1. なぜ今、シニア世代に「仕事選びの見直し」が求められているのか?
かつては「定年=引退」が当たり前でしたが、近年では「定年後も働き続ける」という選択をする人が急増しています。厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告」(2024年版)によると、70歳以上の就業者数は過去最多を更新し、その多くが「経済的理由」「健康維持」「生きがいの確保」など、さまざまな理由で働き続けています。
しかし、再就職市場では、60代・70代にとって「どの仕事を選ぶか」が、働き続けるモチベーションや生活の質に直結します。若いころのように「どこでもいいから働ければいい」では後悔するリスクが高く、「自分に合った仕事」を選ぶ視点がますます重要になってきているのです。
とくに近年の傾向として注目したいのが、「シニア向け求人の多様化」です。単なる清掃や警備、軽作業といった仕事だけでなく、家事代行やベビーシッター、公共施設の案内業務、オンライン講師など、“社会とつながる”仕事も増えつつあります。
その反面、「体力に合わなかった」「職場の人間関係が合わなかった」といった理由で早期退職してしまうケースも少なくありません。だからこそ、働く前に自分にとって大切な条件や価値観をしっかり見つめ直す「仕事選びの見直し」が必要なのです。
本記事では、シニア世代が仕事選びで後悔しないために確認しておきたい5つのチェックポイントをわかりやすく紹介します。
2. チェック1:無理なく働ける勤務条件かを確認する
再び働くとき、まず確認しておきたいのが「身体に無理がないかどうか」です。若い頃と同じ感覚で仕事を選ぶと、思った以上に体力的な負担が大きく、継続が難しくなってしまうことも。とくに70代の仕事選びでは、以下のような勤務条件を丁寧に見極めることが重要です。
▷ 勤務時間・曜日
週5日のフルタイム勤務が難しい場合は、週2~3日や短時間勤務の仕事を選びましょう。「午前中のみ」「午後から数時間」など、時間帯が選べる仕事も増えてきています。無理なく生活リズムに組み込めるスケジュールかどうかを確認しましょう。
▷ 通勤距離と手段
自宅から遠い職場や、乗り換えが多い勤務先は、体力的・精神的な負担になりやすいもの。徒歩圏内やバス1本で通える職場、あるいは在宅勤務の可能性がある仕事も検討すると選択肢が広がります。
▷ 業務内容の負荷
立ち仕事や重い荷物を扱う作業は、シニアには体力的にハードな場合があります。「ずっと座りっぱなしもつらい」「歩き回る仕事が健康に良い」など、自分の体調や好みに合った働き方を意識しましょう。
▷ 急な対応が求められないか
突発的な残業や、シフト変更に対応しづらいシニアも多いです。事前に「柔軟な働き方ができるか」「決まったペースで働けるか」を求人情報や面接時に確認しておくことが大切です。
✔ ポイントまとめ(表形式)
チェック項目 | 確認ポイント |
---|---|
勤務時間 | 自分の生活リズムに合っているか |
通勤手段 | 無理なく通える距離・ルートか |
作業内容 | 体力・健康状態に見合っているか |
働き方の柔軟性 | シフトの変更や残業の有無を事前に確認する |
「働くことで健康を保ちたい」という想いがあっても、働き方を間違えると逆に体を壊してしまう可能性も。長く、そして気持ちよく働くためには、自分に合った“無理のない条件”を見極めることが、何よりも大切です。
3. チェック2:経験やスキルが活かせる職場かどうか
70代になってからの仕事選びにおいて、「これまでの経験やスキルを活かせるかどうか」は非常に大切な視点です。ただ「できそうな仕事」を選ぶのではなく、「自分だからこそ貢献できる仕事」に出会えるかどうかが、働くやりがいや充実感につながります。
▷ 自分の得意分野を振り返ろう
長年の職歴を振り返ると、必ず“人より少し得意だったこと”が見えてくるはずです。たとえば…
・工場勤務の経験 → 設備管理、軽作業、資材管理
・接客の経験 → 店舗サポート、案内係、観光ガイド
・パソコン操作に慣れている → データ入力、シニア向けITサポート
自分では「大したことがない」と思っていても、未経験者の多い現場では大きな戦力になることがあります。
▷ 高齢者を歓迎する職場ほど「経験」を評価してくれる
シニア歓迎の求人では、「即戦力」よりも「誠実さ」「安定感」「経験に基づく判断力」が評価される傾向があります。例えば、以下のような職種は経験重視の傾向が強いです。
・マンションや施設の管理人
・交通誘導警備員
