がん予防「5+1の健康習慣」|シニア世代が今日から無理なく続けるチェックリスト

健康

1. はじめに|がん予防は“特別なこと”ではなく“毎日の習慣”から

がんは日本人の死因の第1位であり、2人に1人が生涯のうちにがんを経験すると言われています。
しかし、国立がん研究センターの報告によれば、生活習慣を見直すことで、がんの約半数は予防できることがわかっています(出典:国立がん研究センター がん情報サービス「科学的根拠に基づくがん予防」)。

つまり、がん予防とは特別な医療行為ではなく、日々の生活の中に“少しの意識”を加えることから始まります。
特にシニア世代にとっては、体をいたわりながら健康的に働き、趣味や家族との時間を楽しむためにも、生活習慣の見直しが欠かせません。

この記事では、国立がん研究センターが科学的根拠に基づいて示している「日本人のためのがん予防法(5+1)」をもとに、今日から実践できるポイントをわかりやすく紹介します。
健康寿命をのばす第一歩を、一緒に踏み出しましょう。


2. 「5+1の健康習慣」とは?|日本人のためのがん予防法の基本

国立がん研究センターでは、日本人の生活習慣とがんの発症データをもとに、科学的根拠に基づく「5+1の健康習慣」を提示しています。
これは、「毎日の暮らしの中で、がんを予防するためにできる6つの行動」としてまとめられたもので、どれも特別な器具やサプリを必要とせず、誰でも今日から取り入れられる内容です。


🔹 日本人のためのがん予防法(5+1)

区分習慣主なポイント
1禁煙(受動喫煙を含めて避ける)すべてのがん予防の基本。煙を吸わない・吸わせない。
2節度ある飲酒飲みすぎを避け、週に数日は休肝日を設ける。
3バランスのとれた食事(野菜・果物の摂取、減塩)偏りをなくし、塩分・加工肉を控えめに。
4身体を動かす習慣をもつ(適度な運動)毎日少しでも体を動かし、血流と代謝を維持。
5適正体重の維持肥満もやせすぎもリスク。BMI22前後を目安に。
+1感染症の予防と対策肝炎ウイルス・HPVなど、感染由来のがんを防ぐ。

(出典:国立がん研究センター がん情報サービス「科学的根拠に基づくがん予防」


💬 ポイント

この6項目は、がんだけでなく生活習慣病や認知症の予防にもつながる共通の健康基盤です。
つまり、「がんにならない体」をつくることは、「健康寿命をのばす体づくり」とイコールでもあります。
無理をせず、できるところから一歩ずつ始めることが大切です。


3. 【その1】禁煙(受動喫煙を含めて避ける)

たばこは、がん予防において最も重要なリスク要因のひとつです。
国立がん研究センターによると、喫煙は肺がんだけでなく、口腔・喉頭・膀胱・膵臓など、少なくとも15種類以上のがんに関係しているとされています(出典:国立がん研究センター がん情報サービス「たばことがん」)。
さらに、たばこを吸わない人でも、他人の煙(受動喫煙)によってがんリスクが高まることがわかっています。


🚭 喫煙がもたらす影響

たばこの煙には約7,000種類の化学物質が含まれ、そのうち約70種類が発がん物質とされています。
これらが細胞のDNAを傷つけ、がんを引き起こす原因となります。
しかし、禁煙を始めることでリスクは確実に低下します。
禁煙後10年で、肺がん死亡リスクは喫煙者の半分程度にまで下がると報告されています(出典:WHO「WHO report on the global tobacco epidemic 2023」)。


🫁 受動喫煙も同じくらい危険

家庭や職場での受動喫煙は、非喫煙者でも肺がんや虚血性心疾患を発症するリスクを高めます。
特に家庭内での喫煙は、女性や子どもの健康に深刻な影響を及ぼします。
厚生労働省の「健康・医療受動喫煙対策」によると、家庭内禁煙の徹底がもっとも効果的な予防法です。


