1:なぜ今“農業塾”がシニアに人気なのか?
定年を迎えたシニア世代の多くが「まだ働きたい」「体を動かしたい」と考えています。しかし、体力や雇用の制約から、再就職の選択肢は限られてしまうのが現実です。そんな中で注目されているのが「農業塾」です。農業塾とは、初心者でも基礎から農業を学べる講座や研修のことで、自治体やJA(農協)、大学、民間団体などが主催しています。
近年、農業塾がシニアに人気を集めている背景には3つの理由があります。
1.健康維持につながる
畑仕事は全身を使うため、自然と適度な運動量を確保できます。外で体を動かすことで筋力や持久力の維持につながり、日常生活でも疲れにくい体をつくる効果が期待できます。
2.収入や自給自足の可能性
家庭菜園や市民農園レベルから始めても、余剰分を直売所で販売したり、地域イベントで出品したりすることで小さな収入源となります。年金以外に少しでも収入が得られる点は、定年後の生活を支える大きな魅力です。
3.社会参加・仲間づくりの場になる
農業塾には同じ世代の仲間が集まりやすく、さらに若い世代とも交流できます。地域でのつながりが広がり、孤立防止や生きがいづくりにもつながります。
こうした「健康・収入・つながり」の3要素を満たせることが、シニアにとって農業塾の大きな魅力となっているのです。
2:農業塾で学べること|栽培技術から経営ノウハウまで
農業塾は「ただ野菜を育てる場」ではありません。プロの農家や専門講師から体系的に学べるのが特徴で、初心者でも安心して参加できるようにカリキュラムが組まれています。具体的には、以下のような内容を学べるケースが多いです。
1. 基本的な栽培技術
農業の基礎である土づくりや種まき、苗の植え付けから始まり、肥料の与え方、害虫対策、収穫のコツまでを実地で学びます。特にシニアにとっては、健康と両立しながら無理なく作業できる工夫(しゃがまず作業できる高畝や、軽量農具の使い方)もポイントになります。
2. 農機具・設備の使い方
トラクターや耕運機といった農機具の基本操作、安全な取り扱い方も指導してくれる塾があります。最新の小型農機具や電動工具を試す機会もあり、機械に不慣れな人でも安心して習得できます。
3. 農地管理・季節ごとの実践
畑やビニールハウスの維持管理、季節ごとの作物の選び方など、実際の農作業に必要な知識が得られます。春夏はトマトやキュウリ、秋冬は大根や白菜といった四季折々の作物を育てる実習を通じて、農業の年間サイクルを体験できます。
4. 販売・経営の知識
農業塾の中には、単なる栽培だけでなく「売る力」を学べるカリキュラムもあります。直売所やマルシェへの出店方法、パッケージングや価格設定、SNSを活用した集客など、小規模ながらも収入につなげられる実践的なスキルを学べます。
例えば、東京都の「練馬区立農業体験農園」や、各地のJAが運営する農業塾では、農業未経験者が半年~1年で一通りの栽培を経験でき、修了後に市民農園や小規模就農にチャレンジする方も増えています【出典:練馬区「農業体験農園事業」2023】。
このように農業塾は「趣味と実益を兼ねた学びの場」であり、知識だけでなく実際のスキルが身につく点が大きな魅力です。
3:シニア世代が農業塾に通うメリット
農業塾に参加することは、単に新しいスキルを学ぶだけではありません。シニア世代にとって、日々の暮らしや人生設計に直結する多くのメリットがあります。
1. 健康維持と体力づくり
農作業は「適度な有酸素運動」と「筋力トレーニング」を兼ね備えています。畑での土いじりや収穫作業は全身運動となり、ウォーキングやジム通いと同じように健康維持に役立ちます。厚生労働省の調査によると、週に150分程度の中強度の運動(速歩や軽作業)が推奨されていますが【出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」】、農作業は自然とその基準を満たす活動となります。
2. 社会とのつながり
農業塾には同じ世代や地域の人々が集まり、共に学ぶことで自然と交流が生まれます。孤立しがちなシニア世代にとって、仲間と協力しながら収穫を喜ぶ体験は大きな励みとなります。また、若い世代や子育て世代との交流の場としても機能し、自分の経験を次世代に伝える役割を担うこともできます。
3. 自給自足や収入確保の可能性
育てた野菜を自宅で食べることにより、食費を抑える効果があります。さらに余剰分を直売所やフリーマーケットで販売すれば、副収入につながります。農林水産省の調べでは、家庭菜園規模でも年間数万円規模の節約・収益効果があるとされており【出典:農林水産省「家庭菜園と農業参加に関する調査」2022】、経済的な安心感を高める一助となります。
4. 生きがいと自己実現
農業塾を通じて「学び直し」を体験できることは、自己成長や充実感にも直結します。新しい知識や技術を得ることは脳の活性化につながり、自己肯定感を高めます。また「自分がまだ社会で役割を持てる」と実感できることで、日々の生活に張り合いが生まれるのです。
このように、農業塾は体の健康だけでなく、心の健康、そして経済的な側面にまで好影響をもたらします。
4:農業塾の探し方と選び方のポイント