・学校や地域施設での用務、補助職員
・シニア向けの就労支援、アドバイザー
「過去の仕事が今の自分にどう活かせるか?」を考えることで、自信を持って職場に臨むことができます。
▷ 未経験でも“近い経験”は評価される
まったく同じ業種でなくても、似たような経験は大いに活かせます。たとえば「家庭菜園を長年続けていた」方が、農業体験支援のパートに採用される例もあります。企業側も“仕事に近い生活スキル”を重視している場合があります。
✔ 経験を活かすポイントまとめ(表)
経歴・スキル例 | 活かせる仕事の一例 |
---|---|
工場勤務・技術職 | 設備管理、倉庫内作業、工具管理など |
接客・販売経験 | 店舗サポート、観光案内、施設受付 |
地域活動・自治会経験 | 地域支援スタッフ、見守りパトロール |
趣味(園芸・DIYなど) | 農業体験サポート、園芸スタッフ、簡単な修繕作業 |
自分の過去は「資産」です。それを見つめ直し、活かせる仕事に出会えたとき、年齢に関係なく再び輝ける瞬間が訪れます。
4. チェック3:健康維持や社会参加につながるか
「働くこと=収入を得る手段」と考えがちですが、シニア世代にとって仕事はそれ以上の意味を持ちます。適度に体を動かし、人と関わる時間があることは、健康維持にも大きな効果があるとされています。
▷ 仕事が健康を支える「生活のリズム」になる
70代に入ると、退職をきっかけに生活リズムが乱れたり、外出の機会が減ってしまったりする人も少なくありません。しかし、仕事に出ることで「朝起きる目的」「日中の活動」「人との会話」が自然に生活に組み込まれ、結果として健康につながります。
たとえば、週に2〜3日の勤務でも、定期的な外出と軽い運動が習慣化することで、認知機能や身体機能の低下を防ぐ効果があると報告されています(出典:厚生労働省「健康日本21」中間評価報告書より)。
▷ 社会とのつながりが、心の健康も支える
退職後に孤立を感じる高齢者が増えている中で、「仕事を通じた人とのつながり」は精神的な安心感や自己肯定感にもつながります。たとえば以下のような仕事は、自然なコミュニケーションが生まれやすいものです。
・公共施設での案内、受付
・学校や地域の見守りスタッフ
・清掃や設備管理などのチーム制の仕事
・スーパーや飲食店のバックヤード作業
ちょっとした「おはようございます」「お疲れさまです」といった日常的な会話が、生活に彩りをもたらしてくれるのです。
▷ 体に合った仕事を選ぶことが大前提
一方で、無理な肉体労働や長時間労働は逆効果になることもあります。「健康のために働くはずが、疲労がたまってしまった」という声も。自分の体調に合ったペースや内容で働ける職場を選ぶことが前提です。
✔ 健康と社会参加につながる仕事の特徴
項目 | 特徴例 |
---|---|
身体的健康を保つ | 立ち仕事・適度な移動あり(例:施設内清掃、見回り) |
心の健康を保つ | 会話や交流が生まれる(例:案内係、地域のボランティア) |
無理がない働き方 | 週2〜3日、短時間勤務、シフト調整がしやすい職場 |
「働くこと」が、健康と社会参加の“きっかけ”になる。この視点を持つだけで、仕事選びの幅も、暮らしの充実度も大きく広がります。
5. チェック4:職場の雰囲気や人間関係に安心感があるか
仕事を長く続けるうえで意外と見落とされがちなのが、「職場の雰囲気」や「人間関係」の相性です。どんなに条件が良くても、職場の空気が合わない、ストレスが多いと感じる環境では、継続して働くことが難しくなります。
▷ シニア世代は「人間関係の安定性」を重視する傾向に
年齢を重ねると、「バリバリ働く」よりも「心地よく働ける」職場環境を求める傾向が強まります。実際、公益財団法人 連合総合生活開発研究所の調査(2023年)でも、60歳以上の再就職者の約6割が「職場の人間関係が良いこと」を重視して仕事を選んでいることがわかっています。
▷ 面接や職場見学で“空気感”を見極めよう
求人票や労働条件だけでは分からないのが、現場の雰囲気です。面接時や職場見学の際に、次のようなポイントをチェックすると安心です。
・スタッフの年齢層にばらつきがあるか(同年代がいると安心)
・挨拶や声かけが自然に行われているか
・無理な命令や高圧的な態度が見受けられないか
また、「シニア世代を受け入れた実績があるか」も安心材料のひとつです。シニアの採用実績がある企業は、仕事内容やコミュニケーションの面でも配慮がされていることが多いです。
▷ 自分の価値観に合った職場を選ぶことがカギ
