1. 「高齢者はITが苦手」はなぜ広まった?その背景を解説
「高齢者はITが苦手」というイメージは、どこから広まったのでしょうか。これは大きく3つの背景があります。
1つ目はパソコン・スマートフォンの普及時期のズレです。現在のシニア世代が社会人になった頃、IT機器はまだ一部の企業や業務でしか使われていませんでした。そのため「シニアはITに不慣れ」という印象が根強く残っています。
2つ目は「若者=デジタルネイティブ」という対比構造です。若年層はSNSやスマホを日常的に使いこなしているため、比較対象として「シニアはITに疎い」と捉えられがちです。
3つ目はメディアによる印象操作です。詐欺被害やデジタル格差を報じる際に「高齢者が被害に遭う」構図が多く取り上げられたことで、苦手意識が強調されてしまいました。
しかし、これらはあくまで過去の話。時代は変わりつつあります。
2. 実は使いこなしている!シニア世代のデジタル事情
実際には、多くのシニア世代がスマートフォンやパソコンを日常的に活用しています。LINEで家族と連絡を取り、YouTubeで趣味の動画を楽しむ人も珍しくありません。自治体のデジタル申請や、キャッシュレス決済を使いこなす高齢者も増えています。
特に、60代・70代のアクティブシニア層は、趣味や健康管理のために積極的にデジタル機器を取り入れています。「やればできる」「便利だから続けたい」という前向きな姿勢が強く、若者顔負けのスキルを持つ人もいます。
このような実態があるにも関わらず、「高齢者=ITが苦手」というレッテルが貼られ続けているのは、企業側のアップデートが追いついていないだけかもしれません。
3. データで見る高齢者のITリテラシー
実際のデータを見てみましょう。総務省が公表した「令和5年 通信利用動向調査」によると、60代のスマートフォン利用率は85.5%、70代でも67.5%に達しています。
また、LINEの利用率は60代で81.9%、70代で64.1%と非常に高く、生活インフラとして定着していることがわかります。
一方、オンラインでの行政手続きやネットショッピングなど、実務に直結する分野でも利用率は年々上昇しています。このデータは「高齢者はITが苦手」という固定観念がもはや通用しないことを裏付けています。
出典
総務省「令和5年 通信利用動向調査の結果」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/240607_1.pdf
4. たとえITが苦手でも活躍できる仕事はたくさんある
たとえ最新のITツールを使いこなせなくても、シニア世代が活躍できる仕事は多く存在します。例えば、施設管理や警備、清掃、接客業務などは、ITスキルよりも「経験」「丁寧さ」「コミュニケーション力」が重視されます。
また、若手社員へのOJTや現場指導といった、経験に基づく育成業務もシニア世代が得意とする分野です。最近では、タブレット端末を使った簡単な作業指示や、スマホでの勤怠入力など、難易度が低く配慮されたITツールも普及しており、シニア人材も十分に対応可能です。
大切なのは「ITスキルがあるか」ではなく「仕事に必要な範囲で学ぶ意欲があるか」です。企業側が適切なサポート体制を用意すれば、活躍の場はさらに広がります。
5. 企業が取るべき「シニア人材の活用法」とは
企業がシニア人材を活用するためには、「偏見を捨てた適材適所の配置」と「学び直しを支援する環境づくり」が不可欠です。
まず重要なのは、業務内容を明確に分けて整理すること。すべての業務が高いITスキルを要求するわけではありません。たとえば、施設管理や警備、清掃、接客などは、経験や丁寧さが求められる分野であり、ITスキルは最低限でも十分対応できます。
一方で、事務作業や簡単なシステム入力など、どうしてもIT機器を使う業務もあります。ここで有効なのがシニア向けのIT研修です。
企業が用意するべきは、次のような「現場で使えることに特化した研修」です。
・勤怠システムの基本操作
・社内チャットやメールの使い方
・タブレット端末での作業報告手順
・セキュリティ対策の基礎知識
こうした実務直結型の研修であれば、シニア世代も抵抗なく習得できます。むしろ、時間をかけて丁寧に学ぶ姿勢は若手以上とも言われています。
さらに、マニュアル整備や動画教材を用意し、自分のペースで復習できる環境を整えることも効果的です。企業によっては、若手社員とのペアワーク形式で「教え合いながら覚える」仕組みを取り入れているケースもあります。
【事例】
某物流企業では、60代再雇用者向けに「タブレット基本操作研修」を実施。わかりやすい手順書と現場実習を組み合わせることで、導入後3ヶ月で全員が自信を持って業務に対応できるようになりました。結果として、若手社員のサポートも減り、職場全体の生産性が向上しています。
企業にとっては「手間」と思える研修も、最初にしっかり投資することで、シニア人材を安定戦力化できるのです。
このように、「できない」ことに目を向けるのではなく、「できるようにする」支援を行うことで、シニア人材は大きな戦力となります。
6. まとめ:「IT苦手」は思い込み。採用戦略を見直す時
「高齢者はITが苦手」というイメージは、もはや時代遅れの偏見です。実際には、多くのシニア世代がスマートフォンを日常的に使いこなし、必要な範囲でITスキルを身につけています。スマホ決済やSNSを活用する姿は珍しくなく、むしろ「わからないことは自ら学ぶ」という柔軟な姿勢を持つ人が増えています。
一方で、企業側がこの事実を十分に認識できていないことが、採用のハードルを高くしているのも事実です。高齢者に対する先入観が、優秀な人材の活用機会を逃してしまうケースも少なくありません。
企業に求められるのは、「できる・できない」で選別するのではなく、「どうすれば活躍してもらえるか」を考える姿勢です。業務の分解・再設計や、必要なスキルの明確化、学び直しの支援を通じて、シニア人材のポテンシャルは大きく開花します。
また、シニア世代の雇用は、単なる人手不足対策にとどまらず、組織の安定性や若手社員の育成、多様性の確保といった面でも大きなメリットをもたらします。経験に裏打ちされた「現場力」は、企業にとって欠かせない財産となるでしょう。
今こそ、「高齢者はITが苦手」という固定観念を捨て、シニア世代の活躍を前提とした採用戦略を見直す時です。先入観にとらわれず、柔軟な視点で人材活用を考えることで、貴社の組織は大きく進化するはずです。
経験豊富なシニア人材を探すなら、無料で求人掲載できるシニア特化の求人サイト「キャリア65」が最適!今すぐ求人情報をチェック。