💡 禁煙成功のコツ

禁煙は「意志」より「環境」が鍵です。
禁煙外来の受診、ニコチンパッチ・ガムの活用、地域の禁煙支援プログラムなどを利用すれば、禁煙成功率は3倍以上に高まるとされています(出典:厚生労働省「禁煙支援マニュアル」)。
「今日から一本減らす」──そんな小さな一歩でも、確実に未来の健康につながります。


4. 【その2】節度ある飲酒

お酒も「量」と「頻度」によっては、がんの発症リスクを高める要因になります。
国立がん研究センターの研究では、飲酒量が多いほど口腔・咽頭・食道・肝臓・大腸・乳がんのリスクが高くなることが示されています。
「少しぐらいなら大丈夫」と思われがちですが、がん予防の観点では“飲まないに越したことはない”というのが実情です。


🍶 節度ある飲酒の目安

厚生労働省「健康日本21(第二次)」によると、がんをはじめとする生活習慣病の予防には、
1日の純アルコール摂取量を20g未満にすることが推奨されています。
以下はその目安量です。

飲み物純アルコール20gの目安量
ビール(5%)中瓶1本(500ml)
日本酒(15%)約1合(180ml)
焼酎(25%)約0.6合(110ml)
ワイン(12%)約2杯(200ml)

毎日飲むよりも、週に2日は休肝日を設けることで、肝臓を休ませることができます。


⚠️ 飲みすぎが引き起こすリスク

アルコールは体内で分解されるときに「アセトアルデヒド」という発がん性物質を生成します。
特に日本人の約4割は、この物質を分解する酵素(ALDH2)の働きが弱く、少量でも発がんリスクが高まりやすい体質です。
「顔が赤くなりやすい」「動悸がする」という人は、無理に飲酒しないことが大切です。


🌿 飲まない選択も“健康の積立”

年齢を重ねると、アルコールの代謝能力は徐々に低下します。
「昔は大丈夫だった量でも、今は効きすぎる」と感じる人は多いでしょう。
お酒とのつきあい方を見直すことは、自分の体をいたわる「健康の積立」でもあります。
仲間との時間を楽しみたいときは、ノンアルコール飲料やお茶を選ぶのも立派ながん予防の一歩です。


5. 【その3】バランスのとれた食事(野菜・果物の摂取、減塩)

食事は、がん予防に直結する最も身近な習慣のひとつです。
国立がん研究センターは、「野菜や果物を積極的に摂る」「塩分を控える」「加工肉を減らす」ことが、がんリスク低下につながるとしています。
食生活の改善は難しく感じるかもしれませんが、日々の小さな選択の積み重ねが将来の健康を左右します。


🥦 野菜・果物を“あと一皿”増やす

野菜や果物には、ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富に含まれており、これらが体内の酸化ストレスを抑制し、発がん物質を無害化する働きを持ちます。
特にブロッコリー、にんじん、トマト、みかん、りんごなど、彩り豊かな食材を意識して取り入れることがポイントです。
厚生労働省は、野菜350g以上・果物200g以上/日を目標に掲げています。


🧂 減塩が胃がん予防のカギ

塩分の摂りすぎは、胃の粘膜を傷つけ、胃がん発症のリスクを高めるとされています。
厚生労働省「国民健康・栄養調査(2022年)」によると、日本人の平均食塩摂取量は約9〜10g/日で、推奨量(男性7.5g未満、女性6.5g未満)を大きく上回っています。
味付けを“ほんの少し薄める”、出汁や香味野菜で風味を補うだけでも、自然に減塩できます。


🍖 加工肉や脂肪の摂りすぎに注意

ハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工肉は、世界保健機関(WHO)によって「発がん性がある」食品群(グループ1)に分類されています。
これらを控え、肉料理をする際は赤身肉や鶏むね肉を選ぶなど、バランスを意識しましょう。
また、揚げ物中心の食生活も避け、オリーブオイルや魚の脂(EPA・DHA)などの
良質な脂質を摂るのが理想です。


