1.なぜ中途採用では「職歴欄」が最も重視されるのか
中途採用の履歴書において、採用担当者が最も注目する項目は「職歴欄(職務経歴蘭)」だと言われています。その理由は非常にシンプルで、中途採用は「これまで何をしてきた人なのか」「自社で何ができそうか」を判断する採用だからです。新卒採用のように将来性や学歴を見るのではなく、過去の仕事の積み重ねそのものが評価材料になります。
採用担当者は、限られた時間の中で多くの履歴書を確認しています。その中で、まず確認されるのが「どんな職場で、どんな役割を担ってきたのか」という点です。職歴欄を見れば、応募者の経験値、仕事への向き合い方、現場への理解度がある程度読み取れるため、判断の軸として最も効率的なのです。
特に中途採用では、「この人は入社後すぐに現場で動けそうか」「周囲と協力しながら働けそうか」といった実務適応力が重視されます。これらは自己PRや志望動機よりも、職歴の内容から自然に伝わります。どのような仕事を、どれくらいの期間、どんな立場で行ってきたのかは、言葉以上に説得力を持ちます。
また、シニア世代の場合、「年齢」そのものよりも「経験の活かし方」が問われる傾向が強くなります。職歴欄が整理されていれば、「長く働いてきた=安定して仕事を続けられる人」「現場を理解している即戦力」という前向きな印象につながります。逆に、職歴が読みづらいと、それだけで評価が下がってしまうこともあります。
つまり、中途採用において職歴欄は「過去の記録」ではなく、「これから働く姿を想像させる材料」です。だからこそ、採用担当者は最初に、そして最も慎重に職歴欄を見ているのです。
2.中途採用では「職歴」が決め手|約半数の担当者が最重視する理由
中途採用の履歴書で「職歴欄」が重視される背景には、実務経験の即戦力性が大きく関係しています。
実際に、転職サービス大手の「doda(デューダ)」が2025年に公表している採用担当者向け調査では、履歴書の中で「職歴欄」を最も重視すると回答した割合が48.6%と、他の項目を大きく上回っています。学歴や資格を挙げた担当者を抑えて職歴が圧倒的に1位となっており、中途採用においては「これまで何をしてきたか」が、評価の中心になっていることがはっきりと示されています。
この背景には、中途採用が「実務経験者を求めている」という採用意図があります。企業側は新卒のように一から育成するのではなく、現場で即戦力として働ける人材を求めています。そのため、過去にどのような仕事をしてきたかという実績は、資格や自己PRよりも重視されがちです。
たとえば施設管理や現場系の仕事では、日々の安全管理、設備点検、利用者や来訪者への対応など、現場に根ざした業務能力が問われます。これらのスキルや姿勢は、資格欄に「○○資格あり」と書くだけでは伝わりにくく、職歴欄の経験内容から読み取られることが多いのです。
また採用担当者が職歴欄を確認する際には、「転職回数」そのものよりも どのような役割を担っていたか・どんな成果を出していたか を重視します。一つひとつの職場での仕事の中身が丁寧に書かれていると、「現場での対応力」や「責任感」「継続力」が伝わり、選考通過につながりやすくなります。
このように 職歴欄は単なる過去の記録ではなく、応募者の“これからの働き方”を感じ取るための重要な情報 になります。だからこそ、採用担当者の約半数が最も重視するのです。
3.シニア世代の中途採用で職歴欄が果たす役割とは
シニア世代の中途採用において、職歴欄は単なる「経歴の一覧」ではありません。むしろ、年齢では測れない価値を伝えるための最重要ポイントだと言えます。採用担当者は、年齢そのものよりも、「どのような経験を積み、今どのように活かせそうか」という視点で職歴を見ています。
多くのシニア応募者は、「年齢で不利になるのではないか」「若い人と比べられるのでは」と不安を感じがちです。しかし実際の採用現場では、体力やスピードだけでなく、安定して働けるか、現場を理解しているか、周囲と協調できるかといった点が重視されます。これらはすべて、職歴欄から読み取られる要素です。
特に長年同じ職場で働いてきた経験は、「継続力」「責任感」「仕事への向き合い方」として評価されやすい傾向があります。シニア世代の職歴は、転職回数が少なく、一つひとつの仕事に腰を据えて取り組んできたケースも多いため、企業にとっては“定着が期待できる人材”として映ることも少なくありません。
