シニア世代にも迫る住宅ローン破綻|老後破産を防ぐために今できること

お金

【1. なぜ今、シニア世代の住宅ローン破綻が増えているのか】

近年、シニア世代の住宅ローン破綻が社会問題として注目を集めています。かつては定年退職と同時に住宅ローンを完済するのが一般的でしたが、現在では60歳を過ぎてもローンの返済が続いている高齢者が珍しくありません。

背景にあるのは、住宅ローンの長期化退職後の収入減少です。国土交通省の調査によると、住宅ローンの平均返済期間は2022年時点で約33年に達し、返済完了年齢が65歳を超えるケースも多くなっています。また、バブル期に住宅を購入した世代がローン残債を抱えたまま年金生活に突入するという構図も見逃せません。

さらに、2020年代に入り、高齢者の雇用や健康の不安定化も拍車をかけています。高齢者の就業率は上昇傾向にありますが、必ずしも安定した収入につながるわけではなく、収入が年金と短時間パートに限られるケースが多いのです。

また、高齢になってから住宅を購入した「リバースモーゲージ世代」の増加も、破綻リスクを高める一因です。リバースモーゲージは老後資金を確保する手段として注目されていますが、金利変動や不動産価値の下落により返済不能に陥るリスクも孕んでいます。

つまり、ローン返済と老後の生活設計がアンバランスな状態で高齢期を迎える人が増えており、それが「住宅ローン破綻予備軍」を拡大させているのです。


【2. 住宅ローンが払えなくなった高齢者の現実とは】

住宅ローンの返済が困難になったシニア世代には、経済的困窮だけでなく、精神的負担や社会的孤立といった深刻な現実が待ち受けています。

まず、最も多いのが年金だけでは返済が追いつかないケースです。総務省「家計調査(2022年)」によれば、高齢単身世帯の平均年金収入は月約13万円。一方、住宅ローンの返済額が月5万円を超える世帯もあり、生活費との両立が難しくなるのが実情です。

その結果、貯金の取り崩しやカードローンへの依存により債務が二重・三重に膨らむという悪循環に陥ることも少なくありません。とくに単身世帯では、家族の支援が得られないまま孤立し、精神的なストレスからうつ症状を抱える人もいます。

実際に起こるケースとしては以下のような例が挙げられます。

・70代女性がパート収入と年金で何とかやり繰りしていたが、病気により収入が激減。住宅ローンの返済が滞り、競売通知が届く事態に。

・配偶者の死去により収入が減少し、支払いが困難に。相談できる人もおらず、結果的に住宅を手放すことに。

また、住宅を手放しても借金が残るケースもあります。不動産の評価額がローン残高を下回る「オーバーローン状態」の場合、売却しても債務が消えないため、生活再建の足かせとなることがあります。

このような現実は、決して「特別な人」に起きているのではありません。誰にでも起こりうる問題として、多くのシニアが予防と対策を求められているのです。


【3. ローン破綻を防ぐためにできること】

住宅ローン破綻は、事前の対策と情報収集によって十分に回避可能です。重要なのは、返済が苦しくなる前に「備える」こと。ここでは、具体的な予防策を紹介します。

1. 返済計画の見直しと金融機関への相談

まず行うべきは、ローン返済計画の見直しです。特に収入が減少したり、医療費が増えたりした場合は、早期に金融機関へ相談を。銀行や信用金庫などでは「返済猶予」「返済期間の延長」「ボーナス返済の取りやめ」などのリスケジュール(返済条件の変更)に応じてくれることがあります。

ポイントは、滞納する前に動くこと。1回でも延滞すると「金融事故」として信用情報に傷がつき、他の選択肢が狭まってしまいます。


2. 支出の見直しと固定費の削減

次に検討したいのが、生活コストの見直しです。例えば、以下のような項目は見直しによる効果が大きいです。

・不要なサブスクリプションの解約
・高額な保険の見直し
・電気、ガスなどのプラン変更
・車を手放して公共交通機関に切り替える

固定費を1万円でも減らせれば、年12万円の支出削減になります。小さな節約の積み重ねが、大きな効果を生み出します。


3. 「リバースモーゲージ」や借り換えの検討

一定の条件を満たす持ち家所有者であれば、「リバースモーゲージ」や「住宅ローンの借り換え」も有効です。リバースモーゲージとは、自宅を担保に生活資金を借りる仕組みで、返済は死亡時に一括で行われます。ただし、リスクもあるため、家族と相談のうえ慎重に進める必要があります。

また、住宅金融支援機構の「高齢者向け返済特例」などを活用すれば、月々の支払いを利息分だけに抑えられる可能性もあります(※詳細は住宅金融支援機構公式サイトをご確認ください)。


【4. 仕事で生活を立て直すシニアが増えている理由】

住宅ローンの返済が重荷になったとき、多くのシニアが選んでいるのが「働く」という選択肢です。実際、近年では70代になっても仕事を続ける高齢者が増加しており、その背景には経済的な理由だけでなく、心身の健康や社会参加といった価値が見直されている点があります。

シニア就労者は年々増加中

総務省の「労働力調査(2023年)」によると、65歳以上の就業者数は930万人超と過去最多を更新。なかでも70歳以上の働く人の割合も増え続けており、パート・アルバイト・業務委託など柔軟な形で仕事を選ぶ人が目立ちます。

これには、以下のような理由があります。

年金だけでは生活が成り立たない
住宅ローンなど固定支出が退職後も残る
病気や介護への備えとして貯蓄を増やしたい
働くことで社会とのつながりを保ちたい

ローン返済が必要な場合、働いて一定の収入を得ることで、延滞や破綻を防ぐ“安全網”を確保できます。


無理のない範囲で働ける環境が整ってきている

かつては「定年後=引退」という常識がありましたが、今は違います。高齢者雇用安定法の改正などにより、企業側もシニアの受け入れに積極的です。

特に注目されているのは、以下のようなシニア向けの働き方です。

・週2〜3回のパート勤務
・地域密着の軽作業(清掃、管理、配達など)
・経験や資格を活かした業務(事務、講師、指導員)
・在宅ワーク(文字起こし、ライティングなど)

