人手不足を解決する鍵:キャリアオーナーシップ×リスキリングで創る強い現場

【企業向け】シニア採用

1. はじめに:なぜ今「キャリアオーナーシップ」が注目されるのか

近年、企業を取り巻く労働環境は急速に変化しています。少子高齢化による人材不足、雇用延長制度の拡大、そして個人の「働き方」や「生き方」への価値観の多様化。これらの背景から、「キャリアオーナーシップ」という考え方が注目されるようになりました。

キャリアオーナーシップとは、自分自身のキャリアを主体的に捉え、計画し、行動していく姿勢を指します。これまでの日本型雇用は、企業が人材のキャリアを設計し、社員は与えられた道を歩むという構図が一般的でした。しかし、長寿化社会を迎え、70歳までの就業機会確保が努力義務化された現在では、社員自身が自律的にキャリアを考える必要性が高まっています。

特にシニア世代の採用においては、「これまでの経験をどう活かすか」「新しい役割にどう適応するか」が重要になります。ここでキャリアオーナーシップを促すことで、シニア人材は自分の強みや役割を再定義し、組織に貢献する意欲を高めることができます。

また、企業にとってもメリットは大きいです。主体的に学び直し(リスキリング)や役割適応に取り組む社員は、即戦力としてだけでなく、若手社員の育成や現場の安定化にも寄与します。単なる人手不足の解消ではなく、組織力を底上げする原動力となるのです。


2. キャリアオーナーシップの基本概念と企業への導入メリット

キャリアオーナーシップの基本概念は「自分のキャリアは自分で責任を持ち、主体的に切り開く」という考え方にあります。従来の企業依存型キャリアからの脱却を意味し、社員一人ひとりが「自分の強み」「目指す方向」「不足しているスキル」を認識し、学びや行動に結びつけることが重要です。

キャリアオーナーシップの3つの柱

1.自己理解:自分の強み・弱み・価値観を把握すること。
2.キャリア設計:将来に向けて必要なスキルや経験を整理すること。
3.行動実践:学び直しや新しい業務への挑戦を通じてキャリアを築くこと。

    これらを社員が実践できる環境を整えることが、企業の役割となります。


    企業にとっての導入メリット

    人材の定着率向上
     自分の成長を実感できる社員は、組織に長く貢献する意欲を持ちます。

    多様な人材の活躍推進
     シニアや女性、外国籍人材など、それぞれが主体的に強みを活かせる職場環境が整います。

    組織力の底上げ
     主体的な人材は課題解決能力が高く、現場の改善提案や若手育成にも積極的に関わります。

    特にシニア採用の文脈では、キャリアオーナーシップが「経験を再活用しながら新しい役割に挑戦する」という行動につながりやすく、戦力化をスムーズに進めることができます。

    経済産業省が提示する「人生100年時代の社会人基礎力」の枠組みにおいても、社員のキャリア自律や主体的な学びを促すことが、エンゲージメント向上や組織の持続的成長につながると強調されています。これはまさに、キャリアオーナーシップを育むことが企業力強化に直結することを示しています。


    3. リスキリングと組み合わせることで広がるシニア活躍の可能性

    キャリアオーナーシップを実践する上で欠かせないのが「リスキリング(学び直し)」です。特にシニア世代が新しい職場で活躍するためには、これまでの経験を活かしながらも、時代に合ったスキルを習得することが必要になります。

    なぜリスキリングが重要なのか

    厚生労働省「令和4年版厚生労働白書」では、企業が抱える課題として「デジタル化対応人材の不足」が大きく挙げられています。これは若手に限らず、シニア層にとっても避けられない課題です。基礎的なITスキルや、デジタルツールを活用した業務効率化の知識を持つだけでも、職場での存在感は大きく変わります。


    シニア人材×リスキリングの成功ポイント

    1.経験の再定義
     マネジメント経験や専門知識を、デジタル化された業務に合わせて再活用する。

    2.小さな学び直しから始める
     Excelやクラウドサービスの使い方など、日常業務に直結する内容が効果的。

    3.企業が支援する仕組み
     オンライン講座の受講補助や、社内勉強会の実施が「学びの継続」を後押しする。


      活躍の広がり

      リスキリングを通じて、シニア人材は単なる「補助戦力」ではなく、若手の育成役現場の改善リーダーとしての役割を果たすことができます。特に「デジタル×経験」の掛け合わせは、現場の安定化や業務効率化に直結する強力な武器となります。

      実際、経済産業省が公表した「未来人材ビジョン」(2022年)でも、リスキリングに積極的に取り組む人材は、キャリア自律の意識が高まり、組織への貢献意欲も向上する傾向があると指摘されています。

      シニア採用の場面でリスキリングを組み合わせることは、単なる人材確保を超えて、新しい価値を創り出す投資と言えるのです。


      4. キャリアオーナーシップを浸透させる具体的なステップ

      キャリアオーナーシップは「理念」として掲げるだけでは定着しません。社員一人ひとりが自分ごととして考え、行動に移せるように仕組み化することが重要です。ここでは、企業が実践できる具体的なステップを整理します。

