1.「ウェルビーイング」って何?シニア世代にも関係がある理由
最近よく耳にする「ウェルビーイング(Well-being)」という言葉。これは単なる「健康」や「元気」とは少し違い、身体的・精神的・社会的に満たされた状態を意味します。つまり、「健康であること」だけでなく、「心が穏やかで、人とのつながりの中で自分らしく生きられている」ことも含まれているのです。
世界保健機関(WHO)も、ウェルビーイングを「健康の定義の中心」に据えており、ただ病気でないことを超えた広い概念としています。
この「ウェルビーイング」、実はシニア世代にこそ深く関係しています。というのも、定年後は以下のような変化が訪れやすくなるからです。
・収入の減少や経済的な不安
・社会との接点の喪失
・健康状態の変化
・役割を失うことによる喪失感
これらにうまく対応し、心と体の両面で元気に過ごすための指針となるのが、まさにウェルビーイングなのです。
また、日本でも注目が高まっており、たとえば内閣府の「高齢社会白書(令和5年版)」では、高齢期の幸福度と生活の質を高める鍵として、就労・地域参加・健康の維持が挙げられています。これらすべてが「ウェルビーイング」の要素と重なっています。
定年後も、社会とつながり、自分らしく働きながら暮らしていく。そんな“いきいきライフ”の土台となるのがウェルビーイングです。
2.いきいき働くシニアが実践している「ウェルビーイング」の3つの習慣
いきいきと働き続けるシニアには、共通している「日々の習慣」があります。これらは特別な才能や若さがなくても実践できるものばかり。心と体を整え、社会とつながることを意識した習慣は、まさにウェルビーイングな働き方の土台となります。ここでは、特に実践しやすい3つの習慣をご紹介します。
1. 朝のルーティンで生活リズムを整える
「年を取ると朝が早い」と言われますが、ただ早起きするだけではもったいない。起きたら軽いストレッチやラジオ体操、散歩などで体と気分を目覚めさせる時間をつくることが重要です。
規則正しい生活は、自律神経を整え、心の安定にもつながります。また、朝の時間に軽く体を動かすことで、1日の活動量が自然と増え、健康寿命の延伸にも効果的です。
2. 「ちょっと頑張る」運動を習慣にする
ウェルビーイングのためには、無理のない範囲で継続できる運動が不可欠です。
たとえば以下のような軽運動が効果的です。
・1日15〜30分のウォーキング
・週に2〜3回の筋トレ(椅子スクワットなど)
・シニア向けの体操教室や健康体操
高齢者を対象とした「健康日本21(第二次)」によると、身体活動量が多い高齢者は、生活機能の維持や認知症予防にも効果があるとされています。
(出典:厚生労働省「健康日本21(第二次)」より)
「疲れたら休む」も大切ですが、“ちょっと頑張る”運動習慣が心身を支えるのです。
3. 社会との「ゆるいつながり」を持つ
孤独は心身の健康を大きく蝕みます。一方で、毎日誰かと深く関わる必要はありません。
たとえば以下のような“ゆるいつながり”が、シニアの心の栄養になります。
・週に一度、地域の集まりやサークルに参加する
・職場での挨拶や雑談を大切にする
・同世代の仲間と趣味を共有する
このようなつながりがあるだけで、孤独感が薄れ、「自分は社会の一員だ」という安心感が生まれます。
日々のちょっとした積み重ねが、いきいきと働き続ける力につながります。
3.仕事が健康に?ウェルビーイング視点で選ぶシニアの働き方
「年を取ったら無理せず休んだほうがいい」と思っていませんか?
実は、働くこと自体がウェルビーイング(心身の健康)につながることが、近年の研究で明らかになっています。
2022年に東京都健康長寿医療センターが実施した調査では、働いている高齢者は、働いていない人に比べて抑うつリスクが低く、身体機能も高い傾向があると報告されています。
(出典:東京都健康長寿医療センター「高齢者の就労と健康」研究より)
つまり、「体力に合わせた働き方」を上手に選ぶことで、健康寿命を延ばす手段にもなり得るのです。
自分に合った“ちょうどいい仕事”を選ぶのがカギ
いくら働くのが良いといっても、過度なストレスや重労働は逆効果です。
重要なのは、「頑張りすぎないけれど、誰かの役に立てる」仕事を選ぶこと。
たとえば以下のような仕事は、ウェルビーイングを支えるのに適しています。
働き方のタイプ | 具体的な例 | 特徴 |
---|---|---|
短時間・軽作業 | 清掃スタッフ、マンション管理員、倉庫の仕分け作業など | 身体に無理がなく続けやすい |
人との関わりがある | 介護補助、子ども見守り隊、案内スタッフなど | 社会とのつながりを実感できる |
趣味や得意を活かす | ガーデニング講師、DIYサポート、手芸品販売など | 自分の「好き」が役立つ喜びを得られる |
これらは“やりがい”と“無理のなさ”のバランスが取れており、心身の負担が少なく、継続しやすいのが特徴です。
「働く=収入」以上の価値を感じられるかどうか
シニアにとっての仕事は、もはや「お金を稼ぐため」だけではありません。
以下のような効果も大きく関係します。
・毎日にメリハリが生まれる
・人との会話が増えて笑顔が増える
・「ありがとう」と言われることで自己肯定感が高まる
