1. 駐車監視員とは?――仕事内容と「資格」の基本
駐車監視員は、警察が登録・公示した「放置車両確認機関」(主に警備・関連事業者)に所属し、地域を巡回して違法に放置された車両を確認し、「放置車両確認標章」を取り付ける役割を担います。2006年の道路交通法改正で、放置駐車違反対策を強化するために導入された制度で、民間委託の仕組みにより大都市圏を中心に違法駐車の抑止に一定の効果が確認されています。
メインの業務は、所定エリアの徒歩巡回、違反が成立するまでの経過観察、標章の貼付、状況の記録(写真・端末への入力)などです。交通指導や車両移動の強制といった警察固有の権限は持ちませんが、職務の公正性が厳しく求められ、守秘義務などの規律が設けられています。放置車両確認事務は、都道府県公安委員会に登録された法人に限って委託され、警察署長が入札等で選定します。
この仕事に就くには「駐車監視員資格者証」が必要です。取得ルートの基本は、都道府県公安委員会が実施する「駐車監視員資格者講習」を受講し、修了考査に合格したうえで資格者証の交付申請を行う、という流れです。講習・手続きの具体は都道府県で異なりますが、共通して修了証明書が交付申請の必須書類になります(行政資料でも“手続や日数は都道府県ごとに異なる”と記載されています)。
講習・考査の実施形態の例として、東京都は「講習2日・考査1日(計3日)」、大阪府は「講習14時間(2日)+後日考査」を公表しています。いずれも修了(合格)後に修了証明書が交付され、別途、公安委員会に資格者証の交付申請を行います(例:東京都は標準処理期間の目安や必要書類を公開、手数料9,900円)。
制度自体は全国で共通ですが、募集の時期・配属エリア・勤務形態は自治体の委託状況に左右されます。導入当初から全国の警察署で民間委託が進み、駐車監視員の配置が拡充されてきた経緯があります。定年後も「歩くこと」が中心の実務で体力づくりと収入確保を両立しやすい点が特長で、地域貢献の実感を得やすいのも魅力です。
2. 資格の取り方――講習・修了考査・資格者証までの流れ
駐車監視員として働くには、(1)各都道府県公安委員会の「駐車監視員資格者講習」を受講 →(2)修了考査に合格 →(3)公安委員会へ「資格者証」の交付申請、という3ステップが基本です。東京都では「講習2日+考査1日(計3日)」の実施方式で、申込は都内警察署で手数料納付のうえ行います(受講票は概ね2週間前に郵送)。合格者には会場で修了証明書が交付されます。
たとえば、大阪府の案内では「講習14時間(2日)+後日考査」、受講手数料は20,000円と記載されています(地域で所要日数・手数料は異なる点に注意)。
修了後は、各都道府県公安委員会に資格者証の交付申請を行います。東京都の例では、必要書類(申請書、修了証明書、住民票、診断書、誓約書、写真など)をそろえて申請し、標準処理期間は概ね30日、手数料は9,900円です。
なお、交通取り締まり等の実務経験が長い方など、国家公安委員会規則に定める要件に該当する場合は、講習を経ずに「認定考査」による取得ルートもあります(対象者や日程は各都道府県が告知)。
申込から交付までのイメージを下表にまとめます(※数値例は公式公表値のある自治体の一例で、地域により異なります)。
段階 | 主な手続き | 期間・回数の目安 | 手数料例 |
---|---|---|---|
(1) 講習申込 | 警察署窓口で申込・納付 | 申込期間内(受講票は概ね2週間前に届く) | ―(地域ごとに設定) |
(2) 講習・修了考査 | 講義受講→筆記考査 | 東京都:3日(講習2+考査1)/大阪府:講習14時間+後日考査 | 大阪府:受講手数料20,000円 |
(3) 資格者証交付申請 | 必要書類提出→審査 | 標準処理期間 概ね30日(東京都) | 交付手数料9,900円(東京都) |
ポイントは「自治体ごとの差」です。申込窓口、講習日程、受講・交付の手数料、必要書類の細部が異なるため、希望する勤務エリアの警察(公安委員会)ページで必ず最新情報を確認しましょう。制度の背景や民間委託の運用状況は警察庁の白書にも整理されています。
3. 応募条件と向いている人――年齢・体力・コミュニケーション力
まず法律上の「応募条件」です。資格者証の交付要件は道路交通法に基づき各公安委員会が定めており、主なポイントは(1)講習修了または認定(実務相当)に該当すること、(2)18歳以上であること、(3)破産手続き中や一定の刑罰を受けて2年未満などの欠格事由に当たらないこと、(4)診断書の提出など所定の書類を備えること――の4点です。上限年齢の規定は法令上は示されていません(東京都の案内では、18歳未満は不可、欠格事由の詳細、必要書類〔修了証明書・住民票・診断書・誓約書・写真〕が記載されています)。
