シニア世代必見|レスパイトを活用して“働きながら介護”を実現する方法

仕事

1.レスパイトとは?|介護を支える休息制度の基本

「レスパイト(Respite)」とは、日本語で「一時休止」や「休息」を意味する言葉で、介護の分野では 介護者が一時的に介護から離れて休むことができる仕組みやサービス を指します。高齢社会の日本では、多くの家族が親や配偶者の介護を担っていますが、その負担は身体的にも精神的にも大きなものです。厚生労働省の調査によると、介護者の約6割が「疲労感」や「孤独感」を感じていると回答しており、適切な休息なしでは介護離職や心身の不調につながる恐れがあるとされています(出典:厚生労働省「令和4年 介護保険事業状況報告」)。

レスパイト制度は、こうした介護者の負担を軽減し、安心して介護を続けられるように設計されています。代表的な例としては、要介護者を一時的に施設に預ける ショートステイ(短期入所) や、日中だけ介護サービスを受けられる デイサービス などがあります。これにより、介護者は自分の仕事に専念したり、病院に行ったり、趣味や休養にあてる時間を確保できます。

また、レスパイトは介護者だけでなく、要介護者本人にとってもメリットがあります。施設やサービスを利用することで、専門スタッフと関わったり、他の利用者と交流したりする機会が得られ、生活の刺激やリハビリの効果にもつながります。

つまり、レスパイトは「介護する側」と「介護される側」の双方にプラスの影響を与える仕組みなのです。特に、これから仕事と介護を両立させたいと考えるシニア世代にとっては、無理のない働き方を実現するための大切な支えとなります。


2.なぜ今、シニア世代にレスパイトが必要なのか

日本では「人生100年時代」と言われるように、長寿化が進む一方で、介護が必要になる高齢者の数も年々増加しています。厚生労働省の推計によれば、2025年には団塊の世代がすべて75歳以上となり、要介護者の人口も急増すると見込まれています(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム構築に向けて」)。そのため、介護の担い手である家族、特に60代後半から70代前半のシニア世代が介護を担うケースが急増しているのです。

しかし、この世代は「自分もまだ働きたい」「生活費を補うために収入が必要」という状況に直面しています。つまり、「介護」と「仕事」の両立 が避けられないテーマとなっています。実際、総務省の調査では、働きながら家族の介護をしている人は全国で約295万人に上り、その多くが50代~70代の層に集中しています(出典:総務省「就業構造基本調査」2017年)。

ここでレスパイトが重要な意味を持ちます。レスパイトサービスを利用すれば、介護者は安心して外で働くことができ、経済的な自立を保ちながら介護を続けられます。逆に、レスパイトを活用できないと、心身の疲労や職場への影響から「介護離職」に追い込まれるケースも少なくありません。実際に、介護を理由に離職する人は年間10万人規模にのぼると言われています(出典:厚生労働省「介護離職ゼロに向けて」)。

また、シニア世代は自分自身の健康リスクも抱えているため、介護の負担を一人で背負うのは大きなリスクになります。レスパイトをうまく活用することで、「介護も、仕事も、そして自分の健康も守る」 というバランスが可能になります。


3.レスパイトサービスの種類と利用できる仕組み

レスパイトと一口に言っても、その形態や利用方法はさまざまです。利用者や家族の状況に合わせて選べるのが特徴であり、「自分に合ったサービスを組み合わせること」が、仕事と介護を両立させるカギとなります。ここでは代表的な種類を紹介します。

ショートステイ(短期入所)

介護施設に数日から数週間、要介護者を預けられるサービスです。介護者が出張や旅行、休養を取りたいときに利用しやすく、24時間体制でケアが受けられるのが強みです。施設によってはリハビリやレクリエーションも充実しており、本人の生活の質向上にもつながります。


デイサービス(一時預かり)

日中だけ施設で過ごすサービスで、入浴・食事・機能訓練などを受けられます。介護者はその間に仕事や私用を済ませることができ、要介護者にとっても他者との交流機会になります。週数回の利用から始められるため、働きながらの介護に取り入れやすいサービスです。


訪問介護の一時利用

ヘルパーが自宅を訪問し、食事・排せつ・掃除・買い物などの支援を行います。外出が難しい高齢者でも在宅で安心して過ごせるようになり、介護者はその間に仕事に出たり休養を取ったりできます。短時間から利用できる柔軟さも魅力です。


自治体・NPOの支援制度

自治体が実施するレスパイト事業や、地域のNPOが提供するボランティアサービスもあります。たとえば「高齢者ふれあいサロン」「家事援助ボランティア」など、介護保険外のサービスもあり、費用を抑えて利用できる場合があります。


利用の流れ

レスパイトサービスを利用する際は、まず 地域包括支援センターケアマネジャー に相談するのが一般的です。介護保険の認定を受けていれば、その枠内でショートステイやデイサービスを組み合わせられますし、必要に応じて自費サービスも検討可能です。