🍚 「誰かと食べる」ことも健康習慣

食事は栄養補給だけでなく、心の健康にも直結します。
家族や友人と食卓を囲むことで、自然と栄養バランスが整い、孤食によるストレスも減ります。
「何を食べるか」だけでなく、「誰と食べるか」も、長寿の秘訣のひとつです。


小さな改善でも、毎日続けることが何よりの力になります。
明日の食卓から、「野菜を一品増やす」「味を少し薄くする」──その一歩ががん予防につながります。


6. 【その4】身体を動かす習慣をもつ(適度な運動)

「運動」は、がん予防のために欠かせない生活習慣のひとつです。
国立がん研究センターによると、身体活動量の多い人は、大腸がん・乳がん・肝がんなどの発症リスクが低いことが示されています(出典:国立がん研究センター がん情報サービス「身体活動とがん」)。
運動は肥満の防止だけでなく、免疫機能の維持・ホルモンバランスの安定・慢性炎症の抑制にも役立ちます。


🚶 毎日少しでも「体を動かす」ことが大切

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」では、
1日あたり60分程度の身体活動(軽い運動を含む)が推奨されています。
ウォーキング、掃除、買い物、ガーデニングなど、日常の動作も立派な運動です。
「エスカレーターをやめて階段にする」「一駅歩く」など、生活の中で体を動かす工夫をしましょう。


💪 有酸素運動+筋トレの組み合わせが理想

ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動は、脂肪を燃やして代謝を高めます。
一方、スクワットや椅子の立ち座り運動などの筋トレは、筋肉量を維持し、基礎代謝を支えます。
週2〜3回、10分程度でも続けることで、血糖や脂質のバランスが改善し、がんのリスク低下につながるとされています。


🧘 無理をせず、楽しみながら続けよう

シニア世代にとって大切なのは、「激しい運動より、継続できる運動」。
ラジオ体操やストレッチ、軽いウォーキングなど、自分に合ったペースで行うことがポイントです。
友人や家族と一緒に取り組むことで、楽しみながら習慣化できます。
体を動かすことが、“健康維持の手段”ではなく、“生きがいのひとつ”になるよう意識してみましょう。


運動は、「やらなければいけない」ものではなく、「続けるほど体が喜ぶ」習慣です。
体を動かすたびに、未来の自分を元気にしている──そんな気持ちで、今日から始めてみませんか?


7. 【その5】適正体重の維持

「体重の管理」は、がん予防における基礎中の基礎です。
肥満は、大腸がん・乳がん・子宮体がん・肝がんなどのリスクを高めることが知られています。
一方で、極端なやせすぎも免疫力の低下を招き、病気への抵抗力を弱めます。
つまり、「太りすぎず・やせすぎず」を保つことが、がんになりにくい体づくりの第一歩です。


⚖️ 目標はBMI22前後

健康的な体重を判断する指標として、BMI(Body Mass Index)がよく使われます。
計算式は「体重(kg)÷身長(m)²」で、日本人ではBMI22が最も病気になりにくい値
とされています。

BMI値判定健康リスク
18.5未満やせ免疫低下・骨粗しょう症リスク
18.5〜24.9適正体重がん・生活習慣病リスクが低い
25以上肥満糖尿病・がん・高血圧リスク上昇

特に内臓脂肪が多い「隠れ肥満」は、見た目に関係なくがんリスクを高めるため、ウエスト周囲径(男性85cm、女性90cm未満)も目安にしましょう。


🍱 「食べすぎない」「間食を減らす」から始めよう

体重管理の基本は、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスです。
「1日3食を規則正しく」「腹八分目を意識」「夜遅くの食事を避ける」だけでも、自然と体重コントロールができます。
また、糖分の多い飲み物や間食を減らすことで、血糖値や脂肪の蓄積を防げます。


🏃‍♀️ 運動との組み合わせで“燃える体”に

適度な運動を続けることで、筋肉量が増え、脂肪が燃えやすい体質に変わります。
特にウォーキングや軽い筋トレは、体脂肪の減少とホルモンバランスの改善に効果的です。
「体重を減らす」よりも「健康的に保つ」意識を持つことが、長く続けるコツです。


