1.なぜ今「会社説明会×シニア採用」が重要なのか
シニア人材の採用は、ここ数年で急速に企業側の“戦略的テーマ”へと変わりました。その背景には、日本全体で進む労働力人口の減少があります。総務省「労働力調査」(2024年)によると、15〜64歳の生産年齢人口は過去最少を更新し、一方で65歳以上の就業率は上昇を続けています。特に、製造・介護・サービス・物流など「現場での経験が活きる領域」では、シニア層の活躍が企業の持続性に直結するようになりました。
さらに、若手人材の採用が難しくなっている今、企業が求めるのは“即戦力性”です。シニアはこれまでの豊富な経験から、短期間で現場になじみ、安定したパフォーマンスを発揮しやすい特徴があります。とくに中小企業では「育成リソースが不足している」という状況が多いため、経験者を迎えるメリットは非常に大きいと言えます。
また、シニア採用が注目される理由として「業務分解(ワークブレイクダウン)」があります。これまで社員が抱えていた属人的な業務を整理し、短時間・限定業務として切り出すことで、シニア人材にもフィットしやすい仕事が生まれます。これは企業にとっては業務効率化であり、シニアにとっては働きやすい環境づくりにつながる“Win-Win”の構造です。
こうした背景から、会社説明会の重要性が高まっています。シニア層は求人票の文章だけでは不安を解消しづらいため、「仕事内容が自分にできるか」「職場の雰囲気はどうか」「人間関係は大丈夫か」といったポイントを“直接見て確かめたい”というニーズが強い傾向があります。説明会はその不安を解消し、応募につなげる最も強力な手段と言えるのです。
2.シニアが参加したくなる会社説明会の設計ポイント
シニア層にとって「会社説明会に参加するかどうか」は、求人内容の魅力だけでは決まりません。むしろ参加前のハードル(移動、時間帯、内容の分かりやすさ、安心感)をどう下げるかが集客の決め手になります。ここでは、シニアが参加しやすくなる“設計ポイント”を整理します。
来場ハードルを下げる「場所・時間・移動」設計
シニア層の多くは「自宅から近い」「迷わず行ける」「昼間の時間帯」のイベントを好む傾向があります。
厚生労働省「高年齢者の雇用状況」(2023)でも、シニアの就業継続における重要要素として、“通勤負担の少なさ” が上位に挙げられています。
設計のポイント例
・最寄り駅から徒歩10分以内
・バス停からのアクセスを案内に明記
・開催時間は「10時〜15時」の間で設定
・建物の入り口や階段の有無を必ず案内
・道順を写真つきで送付
「遠い」「分かりにくい」「階段が多い」など、小さな不安でも参加を断念することがあります。最初の集客段階から“移動の不安”を吸収することが重要です。
伝えるべき情報は“仕事内容の具体度”
シニア採用は、仕事内容が明確であるほど応募につながります。
彼らが不安に感じるのは、「本当に自分にできるのか?」という点だからです。
必要な情報の具体例
・一日のタイムスケジュール
・使う道具(写真付き)
・持ち上げる重量(例:最大10kg など)
・どこまでが担当で、何が対象外なのか
・難しい作業は若手が担当するなどの役割分担
抽象的な説明ほどシニアは不安になります。逆に「これなら自分でもできそうだ」と思える瞬間が応募率を引き上げます。
職場の雰囲気・仲間・人間関係の見える化
シニアが仕事選びで重視するのは、実は「人間関係の良さ」です。
総務省「令和5年就業構造基本調査」でも、60代以上の就業継続理由として“職場の人間関係がよいこと”が上位に挙がっています。
そのため説明会では、雰囲気が伝わるような工夫が必要です。
有効な方法
・現場スタッフの声(動画/スライド)
・実際の作業風景の写真
・年齢層の構成(例:60代が3割など)
・上司やチームメンバーの紹介
「どんな人と働くのか」を想像できるかどうかで参加者の安心度は大きく変わります。
待遇より先に「安心感」を提示する
シニアにとって待遇より重要なのは「長く続けられるかどうか」です。
そこで最初に伝えるべきは以下のような“安心材料”です。
・健康面に配慮した働き方(短時間シフト/軽作業中心)
・急な休みへの理解体制
・周囲のフォロー体制
・研修/慣れるまでのサポート内容
・業務分解により負担の少ない仕事を用意していること