      ステップ1:キャリア対話の場を設ける

      定期的な1on1やキャリア面談を通じて、上司と部下がキャリアについて率直に話せる環境を整えます。特にシニア社員に対しては「これまでの経験をどう活かしたいか」「どんな役割に挑戦したいか」といった問いかけが有効です。


      ステップ2:キャリア支援ツールを導入する

      キャリア診断シートやスキルマップを活用し、自分の強み・課題を“見える化”することで、社員が主体的に学び直しや配置転換を考えやすくなります。企業はそのデータを基に適切な研修やプロジェクトを提案することができます。


      ステップ3:学び直しの機会を提供する

      リスキリングの制度を組み合わせることが欠かせません。オンライン研修、eラーニング、外部セミナーの参加補助などを用意し、「学び続けられる職場」であることを示すことが、シニア層のモチベーションを高めます。


      ステップ4:挑戦を評価する文化をつくる

      キャリアオーナーシップを根付かせるためには、「挑戦すること自体を評価する文化」が必要です。たとえ成果に直結しなくても、学びや工夫を評価する仕組みを取り入れることで、社員は安心して自律的に行動できます。


      ステップ5:ロールモデルを共有する

      社内に成功事例を発信することも効果的です。例えば「60代でリスキリングを経て新しい役割に挑戦した社員」のケースを共有することで、他の社員も「自分にもできる」という意欲を持ちやすくなります。

      これらの取り組みは人事部だけでなく、経営層から現場マネージャーまで一体となって推進することが必要です。企業文化として根付かせることができれば、シニアを含む多様な人材が自らのキャリアを切り開き、組織全体の力を押し上げる基盤となります。


      5. 導入時の課題と解決策|人事担当者が押さえるべきポイント

      キャリアオーナーシップを組織に根付かせる際、人事担当者は複数の課題に直面します。特にシニア採用を含めた現場では「制度を導入したが定着しない」「年齢層によって受け止め方が違う」といった悩みが多く見られます。ここでは主な課題と解決策を整理します。

      課題1:社員の理解不足

      キャリアオーナーシップは聞き慣れない概念のため、「会社が責任を放棄するのでは?」と誤解されることがあります。

      解決策
      導入時にトップメッセージを発信し、「企業は社員の挑戦を支援する立場である」ことを明確に伝える必要があります。理念と具体的な支援策をセットで示すことが信頼を得る鍵です。


      課題2:世代間の温度差

      若手はキャリア自律に積極的でも、シニア層は「今さら新しいことを」と消極的になるケースもあります。

      解決策
      小さな学び直しや短期の役割変更から始めることで心理的ハードルを下げます。また、同世代のロールモデルを紹介することで「自分にもできる」という安心感を与えることができます。


      課題3:評価制度との不整合

      挑戦しても結果が出なければ評価されない仕組みでは、キャリアオーナーシップは根付きません。

      解決策
      成果だけでなく「挑戦の過程」を評価に組み込むことが必要です。経済産業省が推奨する「キャリア自律を支援する評価制度」事例(経済産業省『キャリア自律支援の好事例集』2021)でも、挑戦や学びを評価する仕組みが企業文化を変えるポイントとされています。


      課題4:人事部門のリソース不足

      制度設計や面談対応に追われ、人事部門が疲弊してしまうことも課題です。

      解決策
      キャリア支援をマネージャーや現場リーダーに分散させること、外部研修サービスやオンライン学習ツールを活用することで負担を軽減できます。


      キャリアオーナーシップの定着は一朝一夕では実現しませんが、人事担当者が「課題を想定し、解決策を組み込む」視点を持てば、着実に社内に根付かせることができます。


      6. まとめ|キャリアオーナーシップで持続可能な組織づくりへ

      人手不足が深刻化する中、単に労働力を補うだけの採用では、組織の成長は持続しません。その解決策のひとつが「キャリアオーナーシップ」と「リスキリング」を組み合わせたアプローチです。

      キャリアオーナーシップは、社員一人ひとりが主体的にキャリアを築き、自ら学び、挑戦していく姿勢を促します。そしてリスキリングは、その姿勢を具体的なスキル習得につなげ、シニア層を含む多様な人材が新しい役割で力を発揮できる土台を作ります。

      企業にとっては、これまで活かしきれなかった経験豊富な人材が再び現場で輝き、若手社員の育成や職場の安定化にも寄与します。また、挑戦を評価する文化を根付かせることで、年齢や立場を問わず誰もが「成長し続けられる組織」を実現できます。

      人事マネージャーに求められるのは、制度設計だけでなく「社員がキャリアを語り、行動できる環境づくり」を進めることです。その積み重ねが、持続可能な人材戦略となり、企業の競争力を高めることにつながります。

      これからの時代、キャリアオーナーシップは一部の先進的な企業だけのものではありません。労働力不足に直面するすべての企業にとって必要不可欠な戦略です。シニア採用を含め、多様な人材が自らのキャリアをオーナーシップを持って切り開ける環境を整えることこそ、未来の強い現場を創り出す第一歩となるでしょう。

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