また、シニア採用では「何ができるか」だけでなく、「どの範囲まで任せられるか」が重要になります。職歴欄に業務内容が具体的に書かれていれば、「この人にはこの業務をお願いできそうだ」「このポジションなら無理なく働いてもらえそうだ」と、採用後のイメージがしやすくなります。これは、ミスマッチを避けたい企業側にとって大きな判断材料です。
つまり、シニア世代にとって職歴欄は、過去を誇るための場所ではなく、これからの働き方を説明するための欄です。自分の経験をどう整理し、どんな形で役立てられるかを示すことで、年齢に左右されない評価につながっていきます。
4.採用担当に伝わる職歴欄の基本構成【3つの整理ルール】
職歴欄が重視されるとはいえ、「何を書けばいいのかわからない」「職歴が多くて整理できない」と感じる方も多いはずです。特にシニア世代の場合、長い職歴があるからこそ、書き方次第で“伝わる履歴書”にも、“読みにくい履歴書”にもなってしまいます。ここでは、採用担当に伝わりやすくするための、基本となる3つの整理ルールを紹介します。
ルール①:職歴は「すべて」ではなく「伝えたい軸」でまとめる
まず大切なのは、過去の職歴をすべて細かく書こうとしないことです。中途採用では、「この仕事にどう活かせるか」が最も重要です。そのため、応募先の仕事と関係のある経験を軸にして職歴を整理します。
たとえば、施設管理の仕事に応募する場合、製造業での安全管理、点検業務、チームでの現場作業などは、十分に関連性のある経験です。一方で、今回の仕事に直接関係しない内容は、簡潔にまとめても問題ありません。
ルール②:会社名+期間+役割をセットで書く
職歴欄では、「どこで」「どれくらい」「何をしていたか」が一目で分かることが重要です。
会社名と在籍期間だけで終わらせず、「どんな役割を担っていたか」を一言添えるだけで、印象は大きく変わります。
例として、「設備点検を担当」「現場の安全確認と報告業務を担当」など、具体的な役割を書くことで、採用担当者は仕事のイメージをしやすくなります。
ルール③:成果よりも「任されていたこと」を意識する
シニア世代の職歴欄では、無理に数字や成果を強調する必要はありません。それよりも、「何を任されていたか」「どんな責任を持っていたか」を伝えることが重要です。
長く同じ業務を任されていた事実は、それだけで「信頼されていた」「安定して働いていた」証拠になります。採用担当者は、派手な実績よりも、安心して任せられる人かどうかを職歴から読み取っています。
この3つのルールを意識するだけで、職歴欄は格段に読みやすくなり、採用担当者に伝わりやすくなります。職歴は「量」ではなく、「整理の仕方」が評価を左右するのです。
5.やってはいけない職歴欄のNG例と改善ポイント
職歴欄は、少しの書き方の違いで評価が大きく分かれる項目です。特にシニア世代の場合、内容そのものは十分でも、書き方のクセによって損をしてしまっているケースが少なくありません。ここでは、採用担当者が「読みづらい」「判断しにくい」と感じやすいNG例と、その改善ポイントを紹介します。
NG例①:職歴が長すぎて何をしてきた人か分からない
長年働いてきた方ほど、すべての職歴を細かく書きがちです。しかし、職歴が多すぎると、採用担当者は「結局、どんな仕事が得意なのか」をつかめません。
改善ポイントは、応募先に関係のある経験を軸にまとめることです。関連性の低い職歴は簡潔に整理し、「今回の仕事につながる経験」が浮かび上がる構成にしましょう。
NG例②:会社名と期間だけで終わっている
「○年○月〜○年○月 ○○株式会社勤務」といった記載だけでは、採用担当者は判断できません。どんな仕事をしていたのかが分からないため、評価のしようがないのです。
改善ポイントは、各職歴に一言でも業務内容を添えることです。「設備点検を担当」「現場作業のサポートを担当」など、短くても具体性があると印象は大きく変わります。
NG例③:退職理由をネガティブに書きすぎている
職歴欄や補足欄で、退職理由を細かく説明しすぎるケースも見られます。特に、人間関係や会社都合などを強調しすぎると、採用担当者に不安を与えてしまいます。