特に「不安要素を先に言われると安心する」傾向があるため、「大変な点」「向かない人」も正直に伝えると信頼感が高まります。
シニアが安心して聞ける“説明会の理想的な流れ”(45〜60分モデル)
シニア向け説明会は、情報を詰め込みすぎず、理解しやすい順番・量・ペースを意識することが重要です。以下は、実際の企業でも成果が出やすい 45〜60分の進行モデルです。
▼説明会の進行モデル(45〜60分)
① オープニング(5分)
・担当者紹介
・本日の流れを説明
・「小さな不安も遠慮なく質問してください」と明言
→ ここで“安心して聞ける場”をつくる。
② 会社紹介(10分)
・会社概要
・事業内容
・働いている人の年齢層
・シニア活躍への取り組み
→ 長すぎる説明は逆効果。写真・図を活用。
③ 仕事内容の説明(10〜15分)
・1日の流れをスライドで
・実際の作業内容、作業時間、道具の写真
・どこまでが担当で、何が対象外か
→ シニア採用の“最重要パート”。
④ 職場の雰囲気紹介(5〜10分)
・チームの写真
・シニアスタッフの割合
・人間関係の雰囲気
→ 「誰と働くのか」を想像できる構成に。
⑤ ロールモデル紹介(5分)
・実際に働いている60〜70代の事例
・入社前の不安がどう解消されたか
→ 「自分でもできそう」が応募の決め手。
⑥ 質疑応答&個別相談案内(5〜10分)
・質問の場
・個別相談ブースの紹介
→ 個別相談は、シニアの本音が出る最重要ポイント。
⑦ 応募方法・見学案内(3〜5分)
・電話/紙/Webなど、複数の応募方法を提示
・「まずは見学でもOK」と伝える
→ 最後の一押し。
このような進行モデルにすることで、シニアの方でも内容を理解しやすく、説明会の途中で不安が増えてしまう状況を防げます。仕事内容の理解から職場のイメージづくり、そして応募方法の案内までが自然な流れでつながるため、参加者が「自分にもできそうだ」と前向きに感じやすくなります。また、こうした流れを踏むことでミスマッチが減り、結果的に応募率や定着率の向上にもつながります。
3.会社説明会での“シニア向けコミュニケーション術”
シニア向けの会社説明会では、「説明の分かりやすさ」と「心理的安心感をどう作るか」が採用率を左右します。若手向け説明会と同じトーンで進めてしまうと、「難しそう」「自分にできる気がしない」と途中で離脱されがちです。ここでは、シニア特性に合わせたコミュニケーションの工夫を具体的にまとめます。
専門用語を避ける“やさしい説明”
シニア採用でよくあるミスマッチの原因は、説明時の言葉が難しすぎることです。
特にITツール名称や略語は避け、専門用語の使用は最低限に抑えることが重要です。
改善ポイント
・「WFMツール」「勤怠システム」→「出勤・退勤を押すための機械」など具体化
・カタカナ語はできるだけ日本語に置き換える
・1文を短くする
・“言い換え”をセットで説明する(例:〇〇、いわゆる△△のことです)
また、説明に使うスライドも「文字が大きく」「結論から簡潔に」が基本。
視認性が上がるだけでストレスが減り、参加者の理解度は格段に上がります。
質問をしやすくする場づくり
シニア層の多くは「迷惑をかけてしまうのでは」と考え、質問を遠慮する傾向があります。
そのため、質問しやすい空気づくりが極めて重要です。
効果的な方法
・最初に「どんな小さな不安でも聞いてください」と明言
・個別相談ブースを設置
・質疑応答の時間を説明会の中盤に配置
・他の質問例を紹介してハードルを下げる
特に「個別相談」は高い効果があります。
他人の前で手を挙げる必要がないため、参加者の本音が出やすく、不安解消率も高まります。
説明会内で「不安の払拭」に触れる
シニアの求職理由の多くは、「働きたいけど不安」というもの。
内閣府「令和5年版 高齢社会白書」でも、60代以降が仕事選びで抱える課題として健康面の心配・仕事内容の負担感が上位にあります。
説明会では、以下のような“不安解消ポイント”を必ず盛り込みましょう。
・体力に配慮した仕事があること
・重たい作業を避けたい人向けの業務がある
・仕事に慣れるまでマンツーマンでフォロー
・勤務日数/時間に柔軟に対応できる
「負担の少ない働き方ができる」と伝えることで、応募意欲が高まります。
過去の成功事例や働く姿を具体的に示す(ロールモデルの提示)
参加者にとって最も安心材料になるのは、「自分と同年代の人が実際に活躍している姿」です。
