「朗読」が脳を鍛える!シニア世代に効果的な認知症予防法とは?

健康

1.朗読と認知症予防の関係とは?

朗読は「文字を目で追いながら声に出して読む」という行為であり、単に読書をするよりも多くの脳の領域を使う活動です。文章を理解し、声に変換し、耳で自分の声を聞く。この一連の流れによって、視覚・聴覚・言語中枢・運動機能などが同時に働き、脳全体が活性化されると考えられています。特に認知症予防に重要とされる「前頭前野」の働きを促す点が注目されています。

通常の読書では文字を理解する力が中心に使われますが、朗読ではさらに「発声」や「感情表現」が加わるため、脳への刺激が強まります。実際、国立長寿医療研究センターが提唱する「コグニサイズ」では、音読や計算などの認知課題と運動を組み合わせることで、認知機能の維持や改善につながることが報告されています(参考:国立長寿医療研究センター「コグニサイズ」公式情報)。

また、朗読には「自分の声を聞く」という二重の入力効果があります。文字を目で見て理解するだけでなく、耳からも再度情報を受け取ることで、内容の定着率が高まりやすいのです。これにより短期記憶から長期記憶への移行がスムーズになり、認知症予防に効果が期待できるとされています。

さらに、朗読は脳だけでなく心にも良い影響を与えます。声に出すことで気持ちが整理され、情緒が安定しやすくなるため、孤独感やストレスの軽減にもつながります。これらは結果的に認知症のリスクを下げる要因ともいえるでしょう。


2.朗読がもたらす3つの健康効果

朗読は単なる趣味や娯楽にとどまらず、シニア世代の心身にさまざまな良い影響を与えます。ここでは、特に認知症予防と関連が深い3つの効果を紹介します。


1. 記憶力の維持・向上

声に出して文章を読むと、「理解 → 発声 → 聴覚で確認」という3つのステップを踏むため、自然と記憶の回路が強化されます。例えば新聞記事を朗読すると、内容を理解しながら読み上げる必要があるため、ただ黙読するよりも記憶に残りやすいのです。東京大学の研究でも、音読を習慣的に行う高齢者は、短期記憶と作業記憶のテストで高い結果を示したと報告されています(参考:東京大学高齢社会総合研究機構)。このことから、朗読は脳の「覚える力」を保つトレーニングになるといえます。


2. 感情表現によるストレス軽減

朗読はただ読むだけでなく、声のトーンや抑揚をつけて感情を表現します。感情を声に乗せることで、副交感神経が優位になりリラックス効果が高まるといわれています。詩や物語を朗読すると、登場人物の気持ちに寄り添ったり、自分の感情を重ねたりすることで、自然と心が落ち着きます。これは心理療法にも近い効果を持ち、ストレスや孤独感の軽減につながるのです。


3. 発声による口腔機能・コミュニケーション力アップ

加齢に伴って衰えやすい「口の筋肉」を鍛えることも、朗読の大きなメリットです。発声することで口腔周囲の筋肉が動き、嚥下機能(食べ物を飲み込む力)の維持にも役立ちます。実際、日本音声言語医学会の報告でも、朗読や歌唱を習慣化している高齢者は口腔機能の衰えが緩やかであると示されています。さらに、朗読を人前で行うと「伝える力」や「聞く力」も磨かれるため、社会的なコミュニケーション能力の維持にも効果的です。


このように、朗読は「記憶力」「心の安定」「身体機能」の3つにアプローチできる、一石三鳥の習慣といえるでしょう。


3.シニア世代におすすめの朗読の始め方

朗読は特別な準備や道具がなくても始められる、とても手軽な習慣です。続けやすい形を見つければ、毎日の生活に自然と取り入れられ、認知症予防や健康維持につながります。ここでは、シニア世代におすすめの朗読の始め方を紹介します。


1. 1日10分から始めるのがコツ

朗読を習慣化するうえで大切なのは「無理をしない」ことです。最初から長時間取り組もうとすると疲れてしまい、続かなくなります。まずは朝の時間や寝る前など、日常生活の中で「1日10分」を目安に声に出して読んでみましょう。例えば新聞のコラムや短い詩など、すぐに読み終えられるものがおすすめです。10分の積み重ねでも、毎日続けることで脳への刺激が習慣的になり、効果が実感しやすくなります。


2. 題材選びは「好きなもの」から

朗読の効果を高めるためには、題材選びも重要です。シニア世代に特におすすめなのは以下のようなものです。

新聞や雑誌の記事:時事問題を取り入れられるため、社会とのつながりも意識できる。
小説やエッセイ:感情を込めやすく、物語を楽しみながら取り組める。
詩や短歌:短くてリズムがあるので、初心者でも取り組みやすい。
童話や昔話:思い出と結びつくことで、感情が豊かに動きやすい。