農業塾は全国各地に存在しますが、その運営母体や目的、カリキュラムの内容によって特色が異なります。自分に合った農業塾を選ぶことが、長く楽しく続けるためのカギです。ここでは、探し方と選び方のポイントを整理します。
1. 運営主体の違いを理解する
・自治体主催:市町村や県が主催する農業塾は、地域活性化や移住促進を目的としていることが多く、費用が比較的安く設定されています。例として、長野県や高知県など移住人気の高い地域では、農業体験から就農まで支援する自治体塾が充実しています。
・JA(農協)主催:地域のJAが開講する農業塾は、地元農家の協力が得られるのが特徴。実践的な知識が身につきやすく、修了後に農家での就労やボランティアに参加できる可能性もあります。
・民間スクール:週末農業や趣味として楽しむ方向けの農業スクールも増えています。都市部からでも通いやすく、ライフスタイルに合わせたコースを選びやすい点が魅力です。
2. 費用や期間をチェックする
農業塾の費用は数万円〜十数万円と幅があります。半年〜1年のプログラムが多いですが、中には数日単位の短期講座も存在します。自分の予算や通える頻度に合うプランを選ぶことが大切です。
3. カリキュラムと実習環境を比較する
実際に畑での実習がどれくらい含まれるか、座学だけでなく実地研修が充実しているかを確認しましょう。加えて、アクセスの良さや設備の充実度(農具や資材の貸し出しがあるか)も、無理なく通い続けられるかどうかに直結します。
4. 情報収集の方法
・インターネット検索:「農業塾+地域名」で探すと自治体やJAの募集情報が見つかりやすい
・自治体の広報誌やホームページ:地域住民向けに募集が掲載されることがある
・ハローワークや地域のシニア人材センター:就農や農業ボランティアとつながる情報を得られる場合もある
農業塾選びで失敗しないためには、「学びたい内容」と「自分の生活スタイル」を照らし合わせて判断することが重要です。
5:農業塾から広がる“第二のキャリア”の可能性
農業塾で学んだ知識やスキルは、その後の生活や働き方に直結します。単なる趣味にとどまらず、「第二のキャリア」として広がる可能性を秘めているのです。
1. 週末農業や市民農園での実践
まずは無理のない範囲で、自宅近くの市民農園や貸し農園を借りて実践する方法があります。週末に夫婦や友人と一緒に農作業を楽しめば、生活にメリハリが生まれ、採れた野菜は自宅の食卓を豊かにしてくれます。
2. 地域農家でのアルバイトや援農活動
農業塾を修了した人の中には、地元の農家で繁忙期の手伝いをする人も少なくありません。特に果物の収穫シーズンや田植え・稲刈りの時期は人手不足になりやすいため、シニア人材の活躍の場が広がっています。厚生労働省の調査でも、農業分野はシニアの就労が増加している業種のひとつとされています【出典:厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」2023】。
3. 地域イベントやマルシェでの販売
自分で育てた野菜や加工品(漬物やジャムなど)を地域の直売所やマルシェに出品することも可能です。小規模ながらも販売の経験は収入だけでなく、消費者との交流や地域貢献にもつながります。
4. 移住や就農へのステップ
農業塾をきっかけに本格的に農業へ転身するシニアもいます。特に地方自治体は移住者を呼び込むために「農業研修+住居支援」の制度を用意しており、第二の人生を地方でスタートするケースも増えています。
5. 経験や知識を次世代に伝える役割
農業塾で培った知識は、自分だけでなく家族や地域の若い世代に伝えることもできます。「教える」という役割を持つことで、自分の存在価値を実感できる点も大きな魅力です。
このように農業塾は、単なる趣味ではなく「新しい働き方の入り口」となり得ます。経済的な安心、健康維持、社会とのつながりを得ながら、自分らしいキャリアを再構築するチャンスを提供してくれるのです。
6:まとめ|農業塾で広がるシニアの新しい生き方
農業塾は、シニア世代にとって「学び」「健康」「つながり」「収入」のすべてを満たす貴重な場です。定年後の新しい挑戦として農業を始めることは、単なる趣味や余暇活動にとどまらず、人生を豊かにする第二のキャリア形成にもつながります。
これまで工場や会社で培った経験や忍耐力を持つシニア世代は、農作業においても強みを発揮できます。また、農業塾を通じて新しい知識を得ることで自己成長を実感し、地域の人々や若い世代と交流する中で、自分の存在価値を再確認できるでしょう。
さらに、農業塾で得たスキルは、市民農園での家庭菜園や直売所での販売、さらには地域農家でのアルバイトや移住・就農といった幅広い可能性へとつながります。健康を維持しながら経済的にも支えとなり、社会とのつながりを持ち続けることで、充実した日々を送れるのです。
「もう一度働きたい」「体を動かしたい」「仲間と出会いたい」――そんな想いを持つシニア世代にとって、農業塾はまさに新しい人生の扉を開くきっかけとなるはずです。
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