そのため説明会では、シニアの“ロールモデル紹介”が極めて効果的です。
具体例
・実際に働いている60代/70代スタッフの紹介
・1日の仕事の流れを写真や動画で提示
・入社前の不安がどう解消されたかのストーリー
・業務分解によって無理のない仕事ができている事例
「この人でもできているなら自分もできるかも」と思えると、応募率が大きく上がります。
特にロールモデルが複数パターン(軽作業/接客/事務など)提示されていると、ミスマッチ防止にも効果があります。
4.説明会後のフォローが採用成功率を大きく左右する
シニア採用では、会社説明会そのものよりも“説明会後のフォロー”が採用率を左右します。
理由は、シニア層の多くが「迷惑をかけたくない」「慎重に決めたい」という気持ちが強く、即決で応募しないケースが多いためです。説明会の段階で好印象でも、フォローがなければそのまま検討が止まってしまいます。逆に、丁寧なフォローは「この会社は安心できる」という信頼につながり、応募率を高めることができます。
ここでは、シニア向けのフォロー設計で特に効果の高いポイントをまとめます。
参加者フォローは“当日〜24時間以内”が鉄則
説明会当日の熱量は、翌日には半分以下になります。
そのためフォローは「当日〜24時間以内」が最も効果的です。
具体的なフォロー方法
・当日中にお礼の電話(またはメッセージ)
・翌日までに「見学の案内」や「相談窓口」を送付
・参加後アンケートを通じた不安吸収
・手書きのメッセージカードも効果大(特に小規模施設)
※場合によっては説明会の後に休憩をはさんで、そのまま面接を実施
シニア層はメールよりも電話(ショートメッセージ可)が圧倒的に刺さります。
「連絡をもらえた」という行為自体が、信頼と応募意欲を高めるからです。
複数の応募導線を持つ(電話・紙・ネット)
シニアは情報取得ツールにばらつきがあります。
「スマホが得意な人」もいれば、「紙の書類が安心」という人も多いのが現実です。
そのため応募導線は必ず“複数”用意しましょう。
用意すべき導線
・電話応募(最も応募率が高い)
・紙の申込書(説明会会場で配布)
・Web応募フォームのQRコード
・相談窓口(対面)
・職場見学時にその場で申し込める仕組み
応募方法が一つだけだと、参加者の半分以上を取りこぼす可能性があります。
見学・体験の設定でミスマッチを防ぐ
シニア採用では、「職場見学」や「仕事体験」は非常に有効です。
厚生労働省の高年齢者雇用安定法の解説資料でも、シニアの就業定着には「事前の職場体験」が有効だとされています。
特に以下のような内容が効果的です。
・実際の仕事を“隣で見る”だけでも不安が減る
・動作量や作業スペースの広さが実感できる
・働くスタッフと直接会える
・1日のイメージがつき、働く姿を具体的に想像できる
ミスマッチの最大の原因は、「想像とのギャップ」です。
見学・体験を挟むことで定着率も向上します。
採用後の定着支援を説明会段階で伝える
シニアが特に知りたいのは、「入社後のサポート体制」です。
説明会の時点で、それを明確に伝えることが応募意欲に直結します。
伝えるべきポイント
・研修のステップ
・慣れるまでのマンツーマンサポート
・健康配慮の働き方(無理のない業務割り振り)
・定期面談やフォローアップ制度
・困ったときに相談できる担当者の存在
これを説明会の段階で明示することで、「安心して一歩踏み出せる」状態をつくれます。
5.会社説明会×シニア採用を成功に導く全体戦略
会社説明会を単発のイベントとして捉えるのではなく、シニア採用の全体戦略の中に位置づけることが成功のカギとなります。シニア層を集め、安心して参加してもらい、応募・定着につなげるには「業務設計」「ターゲット設定」「集客」「地域連携」「コミュニケーション」のすべてが有機的に連動する必要があります。
以下では、企業が押さえるべき5つの実践的なポイントを解説します。
業務分解を前提とした求人設計
シニア採用は「業務分解」との相性が非常に良い領域です。
企業側がこれを前提に業務を再整理するだけで、シニアが活躍できる仕事は一気に増えます。
ポイント例
・重たい作業 → 若手担当
・定型的/反復的作業 → シニア担当
・短時間で完結するタスクを切り出す
・1日2〜4時間のシフト枠を追加
・負荷の高い業務を避けた「限定業務パッケージ」を用意