こうした多様な仕組みを知り、自分や家族のライフスタイルに合ったサービスを活用することが、介護の負担を軽くしながら仕事を続ける第一歩になります。


4.レスパイトを活用して“働きながら介護”を両立するコツ

介護と仕事を両立させるには、レスパイトサービスを上手に組み合わせることが不可欠です。ここでは実際にシニア世代が働きながら介護を続けるために押さえておきたい工夫を紹介します。

勤務時間とサービス利用の組み合わせ方

まず大切なのは、勤務時間に合わせてレスパイトを計画的に利用することです。例えば、午前中だけパート勤務をして午後に介護を担う場合、午前中にデイサービスを利用すれば、安心して働きに行けます。逆にフルタイム勤務を続けたい場合は、ショートステイを数日組み合わせて、仕事に集中できる期間を確保するのも効果的です。


介護休暇制度との違い・併用の工夫

「介護休暇」とは、家族を介護するために取得できる有給の休暇制度です。これは一時的な休養や急な対応に役立ちますが、長期的にはレスパイトと併用することで効果を発揮します。たとえば「急な入院や体調不良のときは介護休暇、普段はデイサービスやショートステイ」といったように、両方を活用することで介護離職のリスクを減らせます。


周囲にサポートを頼る方法

介護は家族が一人で背負い込むものではありません。兄弟や親戚と役割分担をする、地域のボランティアやNPOに協力をお願いするなど、「支え合う体制」 を築くことが大切です。また、職場に介護の状況を伝えておくことで、シフト調整や在宅勤務の相談もしやすくなります。厚生労働省の調査でも、職場理解のある従業員は介護離職率が低い傾向が報告されています(出典:厚生労働省「仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」2021年)。


ポイントは「無理をしない」

介護を続けたい気持ちと、生活のために働きたい気持ちの両立は簡単ではありません。しかし、レスパイトを賢く取り入れ、職場や地域と連携することで「自分も家族も守りながら働く」ことは十分可能です。無理をせず、計画的に活用することが、長く健やかに介護と仕事を続ける秘訣と言えるでしょう。


5.利用にあたっての注意点と費用負担について

レスパイトサービスは介護者の負担を軽くし、働きながら介護を続けるための大きな助けになりますが、利用にあたっては知っておくべき注意点と費用面での工夫があります。

費用負担の目安

介護保険を利用できる場合、ショートステイやデイサービスの自己負担は原則 1割(所得に応じて2〜3割) です。たとえばショートステイを1泊2日で利用した場合、食費や居住費を含めて 数千円〜1万円程度 が一般的な目安となります(出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」)。デイサービスであれば1回あたり数百円から数千円程度で利用できます。

一方、介護保険外のサービス(自治体やNPOの家事援助、民間のベビーシッターならぬ「シルバーシッター」など)は全額自己負担となりますが、比較的安価に利用できる場合も多いです。


利用にあたっての注意点

1.計画的な予約が必要
ショートステイは特に人気が高く、繁忙期(お盆・年末年始など)は予約が埋まりやすいため、早めの申込みが安心です。

2.サービス内容の確認
施設によって受けられるケアの内容(入浴・リハビリ・レクリエーションなど)が異なります。事前に見学や担当者との面談をして、自分と家族に合ったサービスを選ぶことが大切です。

3.費用負担を軽減する制度の活用
自治体によっては、レスパイト利用に対して助成制度や割引がある場合があります。たとえば「高齢者介護支援券」や「家族介護支援事業」など、地域独自の制度を調べておくと経済的な負担を軽くできます。

4.介護者自身の体調管理
レスパイトは介護者が「休むため」にある制度ですが、その時間を有効活用できなければ意味がありません。仕事に使うだけでなく、休養や健康診断、趣味の時間にあてるなど、心身をリフレッシュさせる目的での利用も重要です。


    お金と時間のバランスを考える

    レスパイトを活用する際には、「費用をどれくらいかけられるか」「どのタイミングで利用するか」を家族で話し合っておくと安心です。無理のない範囲で活用すれば、介護の継続と仕事の両立が長期的に可能になります。


    まとめ|レスパイトを活用して介護も仕事も前向きに

    介護と仕事を両立することは、シニア世代にとって大きな挑戦です。しかし、レスパイトをうまく取り入れることで、その負担を軽減しながら、自分らしい働き方を続けることが可能になります。

    レスパイトにはショートステイやデイサービス、訪問介護など多様な選択肢があり、状況に応じて柔軟に利用できるのが強みです。介護を担う側にとっては「休息」や「働く時間」の確保につながり、要介護者にとっても「新しい交流」や「リハビリの機会」を得ることができます。まさに、双方にとってプラスになる仕組みといえるでしょう。

    また、シニア世代は「自分もまだ元気に働きたい」という気持ちと、「親や配偶者をしっかり支えたい」という思いの両方を抱えているケースが多くあります。レスパイトを活用すれば、その二つの願いをバランスよく実現できます。無理をせず、地域や職場の支援制度も組み合わせながら取り入れることが、長く健康的に働き続けるためのポイントです。

    最後に強調したいのは、「介護は一人で抱え込まない」ということです。レスパイトは、介護者自身の心身の健康を守り、人生を前向きに過ごすための大切なパートナー。働きながら介護をするシニア世代にとって、安心して未来を描くための強力な支えとなります。

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