仕事の適性としてまず重要なのは「歩行体力」です。現場では所定エリアを徒歩(地域によっては自転車)で巡回し、違反状況の撮影・端末入力・標章の作成・取付け・報告までを繰り返します。業務フローは警視庁の資料にも図解されており、撮影→標章作成・貼付→再撮影→データ提出という一連の実務を、屋外で粛々と行う点が特徴です。季節や天候の影響を受けるため、無理なく歩ける脚力・持久力、段差や階段の上り下りに支障がないことが望まれます。
次に「公正さ」と「落ち着いた対人対応」。駐車監視員はみなし公務員として秘密保持義務の対象であり、作業の公平性と適法性が強く求められます。現場では運転者からの質問や抗議に接する場面もあるため、感情的にならず、手順・法令に沿って丁寧に説明できる姿勢が必要です(トラブル時の対処は放置車両確認機関の遵守事項としても記載されています)。
最後に「チームワーク」と「基本的なIT操作」。多くの現場は2名1組で行動します。相棒と役割分担しながら、携帯端末や小型プリンターでの入力・印字・記録ができると業務がスムーズです(端末での入力・撮影は公式資料に記載)。機器操作は講習や現場研修で習得可能なので、未経験でも意欲があれば十分キャッチアップできます。
4. “歩いて稼ぐ”の健康メリット――歩数・消費カロリーの目安
駐車監視員の実務は「歩く」ことが中心。歩行は関節や心肺に過度な負担をかけにくい全身運動で、血圧・血糖のコントロール、フレイル予防、睡眠や気分の改善にも寄与します。日本の最新ガイドラインでは、成人は“歩行など3METs以上の身体活動を1日60分(≒約8,000歩)”、高齢者は“1日40分(≒約6,000歩)”を推奨しています。無理なく日々の総歩数を増やす「+10分=約1,000歩」の考え方も示されています。駐車監視員の勤務はこの推奨量を自然に満たしやすいのが利点です。
「どれくらい歩けば健康効果があるの?」という疑問には、国内の研究が参考になります。早稲田大などの解析では、高齢者の死亡リスク低下は“1日5,000~7,000歩”付近で頭打ちになり、5,000歩未満の人が1,000歩増やすとリスクが23%下がると報告されています。つまり“まず+1,000歩”の積み上げが重要。無理に1万歩を狙う必要はありません。
歩数と距離・時間の関係は次がおおよその目安です。「1,000歩 ≒ 約10分 ≒ 600~700m」。勤務シフト中の歩数を把握したい方は、スマホや歩数計で“10分=約1,000歩”を基準にすると実感が掴みやすくなります。
消費カロリーは、国際的に使われるMETs(運動強度)で概算できます。計算式は「消費 kcal = METs × 体重(kg)× 時間(h)」。平地の普通歩行は3.5~4.3METs、速歩や上り坂ではさらに上がります。
例:体重65kgの方が“やや速歩(3.5METs)”で歩いた場合
歩行時間 | 想定歩数の目安 | 概算消費カロリー |
---|---|---|
40分 | 約4,000歩 | 3.5×65×0.67=約152kcal |
60分 | 約6,000歩~8,000歩 | 3.5×65×1.0=約228kcal |
80分 | 約8,000歩~1万歩 | 3.5×65×1.33=約303kcal |
※歩幅・速度・地形で差が出ます。距離換算の目安は「1,000歩で約600~700m」。
安全に続けるコツ
・夏場は直射日光と熱中症に注意。こまめな給水、帽子、休憩を習慣に。
・靴は“クッション+滑りにくい靴底”のウォーキングシューズを。靴擦れや爪の変色は要チェック。
・持病のある方は、開始前に主治医へ相談を。急な胸痛・息切れ・めまいがあれば中止し、受診を。
5. 給与相場と働き方+仕事の探し方――求人の見つけ方
給与の目安は地域や雇用形態で幅があります。求人例を見ると、首都圏の大手では日給1.1万〜1.6万円台(シフトやエリアで変動)という募集が複数見られます。関西では時給1,060円前後のパート募集、首都圏では月給25万円の契約社員募集といった“月給制”の例もあります。以下は2025年8月時点の実在求人の一例です(時期・条件は募集により変動)。
形態 | 賃金例 | シフトの例/備考 | 参考 |
---|---|---|---|
日給制 | 1.1万〜1.625万円 | 週3〜4日OKなどの案件あり | シンテイ警備の募集例。東京都内・港区/文京区ほか。 |
時給制 | 時給1,062〜1,125円 | パート、実務未経験可の記載あり | 京都の駐車監視員求人(ハローワーク)。 |
月給制 | 月給25万円 | 契約社員、都内での勤務例 | 都内の駐車監視員求人(ハローワーク)。 |
仕事内容や就業形態は「2人1組での巡回」「自転車での移動」「端末入力あり」といった共通点が多く、ハローワークの各求人票にも明記されています。
