な態度や一方的な評価は避け、あくまで「お互いを理解する場」という姿勢を徹底することが必要です。
4. 応募者の将来をイメージさせる言葉
最後に効果的なのは「入社後にどう活躍できるか」を具体的に描かせる質問やコメントです。たとえば「当社では、これまでの接客経験を〇〇の場面で活かせると思いますよ」と伝えることで、応募者は自分の未来を前向きに想像できます。このイメージづけは、内定承諾を後押しする強力な武器となります。
面接は単なる“選抜”ではなく、“相互理解と信頼構築の場”です。応募者が「この会社で働きたい」と心から思えるような質問と態度を意識することが、承諾率を上げる最短ルートと言えるでしょう。
4.内定承諾率を高めるためのオファー提示の工夫
面接が良い雰囲気で終わっても、最後に提示する「オファー(内定条件)」の伝え方を誤ると、承諾率は大きく下がってしまいます。応募者は条件面だけでなく、提示の仕方やタイミングから企業姿勢を読み取っているためです。ここでは承諾率を高めるための工夫を解説します。
1.内定連絡はタイムリーに
応募者は複数の企業を同時に受けているケースが多いため、内定連絡が遅れると他社に先を越されてしまいます。エン転職の「『選考辞退』に関する意識調査」(2022年)によると、内定辞退の理由の第2位は「他社の選考が早く進んだため」とされています。スピーディーかつ明確な提示が、応募者の不安を防ぐ大切な要素です。
2. 条件提示は書面と口頭を併用する
条件は必ず書面で提示しつつ、口頭でもしっかり補足説明を行いましょう。応募者は金額や勤務条件などの数字だけではなく、「どういう意図でこの条件になっているのか」という背景を知りたがっています。たとえば「短時間勤務を選べるのは、生活リズムを大切にしてほしいからです」と説明すれば、単なる条件提示が“安心材料”に変わります。
3. 非金銭的な魅力も強調する
給与や待遇はもちろん重要ですが、シニア人材を含む多くの応募者は「働きやすさ」や「人とのつながり」も重視します。たとえば「無理のないシフト調整」「地域活動との両立支援」「研修や交流会の開催」などを伝えることで、候補者は自分の生活と仕事が調和できると感じ、承諾につながりやすくなります。
4. 未来を描かせるメッセージ
条件提示の最後には「一緒に働ける日を楽しみにしています」といったポジティブな一言や面接での評価ポイントを添えることが大切です。これは単純な社交辞令ではなく、応募者に「歓迎されている」という心理的安心感を与えます。この“感情の後押し”が、内定承諾を決断させる決め手となるケースは少なくありません。
オファー提示は単なる“条件交渉”ではなく、“企業と応募者の信頼を確定させる場”です。スピード感・誠実さ・未来への期待をバランスよく伝えることが、承諾率向上の大きなカギとなります。
5.シニア人材採用でも有効!面接で重視すべきポイント
少子高齢化に伴い、多くの企業がシニア人材の採用に目を向け始めています。厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」(2023年)によると、65歳以上で働く人は過去最高の912万人に達し、就業意欲の高さが示されています。こうした背景から、シニア人材の採用は今後さらに重要性を増していくでしょう。では、内定承諾率を高めるために、面接でどのような点を重視すべきなのでしょうか。
1. 健康や働きやすさへの配慮
シニア人材にとって、給与額よりも「体力に無理がないか」「働く時間が柔軟か」といった条件が重視されます。面接では「週○日・1日○時間から勤務可能」といった具体的な柔軟性を伝えると安心感を与えられます。
2. 経験や知識を尊重する態度
シニア人材は豊富な経験を持っていますが、それを評価されないとモチベーションが下がりやすい傾向にあります。「これまでの経験を○○の場面で活かしてほしい」と具体的に伝えることが、内定承諾の決め手になります。
3. コミュニケーション環境の説明
シニア世代は人間関係を重視する傾向が強いため、職場の雰囲気やチーム体制を丁寧に説明することが大切です。例えば「新人でも質問しやすい雰囲気がある」「世代を超えた交流の機会がある」といった情報は、働くイメージをポジティブにさせます。
4. 学び直しや成長の機会を提示する
「新しいことを学びたい」という意欲を持つシニアも少なくありません。簡単な研修制度やOJTの機会を紹介することで「ここなら安心して成長できる」と感じてもらえます。
これらのポイントを押さえることで、シニア人材は「安心して長く働けそうだ」と納得しやすくなります。結果として内定承諾率が高まり、企業にとっても安定した人材確保につながるのです。
6.まとめ|内定承諾率を上げる面接は「信頼」と「納得感」がカギ
内定承諾率を上げるために必要なのは、条件を整えることだけではありません。面接を通じて「信頼」と「納得感」をどれだけ応募者に与えられるかが最大のポイントです。
これまで見てきたように、承諾率が低い背景には「他社比較」「面接官の対応」「不安の解消不足」といった要因があります。だからこそ、準備段階から応募者目線に立った情報提供と、面接での丁寧なコミュニケーションが欠かせません。
特に重要なのは、応募者に「この会社で働く未来」を具体的にイメージしてもらうことです。経験を尊重する質問や、安心できる条件提示、職場環境の透明な説明は、候補者に安心感と前向きな気持ちを与えます。厚生労働省の調査やリクルートワークス研究所のデータが示す通り、応募者の心理的な安心感は承諾率に直結しているのです。
また、シニア人材採用においては「健康や働きやすさへの配慮」「人間関係の良さのアピール」が特に効果的です。これは若手採用にも応用できる要素であり、世代を超えて「選ばれる企業」になるための共通項といえるでしょう。
結局のところ、内定承諾率を上げる面接とは、応募者との信頼関係を築き、納得感を持ってもらうことに尽きます。採用担当者が誠実に向き合い、未来への期待を共有できる企業こそが、安定した採用成功を実現できるのです。
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