改善ポイントは、職歴欄では事実を簡潔に記載し、詳しい説明は面接で伝えることです。履歴書では「業務内容」と「役割」に集中しましょう。
NG例④:自分では当たり前だと思っている経験を書いていない
「こんなことは誰でもやっている」と思って書かれていない経験も、実は評価ポイントになることがあります。安全確認、報告・連絡、後輩への声かけなどは、現場では重要な要素です。
改善ポイントは、当たり前にやってきたことこそ言葉にすることです。シニア世代ならではの安定した働き方や姿勢は、職歴欄でしっかり伝える価値があります。
職歴欄は、「盛る」場所ではなく、「誤解なく伝える」場所です。NG例を避け、採用担当者が安心して読み進められる職歴欄を意識することで、書類選考の通過率は大きく変わってきます。
6.採用担当者は職歴の「どこ」を見ているのか?評価される共通ポイント
採用担当者が職歴欄を見るとき、必ずしも「職種名」や「業界名」だけを見ているわけではありません。実際の選考現場では、職種を超えて共通する“判断の視点*があり、そこが合否を分けるポイントになります。dodaの採用担当者向け解説でも示されている通り、職歴欄は「経歴の羅列」ではなく、「仕事の中身」を読み取るための情報として見られています。
まず最も重視されるのが、「どんな仕事内容を担ってきたか」です。肩書きや部署名よりも、実際に日々どのような業務に関わってきたのかが評価されます。営業・事務・製造・サービスなど職種が違っても、「担当業務が具体的に書かれているかどうか」は共通して見られるポイントです。仕事内容が具体的であればあるほど、採用担当者は入社後の活躍イメージを描きやすくなります。
次に見られるのが、「どのレベルまで任せられていたか」です。管理職かどうかよりも、一人で対応していたのか、決まった範囲を継続して任されていたのか、周囲と連携して業務を進めていたのか、といった点が判断材料になります。これは「即戦力かどうか」だけでなく、「安心して任せられる人か」を見極めるための視点でもあります。
さらに、「継続性・再現性があるか」も重要です。短期間で職場を転々としているか、一定期間同じ業務を続けてきたかは、仕事への向き合い方を判断する材料になります。特に中途採用では、「同じような業務を、安定して続けられるか」という点が重視されるため、長く携わってきた業務は大きな強みになります。
このように、採用担当者が職歴欄から見ているのは、特定の職種にしか通用しないスキルではありません。仕事内容の具体性・任されていた範囲・継続してきた姿勢といった、職種を問わず共通するポイントです。職歴欄を整理する際は、「自分は何者か」ではなく、「どんな仕事の進め方をしてきたか」が伝わるかを意識することが重要です。
7.職歴欄を整えるだけで「もう一度働ける」可能性は広がる
中途採用において、職歴欄は「過去を評価される場所」であると同時に、「これからの働き方を想像してもらう場所」でもあります。特にシニア世代の場合、年齢やブランクを気にするあまり、自分の職歴に自信を持てなくなってしまう方も少なくありません。しかし、実際の採用現場では、「どんな姿勢で働いてきたか」「どのように現場を支えてきたか」が、静かに、しかし確実に見られています。
これまで解説してきたように、職歴欄は決して立派な実績や特別な肩書きを並べる場所ではありません。日々の業務を丁寧にこなし、長く現場を支えてきた経験そのものが、評価の対象になります。職歴を整理し、応募先の仕事に関係する経験が分かる形で書き直すだけでも、履歴書全体の印象は大きく変わります。
また、職歴欄が整っていると、採用担当者は「この人にはこの業務をお願いできそうだ」「この働き方なら無理なく続けてもらえそうだ」と、採用後の姿を具体的に思い描くことができます。これは、年齢に関係なく、書類選考を通過するうえで非常に大きなポイントです。
「もう一度働きたい」「社会とつながり続けたい」と考えたとき、特別な準備が必要なわけではありません。これまで積み重ねてきた職歴を、相手に伝わる形に整えること。それだけで、働くチャンスは確実に広がります。職歴欄は、シニア世代にとって、これからの一歩を後押ししてくれる大切な入口なのです。
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