仕事の探し方
1.ハローワーク(公式)で検索
キーワードは「駐車監視員」「放置車両 確認」。職種説明や必要資格、シフト、賃金が具体的に掲載されます。応募条件に「駐車監視員資格者証」が必須の案件と、取得支援ありの案件が混在するので要確認。実際の求人票では、自転車で巡回/2人1組/標章貼付/端末入力など業務内容が詳しく説明されています。
2.自治体(県警)ページで“委託先リスト”を確認
放置車両確認事務は、都道府県公安委員会に登録された法人が入札・契約を経て警察署長から委託を受けて担います。つまり、各県警の「放置車両確認機関一覧」からその地域で業務を担当している会社名を把握し、各社の採用ページを直接チェックするのが効率的です(例:神奈川県はKSPやシンテイ警備等が委託先として公開)。
3.警備会社の採用サイトを直接見る
委託先として名の挙がる会社は、自社サイトで駐車監視員の日給やシフト条件を明示して募集することが多いです。首都圏の例では日給1.1万〜1.6万円台+入社祝い金などの条件が見られます。
4.民間の求人サイト
Indeed・はた楽求人ナビ等にも駐車監視員の募集が掲載されるケースがあります。「駐車監視員 資格者証」やエリア名で検索し、日給制/時給制/月給制の違い、週何日から可か、交通費支給の有無を比較しましょう。
働き方の組み立て方(週2日〜フル勤務)
・週3〜4日OKのシフト:体力と生活リズムを整えやすく、定年後の「無理なく続ける」働き方に合う案件が多い(例:週3日〜可の募集)。
・フル勤務に近い稼ぎ方:日給制×週5日や月給制の契約社員なら、安定収入を狙える。とはいえ夏場の暑熱・冬場の寒冷や天候影響があるため、休憩と装備の工夫は必須。
6. 1日の仕事の流れと注意点――安全対策・トラブル時の対応
1日の流れ(典型例)
・出勤、ブリーフィング:当日の活動ガイドライン(重点路線・時間帯・重点違反)を確認。装備(反射チョッキ、携帯端末・小型プリンター、標章用紙、カメラ等)を点検します。活動範囲や重点時間帯は各警察署が定めたガイドラインに沿います。
・巡回開始:徒歩(地域により自転車)でエリアを巡回。違反が疑われる車両を見つけたら、撮影・端末入力など所定の手順で記録します。
・標章の作成、貼付:携帯端末で確認データを作成し、小型プリンターで放置車両確認標章を印字して貼付。必要な撮影を実施します。
・データ提出・小休憩:区切りの良いタイミングで警察署(センター)へ確認データを提出し、次の重点エリアへ。
・終業:端末・標章等を回収・確認。日報・報告を終えて業務終了。(運用は自治体・受託会社で異なります)
注意点(安全・法令・コミュニケーション)
・安全最優先で行動:車道側での作業は“後方確認→素早く→路側へ戻る”を徹底。夏は暑熱対策、雨天は滑りにくい靴・レインウェアが基本です。
・ガイドライン厳守:巡回路線・時間帯、重点違反の指定に沿って職務を遂行します(指示があれば臨時対応も)。
・みなし公務員としての自覚:職務の公正性・守秘義務が強く求められ、業務の妨害には公務執行妨害が適用され得る旨が警察資料で周知されています。現場記録は正確・淡々と。
・トラブル時の対応:抗議や威圧的言動に遭遇したら距離を取り、感情的に応対しないこと。緊急・危険時は110番、判断に迷う相談は警察相談専用電話#9110が案内されています。
・機器、証拠の取り扱い:撮影・入力・標章貼付・データ送信という定型のフローを乱さず、確認データの提出までを確実に。
7. まとめ――定年後の新しい働き方を現実に
駐車監視員は、歩行を伴う実務を通じて健康維持に配慮しながら、地域の交通秩序に貢献できる仕事です。
始める手順はシンプルで、
(1)勤務エリアの決定
(2)都道府県公安委員会の講習・修了考査の受講
(3)資格者証の交付
(4)求人への応募
となります。
応募前には、自身の適性(歩行体力・落ち着いた対人対応・端末の基本操作)を確認しておくとスムーズです。
屋外業務である以上、暑熱・寒冷・雨天といった環境要因への備えは欠かせません。滑りにくい靴や雨具、帽子、こまめな水分補給など、安全に働くための準備を日常化することで、無理なく継続しやすくなります。
準備項目の最終確認
・希望エリアと通勤手段の確認
・講習日程、必要書類、手数料の確認(都道府県で差異あり)
・健康面の自己点検(持病がある場合は主治医に相談)
・基本装備の用意(靴、雨具、帽子、水分補給用ボトルなど)
・求人の探索方法の整理(県警の委託先一覧→各社採用ページ+ハローワーク)
この流れを踏まえ、講習の実施情報と委託先企業の採用状況を確認しながら、必要な準備を進めていくのがおすすめです。
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