特に「自分が好きな本」を選ぶことが大切です。好きな内容ならモチベーションが続きやすく、読み返すことでさらに脳が活性化されます。


3. 声に出す環境を工夫する

朗読は声を出す行為なので、できれば静かで落ち着いた環境を選びましょう。朝のリビングや自室など、リラックスできる場所で取り組むのがおすすめです。周囲の音が気になる場合は、軽く音読するだけでも十分効果があります。また、録音機能を使って自分の声を後から聞いてみると、発声のクセや抑揚の付け方が分かり、より楽しめるでしょう。


4. 習慣化の工夫

「コーヒーを飲む前に読む」「寝る前に詩を一編だけ」など、既にある日常習慣とセットにすると長続きします。これは習慣化の心理学研究(参考:Lally et al., European Journal of Social Psychology, 2010)でも示されている方法で、行動を固定化させる効果があるとされています。


朗読は小さく始めて、好きな題材で楽しむことが一番のコツです。気負わずに生活の一部として取り入れれば、健康習慣として自然と根づいていくでしょう。


4.朗読を続けるための工夫と仲間づくり

朗読は一人でも楽しめる活動ですが、継続するためには「人とのつながり」を意識することが大切です。孤独になりがちなシニア世代にとって、朗読は健康習慣であると同時に、社会的な交流を生み出すきっかけにもなります。ここでは、朗読を長く続けるための工夫と仲間づくりの方法を紹介します。


1. 読書会や朗読サークルに参加する

地域の公民館や図書館、カルチャーセンターでは「朗読会」や「読書サークル」が定期的に開催されていることがあります。複数人で同じ本を声に出して読むと感想を共有できるため、理解が深まり、会話も弾みます。人前で読むことで「伝える力」も鍛えられ、自信にもつながります。また、グループ活動は「やめにくさ」という良い意味でのプレッシャーが働き、習慣を維持しやすくなる効果もあります。

探し方の例
図書館や公民館の掲示板:地域のイベント情報がよく貼り出されています。
市町村の広報誌:朗読会や読書会は「文化・健康イベント」として案内されることが多いです。
インターネット検索:「〇〇市 朗読会」「シニア 読書サークル」などのキーワードで調べると、地域の活動が見つかります。
カルチャーセンターや生涯学習講座:大手カルチャーセンター(NHK文化センター、朝日カルチャーセンターなど)でも朗読講座が開かれている場合があります。

このように身近な場所や媒体をチェックすれば、自分に合った朗読仲間を見つけやすく


2. 家族や友人と一緒に楽しむ

朗読は世代を問わず楽しめる活動です。例えば、お孫さんに昔話を読んであげたり、友人と新聞記事を声に出して読んだりと、日常生活の中で気軽に取り入れることができます。特に家族との朗読は「コミュニケーションの時間」を自然と増やすことになり、孤独感の軽減や精神的な安心感にもつながります。


3. 自分の朗読を録音・発信する

最近ではスマートフォンやタブレットを使って、簡単に朗読を録音できます。自分の声を聞き返すことで上達を実感でき、続けるモチベーションにもなります。また、SNSやYouTubeで朗読を発信するシニア世代も増えており、新しい仲間や共感を得られる場として活用できます。自分の趣味が社会的なつながりに発展する可能性もあるのです。


4. 続けやすい仕組みをつくる

「毎週◯曜日は朗読の日」と決めて予定表に書き込む、日記アプリに記録を残すなど、続けやすい工夫も効果的です。厚生労働省の調査(参考:厚生労働省「高齢者の社会参加と健康」2021)でも、継続的な活動に参加している高齢者は、身体的・精神的健康状態が良好であると報告されています。朗読を単なる趣味にとどめず、生活の一部に組み込むことが、認知症予防に役立つ「長続きする習慣」になるのです。


朗読を「一人の楽しみ」と「仲間との交流」の両方で実践することで、認知症予防効果を高めながら、生活そのものを豊かにしていくことができます。


まとめ|朗読習慣で楽しく認知症予防を!

朗読は「文字を声に出して読む」というシンプルな行為ですが、その効果は想像以上に大きいものです。目で文字を追い、声に出し、自分の耳で聞き返す一連の動作は、脳全体を活性化し、記憶力や注意力の維持に役立ちます。また、感情を込めて読むことでストレスが和らぎ、心が落ち着く効果も期待できます。さらに発声によって口や舌の筋肉が鍛えられ、食事や会話を楽しむための機能を維持することにもつながります。

シニア世代にとって、朗読は認知症予防だけでなく「生きがいづくり」の側面もあります。お気に入りの本を読む時間は生活に彩りを与え、読書会やサークルに参加することで新しい人間関係も広がります。これは孤独感の軽減や社会参加の促進にも直結し、心身の健康を支える大きな力となります。

重要なのは「無理なく、楽しく続けること」です。1日10分から始めて、自分が好きな題材を選び、仲間と一緒に取り組めば、朗読は自然と日常生活の一部になっていきます。そしてその習慣は、健康寿命を延ばし、充実したセカンドライフを送るための心強い支えになるでしょう。

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