これらはすべてウェルビーイングの中核である“心の満足感”に直結します。
働き方を選ぶ際は、「どんな仕事内容か?」だけでなく、「この仕事は、自分の心と体にとってプラスになるか?」という視点で見てみると、きっと自分に合った“ウェルビーイングな働き方”が見つかります。
4.つながりが生む充実感|社会との関係がウェルビーイングを支える
ウェルビーイングを語るうえで欠かせないのが「社会とのつながり」です。
人との関係性は、私たちの心に大きな影響を与えます。とくにシニア世代にとっては、定年後に孤立しないことが心身の健康を保つうえで非常に重要です。
厚生労働省の「健康日本21(第二次)」によると、人との交流が多い高齢者ほど、健康状態が良好で、うつ症状も少ないという調査結果が報告されています。
(出典:厚生労働省「健康日本21(第二次)」)
このように、“誰かとつながっている”という感覚そのものが、ウェルビーイングの一部なのです。
「弱いつながり」こそ、日常に効く
強い絆や深い人間関係だけが重要なのではありません。
最近では「ゆるいつながり」「弱い紐帯(ちゅうたい)」という言葉も注目されています。
たとえばこんなつながり方があります。
・コンビニの店員と毎朝交わすあいさつ
・週に一度の趣味サークルでの雑談
・仕事先の同僚との軽い立ち話
こうした形式ばらない、自然な交流が、シニアの心の安定に大きく寄与します。
仕事は「つながり」のハブにもなる
働くことは、社会とつながる最も自然な手段のひとつです。
職場には、年代を超えた交流、顧客との会話、ちょっとした気遣いのやり取りなど、人と関われるチャンスがたくさんあります。
また、自分の役割があることで以下のような効果も生まれます。
・誰かに必要とされているという実感
・自分が社会の一員であるという誇り
・生活のリズムや張り合い
これらはすべて、精神的なウェルビーイングを高める重要な要素です。
シニア期は「孤独を感じやすい時期」でもありますが、意識的に社会と関わることで、毎日の充実感や心の活力を取り戻すことができます。
5.自分らしい「幸せのかたち」を見つけよう|これからの働き方のヒント
いきいきと働くことは、単に「収入を得るため」だけではありません。
自分らしく、納得のいく形で働き続けること自体が、ウェルビーイングを高める鍵になります。
大切なのは、「誰かの理想」ではなく、「自分にとっての幸せのかたち」を明確にすること。
年齢を重ねた今だからこそ、“働き方の価値”を見直してみましょう。
「何のために働くのか?」を考える時間を持とう
若いころは「家族のため」「生活のため」と答えていた理由も、今は変わってきているかもしれません。
・新しいことに挑戦したい
・人の役に立つことで自己肯定感を得たい
・社会との接点を持ち続けたい
・頭や体を動かして健康を維持したい
こうした“内側から出てくる動機”こそが、長く働き続ける原動力になります。
「経験」も「余裕」も、いまの自分の強み
シニア世代が若い世代と違うのは、これまでの人生経験と視野の広さ。
それは職場にとっても貴重な存在です。
・職場の若いスタッフの話をじっくり聞
・焦らず、落ち着いた対応ができる
・裏方の仕事を黙々とこなす責任感
このような姿勢は、「頼れる存在」「空気を和らげる存在」として職場に安心感を与えます。
学び直しも選択肢に
「もう年だから今さら……」と思っていませんか?
近年では、高齢者向けの学び直しプログラムや講座も充実しています。
たとえば、
・地域の「シニアカレッジ」や「市民大学」
・オンラインで学べるパソコン/スマホ講座
・手話や語学、地域ガイドなどの趣味/資格系講座
新しい知識やスキルを身につけることで、働く選択肢も広がり、「まだまだ自分は成長できる」という前向きな気持ちが得られます。
これからの働き方は、正解がひとつではありません。
「こうありたい」という自分なりの幸せの形を描きながら働くことが、心も体も元気にしてくれます。
まとめ|ウェルビーイングな働き方が、シニアの毎日を豊かにする
定年後の生活は、自由な時間が増える一方で、収入や役割、人とのつながりが減り、心や体の調子を崩しやすい時期でもあります。そんなとき、注目したいのが「ウェルビーイング」という考え方です。
ウェルビーイングとは、ただ病気がないという状態ではなく、心も体も、そして社会的にも満たされた状態を意味します。
とくにシニア世代にとっては、次のような点がウェルビーイングを高める大きなポイントになります。
✅ シニアのウェルビーイングに大切な要素
・生活リズムを整える習慣(朝の運動・食事・睡眠)
・自分に合った働き方を選ぶこと(短時間・やりがい重視)
・社会とゆるやかにつながる関係(職場、地域、趣味)
・「誰かの役に立っている」と実感できる経験
・新しいことに挑戦する前向きな気持ち
働くことは、こうした要素を自然に満たすチャンスになります。
収入を得るだけでなく、健康維持・人とのつながり・自己肯定感など、多くの「心の栄養」を与えてくれます。
大切なのは、年齢や過去の経歴にとらわれず、自分らしいペースで、自分らしい働き方を選ぶこと。
それが、いきいきと毎日を過ごすための「ウェルビーイングな働き方」につながります。
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