つまり、「身体に無理なく」「社会とかかわりながら」「必要な収入だけを得る」働き方が可能になってきているのです。


【5. 収入・体力・やりがいのバランスをどう取るか】

シニア世代が住宅ローン返済のために働く場合、大切なのは収入だけを追わないことです。70代という年齢を考えると、「体力」「生活リズム」「精神的な満足感」なども加味した働き方が必要です。ここでは、バランスのとれた働き方を選ぶための視点をご紹介します。

ポイント1|収入目標を具体的に設定する

まず、自分が毎月どのくらいの金額を最低限稼ぐ必要があるかを明確にしましょう。

・住宅ローン返済額:月3万円
・その他生活費補填:月2万円

といったように、「月5万円」などの目安を立てておけば、それに見合った労働時間や職種を選ぶことができます。


ポイント2|体力に合った働き方を選ぶ

フルタイム勤務や立ち仕事は、年齢とともに無理が生じることもあります。以下のような選択肢が、体力に不安があるシニアに適しています

・座り仕事(受付、コールセンター、事務)
・短時間勤務(1日3~4時間)
・週2~3日ペースのシフト勤務

また、「午前中だけ働いて午後は休む」など、自分のペースで働ける仕事を探すことが継続のカギとなります。


ポイント3|やりがいも大切にする

「生活のため」と割り切って働くことも一つの選択ですが、仕事にやりがいを感じられると、長く続けられます。たとえば…

・人と接する仕事で「ありがとう」と言われる喜び
・自分の経験を活かせるアドバイザーや講師業
・地域貢献や支援につながる公共性の高い仕事

こうした要素があると、ただの収入源ではなく、自分の存在価値を再確認する機会にもなります。


【6. 住宅ローン救済や就労支援の公的制度を知ろう】

住宅ローンの返済に悩むシニア世代にとって、公的な支援制度の活用は非常に心強い味方になります。経済的な不安を1人で抱え込まず、制度を上手に利用することで、生活再建の道が開けます。

1. 住宅ローンの返済支援制度

● 住宅金融支援機構の「返済特例」
収入が減少した場合などに、返済期間の延長や元金据置(一定期間、利息のみ支払い)を申請できる制度です。高齢者も対象となっており、無理なく返済を続ける道が残されています。
詳細:https://www.jhf.go.jp/loan/yushi/info/machizukuri_revermo.html

● 地方自治体の「生活福祉資金貸付制度」
市区町村の社会福祉協議会では、住居確保のための緊急貸付や、一時的な生活費支援などを実施していることがあります。利用には条件がありますが、無利子・低利での借り入れが可能なケースもあります。


2. シニア向け就労支援制度

● ハローワークの「生涯現役支援窓口」
各地のハローワークには、60歳以上の高齢者を対象とした「生涯現役支援窓口」が設置されています。ここでは、年齢に配慮した求人の紹介や、職業相談、応募書類の添削など、就職を後押しするサポートが受けられます。

● シルバー人材センターの活用
地域ごとに設置されているシルバー人材センターでは、短時間・軽作業の仕事を紹介してくれます。登録制で、自由に働く日数や内容を選べるため、体力やライフスタイルに合わせやすいのが特長です。

● 高年齢者雇用開発特別奨励金(企業向け)
企業が60歳以上のシニアを雇用する際に、厚生労働省から支給される奨励金です。企業側にとっては「高齢者を雇うメリット」となるため、これにより年齢を問わず採用されやすくなる環境が整っています。


【7. 自分らしい生活を守るために今すぐできる一歩】

住宅ローンの返済が難しくなってきたとき、つい「もうどうにもならない」と思いがちです。しかし、視点を変えれば、生活を立て直すための選択肢は確実に存在します。大切なのは、“今できる一歩”を踏み出すことです。

今すぐできる具体的な行動とは?

1.家計の現状を見直す
 まずは現在の支出と収入のバランスを整理し、赤字の原因を可視化しましょう。月々いくら住宅ローンの返済に充てられるかを明確にすることで、次のアクションがとりやすくなります。

2.ローンの見直し・相談を始める
 金融機関への相談は、滞納してからでは遅い場合も。少しでも不安があるなら、早めに「返済条件の変更」などについて話をしておきましょう。

3.自分に合った仕事を探してみる
 無理のないペースで続けられるパートや在宅の仕事は、年金+αの収入源として現実的です。「週2日・3時間だけ」といった働き方も可能で、体にも負担が少なく済みます。

4.地域や行政の支援制度を調べる
 シルバー人材センターやハローワーク、福祉窓口など、公的機関の情報に目を向けてみましょう。ローン支援だけでなく、生活全体をサポートする制度がある場合もあります。


「破綻しないために働く」から「人生を取り戻すために働く」へ

働くことは、単にローン返済の手段ではありません。人とのつながりを持ち、社会の一員として活躍することは、心の健康や生きがいの回復にもつながります。経済的に困難な状況でも、「誰かの役に立てる自分がいる」と実感できることは、人生に大きな支えをもたらします。

シニア世代の仕事選びは、収入・健康・人とのつながりをバランスよく保つことがカギです。住宅ローンに不安を感じたときこそ、自分の未来を守るための一歩を踏み出してみてください。

シニア世代の仕事探しをサポート!あなたに合った働き方が見つかるシニア向け求人サイト「キャリア65」を今すぐチェック。

タイトルとURLをコピーしました