体重のコントロールは“見た目”のためだけではなく、“内臓の健康”のため。
無理なダイエットではなく、日々の生活リズムを整えることが、結果的に最良のがん予防法となります。


8. 【+1】感染症の予防と対策

がんの中には、感染が原因で発症するものがあります。
国立がん研究センターによると、日本人のがんのうち約15〜20%は感染症が関係しているとされています。
つまり、「感染症を防ぐこと」は、「がんを防ぐこと」と同じ意味を持つのです。


🧬 主な感染と関係するがん

感染が関係する代表的ながんには、次のようなものがあります。

感染症主な原因ウイルス・細菌関連するがん予防策
肝炎B型・C型肝炎ウイルス肝がんワクチン接種、定期検査
子宮頸がんヒトパピローマウイルス(HPV)子宮頸がん、肛門がんなどHPVワクチン、定期検診
胃がんヘリコバクター・ピロリ菌胃がん除菌治療、衛生的な食習慣
成人T細胞白血病リンパ腫HTLV-1ウイルス血液がん献血・母子感染の防止

💉 ワクチンと検査で予防する

B型肝炎とHPV(ヒトパピローマウイルス)は、ワクチンで予防可能ながん関連感染症です。
厚生労働省は、これらのワクチン接種を推奨しており、特にHPVワクチンは自治体の定期接種やキャッチアップ制度も整っています。
C型肝炎やピロリ菌感染は、定期的な検査で早期に発見・治療することが重要です。


🌍 日常生活でできる感染予防

感染症の多くは、生活の中のちょっとした工夫で防げます。

・食事の前後/帰宅後の手洗いを徹底する
・調理器具を清潔に保ち、生肉の加熱を十分にする
・定期的に歯科検診を受け、口腔内を清潔に保つ

こうした基本的な衛生習慣も、がんの予防につながります。


💡 「検診+ワクチン」でがんを遠ざける

感染が原因のがんは、“早期発見・予防が可能ながん”です。
ワクチン接種と定期的な検診を組み合わせることで、発症リスクを大幅に下げることができます。
特にシニア世代では、肝炎ウイルスの検査を受けたことがない人も多く、早めの確認が大切です。
自分の体を守る行動が、将来の安心につながります。


9. まとめ|今日から始める“がん予防の5+1習慣”

がん予防は、特別な医療行為ではなく、日々の生活習慣の積み重ねから始まります。
国立がん研究センターが提唱する「日本人のためのがん予防法(5+1)」──
すなわち、

1.禁煙(受動喫煙を含めて避ける)
2.節度ある飲
3.バランスのとれた食事(野菜・果物の摂取、減塩)
4.身体を動かす習慣をもつ(適度な運動)
5.適正体重の維持
+1. 感染症の予防と対策
この6つの習慣を意識するだけで、がん発症リスクを大きく下げられることが、科学的に証明されています。


    📊 科学的根拠が示す「約40%のリスク低下」

    国立がん研究センターが実施した大規模追跡調査(JPHC Study)では、
    これらすべての習慣を実践している人は、そうでない人に比べてがん発症リスクが約40%低いことが確認されています(出典:国立がん研究センター がん情報サービス「科学的根拠に基づくがん予防」)。
    つまり、“少しの心がけ”が、将来の大きな健康差につながるということです。


    🌿 小さな習慣を、今日からひとつずつ

    完璧を目指す必要はありません。
    「今日はお酒を控えた」「いつもより多く歩いた」「塩分を少し減らした」──
    その一歩一歩が、あなたの体を確実に変えていきます。
    無理なく続けられるペースで、“できることから始める”ことが最大のポイントです。


    💬 健康寿命をのばす=自分らしい時間をふやす

    がんを防ぐことは、“長生きする”ことだけでなく、自分らしく元気に生きる時間をふやすことでもあります。
    毎日の食事、運動、そして心のゆとりが、あなたの明日を支えます。
    今日から「5+1の健康習慣」を、あなたの生活の中に取り入れてみましょう。

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