「にぎやかな職場が好き」「静かに作業に集中したい」など、何を快適と感じるかは人によって異なります。大切なのは、自分の性格や働き方に合った環境を選ぶこと。
人付き合いが得意な方は、接客業や案内係など人と関わる職場を。逆に一人作業が好きな方は、清掃や設備点検など黙々と進められる仕事を選ぶと、ストレスなく働き続けられます。
✔ 職場の雰囲気チェックリスト
確認項目 | YES/NOチェック |
---|---|
同年代のスタッフがいるか | □ YES / □ NO |
挨拶や会話が自然に交わされているか | □ YES / □ NO |
高圧的な雰囲気はないか | □ YES / □ NO |
シニアの採用実績があるか | □ YES / □ NO |
自分の性格に合った環境か | □ YES / □ NO |
人間関係のストレスが少ない職場は、仕事そのものへの満足度を大きく左右します。条件や給与だけでなく、「一緒に働く人」を重視した選択が、長く楽しく働くための秘訣です。
6. チェック5:将来の自分にプラスになる要素があるか
仕事を「ただの収入源」と捉えるだけではもったいない――これは70代の再就職を経験した多くのシニアの声です。今の生活だけでなく、将来の自分にとって「続けてよかった」と思える仕事選びが、定年後の人生に深みを与えてくれます。
▷ “やりがい”は年齢に関係なく持てる
「誰かの役に立っている」「自分の経験が活かされている」と実感できる仕事は、精神的な充実をもたらします。たとえば…
・家事代行で「助かります」と感謝される
・子育て支援で若い親から頼られる
・地域の見守り活動で「安心できる」と言われる
こうした“やりがい”のある職場は、モチベーションの源泉になり、働き続ける意欲を高めてくれます。
▷ 新しいスキルを身につけることで広がる未来
「今からじゃ遅い」と思われがちですが、70代からでも新しいスキルを習得する方は珍しくありません。たとえば…
・スマホやタブレットの使い方を学んで、ITサポート業務へ
・観光英語を覚えて、地域ツアーガイドに挑戦
・家事代行の中で整理収納アドバイザー資格を取得
こうした“学びながら働く”スタイルは、働く喜びと自信を同時に得られる点が魅力です。
▷ 「これまで」ではなく「これから」に目を向ける
働くことで得られるのは、収入だけではありません。生活のリズム、自己成長、人とのつながり…。年齢にとらわれず「今の自分にできること」「これから自分がどうありたいか」を意識することで、働くことが人生の新しいステージにつながります。
✔ 将来にプラスをもたらす仕事の特徴
特徴 | 例 |
---|---|
感謝される実感がある | 家事代行、ベビーシッター、地域支援スタッフなど |
学びがある、スキルが広がる | 観光ガイド、PC操作支援、資格取得支援付きの職場など |
自己肯定感・やりがいを得られる | 自分の経験を活かせる相談員、講師、施設サポート職など |
“老後”を“成長の時間”に変える。それは、今の仕事選び次第です。未来の自分が「この仕事を選んでよかった」と思えるような一歩を、今踏み出してみましょう。
7. まとめ|チェックを通じて“自分らしい働き方”を選ぼう
シニア世代にとっての仕事選びは、「生活のため」だけでなく、「自分らしく生きるための手段」でもあります。定年後という人生の新しい章を、無理なく、楽しく、誇りを持って過ごすためには、以下の5つのチェックポイントを意識しておくことが大切です。
✔ 再確認!後悔しない仕事選び5つのチェックポイント
1.無理なく働ける勤務条件か?
→ 体力・時間・通勤距離に合った働き方を選ぶ
2.経験やスキルを活かせるか?
→ 自分の過去を“資産”として評価してくれる職場かを見極める
3.健康維持や社会参加につながるか?
→ 体を動かし、人と関わる環境は心身の健康に効果的
4.職場の雰囲気や人間関係に安心感があるか?
→ ストレスなく働ける環境を選ぶことが長続きの鍵
5.将来の自分にプラスになる要素があるか?
→ やりがいや学びを得られる仕事は、生きがいに直結する
「70代だから…」とあきらめる必要はありません。むしろ今だからこそ、自分にとって価値のある仕事を見つけ、もう一度社会とつながるチャンスがあります。
人生100年時代。働くことが“負担”ではなく“楽しみ”になるよう、今回の5つのチェックポイントを参考に、「自分にとって本当に合った仕事」を見つけてみてください。
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