業務分解を行うことで、「無理なく続けられる仕事」が生まれ、説明会での訴求力も大幅に高まります。
さらに、業務分解は組織全体の効率化にもつながり、中小企業ほど効果が大きくなります。
採用ターゲットの明確化(ペルソナ設計)
説明会の内容は、ターゲットを明確にするほど集客率・応募率が上がります。
例えば——
・60代前半の「再雇用希望層」
・60〜70代の「軽作業希望層」
・事務系経験者の「デスクワーク希望層」
・介護/清掃/接客経験者の「経験活用層」
ペルソナを設定すると、
「どの仕事内容を推すべきか」「どんな不安を解消すべきか」「どの媒体で集客すべきか」が鮮明になります。
地域の支援機関(ハローワーク/シルバー人材センター等)との連携
シニアを集客するうえで、地域機関との連携は非常に大きな効果があります。
特に活用すべき機関
・ハローワーク(職業相談窓口での説明会案内)
・シルバー人材センター(軽作業系の参加者紹介)
・地域包括支援センター
・自治体の就労支援窓口
・商店街/地域サロンなどの掲示板
例えばハローワークでは、職員が利用者に案内してくれるため、参加意欲が高い人にリーチできます。
地域とつながることで“地元のシニアコミュニティ”にもリーチできるのが強みです。
シニアが集まる広報チャネルと“刺さる”告知方法
シニア向け集客は、若者向け求人広告とはまったく異なります。
Web広告だけでは届かない層も多く、“リアル×アナログ”のハイブリッドが最も効果的です。
代表的な集客チャネル
・ハローワークのイベント掲示
・シニア向け求人サイトのDM配信
・地域の広報誌
・商店街の掲示板
・介護施設/病院/公共施設へのチラシ設置
・回覧板/町内会の掲示
告知のコツ
・文字は大きく、必要情報を3つに絞る(日時/場所/仕事内容)
・「60代/70代歓迎」「短時間OK」「未経験歓迎」を明記
・写真を1枚入れるだけで集客率が上がる
・「まずは見学だけでもOK」と書くと参加のハードルが下がる
シニア向け集客は、「安心」「簡単」「具体的」の3つが軸になります。
現場職員との「座談会」を取り入れて参加意欲を高める
会社説明会の満足度を上げ、応募率を高める方法として最も効果があるのが「座談会」です。
座談会が有効な理由
・実際に働いているスタッフと直接話せる
・具体的な業務内容がイメージできる
・人間関係の雰囲気が分かる
・不安をその場で解消できる
・シニア同士の会話が生まれ、安心感が高まる
特に60〜70代の参加者は、「実際に働いている人の声」を重視します。
座談会を導入するだけで「応募してみようかな」と思う割合が大幅に増えます。
座談会は大規模である必要はありません。
3〜5名の少人数テーブル形式でも十分効果があります。
6.まとめ|会社説明会は“シニア採用成功の起点”になる
シニア採用において、会社説明会は単なる情報提供の場ではなく、応募意欲と定着率を左右する“採用戦略の起点”です。シニア層は求人票の文字情報だけでは不安が残りやすく、「自分にもできる仕事なのか」「人間関係は大丈夫か」「長く続けられそうか」といった感情面の判断材料を、実際に説明会で得ようとします。
そのため、企業が取り組むべきは「シニアの不安をどれだけ取り除けるか」という視点で説明会を設計することです。アクセスしやすい場所・時間の設定、仕事内容の“圧倒的な具体化”、フォロー体制の説明、ロールモデルの提示、座談会の導入といった工夫はすべて、シニアの心理的ハードルを下げるための施策です。
特に、説明会後のフォローと応募導線の複数化は、応募率を大きく引き上げる重要ポイントです。シニアは慎重に判断する傾向が強く、後押しがあるかどうかで意思決定が変わります。さらに、説明会を企画する段階で「業務分解」「ペルソナ設定」「地域連携」「集客チャネルの最適化」などの全体戦略が整理されていれば、企業側も自然と“採用のミスマッチが起きにくい構造”を作ることができます。
労働力不足が進む中、経験豊富なシニア人材は企業にとって貴重な戦力です。
会社説明会を磨き上げることは、その戦力を安定的に確保し、組織の生産性向上と職場の多様性を高めるための最も効果的な一歩と言えるでしょう。
シニア人材の採用をもっとスムーズに。経験豊富な60代・70代が集まるシニア向け求人サイト「キャリア65」を活用すれば、ミスマッチを防ぎ即戦力採用が実現できます。


