1.シニア社員と孫育ての現状|なぜ企業が注目するのか
少子高齢化が進む日本では、シニア社員の働き方に新たな視点が求められています。その一つが「孫育て」との両立です。子育て世代の親が共働きで忙しい中、祖父母が孫の送迎や世話を担うケースは年々増加しています。内閣府「こども白書」(2023年版)によれば、祖父母が週1回以上育児を手伝う家庭は全体の約3割にのぼり、働く親世代にとって欠かせない存在となっています。
一方で、シニア自身も「働きたい」「社会とつながりたい」と望む人が多く、厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」(2024年)では、65歳以上の就業率は25.6%と年々上昇。つまり、シニア世代は「働く」と「孫育て」の双方の役割を担っているのです。
企業がこの状況に注目するのは、シニア社員の離職防止やモチベーション維持に直結するからです。「孫育てをしながらでも働ける制度」があれば、シニアは安心して仕事を続けられます。また、家庭の支援を通じて社員の満足度が高まり、結果として企業の定着率や採用力の強化につながると考えられています。
2.企業が取り入れる「孫育て支援制度」とは?
近年、企業の福利厚生や働き方改革の一環として注目されているのが「孫育て支援制度」です。これは、子育て支援や介護休暇に加え、シニア社員が孫の世話や送迎を行うために取得できる制度を指します。従来の休暇制度では想定されていなかった「孫の世話」というライフイベントを、企業が正面からサポートする動きが広がりつつあります。
具体的には、以下のような制度が導入されています。
・特別休暇制度:孫の誕生や入学式、病気の際などに取得できる「孫休暇」を設定。
・柔軟な勤務制度:短時間勤務やシフト調整を可能にし、送り迎えや病院付き添いをしやすくする。
・在宅勤務の推進:事務職や専門職などで在宅ワークを認めることで、孫育てとの両立を実現。
・福利厚生サービスの活用:ベビーシッター補助金や地域の子育て支援サービスと連携する事例もある。
これらの取り組みは、社員本人だけでなく、その家族や地域社会にとっても大きな意味を持ちます。特に共働き世帯が増える現代では、祖父母の役割が家庭の安定に直結しており、企業が支援することで「安心して働ける職場」のイメージを高められるのです。
3.孫育て支援がもたらすメリット|社員・家族・企業の三方良し
孫育て支援制度は、シニア社員にとってだけでなく、家族や企業にとっても多方面でプラスの効果をもたらします。
1. シニア社員にとってのメリット
孫育てのために仕事を調整できることで、「家庭も大切にしながら働ける安心感」を得られます。結果的に仕事へのモチベーションが上がり、長期的に就業を継続する意欲が高まります。また、孫との関わりを通じて精神的な充実感を得られるため、心身の健康維持にもつながります。
2. 家族にとってのメリット
共働き世帯が増える中で、祖父母の存在は「セーフティネット」として重要です。孫育て支援制度を利用すれば、親世代の育児・仕事の両立がよりスムーズになり、家庭の安心感が増す効果があります。特に、子どもの病気や学校行事などの突発的な予定にも柔軟に対応できる点が大きな強みです。
3. 企業にとってのメリット
企業側にとっても、シニア社員が安心して働き続けられることは人材確保・定着率向上につながる大きなメリットです。加えて、「社員とその家族を大切にする会社」というブランドイメージを高めることで、採用活動にもプラスに作用します。厚生労働省委託による意識調査「『仕事と生活の調和』の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査報告書」(令和5年度)では、柔軟な勤務制度を導入している企業ほど従業員の制度利用意向や満足度が高い傾向があることが示されています。
このように、社員・家族・企業の三者にとって「三方良し」の仕組みとして注目されているのが孫育て支援制度なのです。
4.企業が取り入れる際のステップ|孫育て支援導入の進め方
孫育て支援制度を実際に導入するには、単に新しい休暇制度を設けるだけでは不十分です。社員が安心して利用でき、企業にとっても持続可能な仕組みにするためには、段階的な進め方が重要です。以下では、導入の基本ステップを紹介します。
ステップ1:ニーズの把握
まずは、自社のシニア社員が「どの程度孫育てを担っているのか」「どのような支援を必要としているのか」を調査することが出発点です。社員アンケートや面談を通じて現状を把握し、制度設計の基礎データを集めます。
ステップ2:制度設計とルールづくり
調査結果を踏まえて、どのような支援を行うかを検討します。
・特別休暇の付与(例:孫の誕生日・入学式・通院付き添いなど)
・勤務時間の柔軟化(例:短時間勤務、シフト調整、在宅勤務の許可)
・外部サービス連携(例:ベビーシッター補助や自治体の子育て支援利用)
こうした内容を具体的に制度化し、利用条件や申請方法を明確にしておくことが重要です。
ステップ3:試行導入とフィードバック
いきなり全社導入するのではなく、一部部署や一定期間の試行導入を行うと効果が測りやすくなります。実際に利用した社員からのフィードバックを収集し、制度の使いやすさや改善点を検討します。
ステップ4:全社展開と周知
試行結果をもとに制度をブラッシュアップした後、全社的に展開します。その際には社内イントラネットや説明会を通じて、「遠慮なく使える制度である」ことを繰り返し周知することが不可欠です。
ステップ5:継続的な改善
導入後も利用状況をモニタリングし、社会情勢や社員のライフスタイルの変化に合わせて制度を更新していくことが求められます。
このようなプロセスを踏むことで、形式だけの制度に終わらず、社員にとって実際に役立つ「孫育て支援」を実現することが可能になります。
5.シニアが孫育てと両立して働くための工夫
企業の支援制度が整っていても、実際に孫育てと仕事を両立するには、シニア本人の工夫も欠かせません。自分の生活リズムを守りつつ、家庭と職場の両方で役割を果たすためのポイントを整理します。
1. スケジュール管理を徹底する
孫の送り迎えや病院通いなどは突発的な予定も多いため、カレンダーやアプリを使って予定を可視化しましょう。特に勤務シフトがある仕事では、「家庭の予定を先に確定→勤務希望を提出」という流れを習慣化することで、両立がスムーズになります。
2. 職場とオープンに相談する
孫育ての予定を隠すのではなく、上司や同僚と共有しておくことで、理解を得やすくなります。例えば「週に2日は早めに退勤したい」と事前に伝えておけば、シフトや業務分担の調整も円滑に進みます。
3. 体力・健康管理を怠らない
孫育ては体力を要します。仕事と家庭の両立には、十分な睡眠・バランスの良い食事・適度な運動が不可欠です。厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」でも、高齢者は1日40分以上の中強度活動(早歩きや軽い筋トレ)を推奨しています。日常生活に取り入れることで、疲れにくくなり孫育ても仕事も継続しやすくなります。
4. 地域や外部サービスを活用する
すべてを一人で抱え込む必要はありません。自治体のファミリーサポートやベビーシッターサービス、地域の子育てサロンなどを組み合わせることで、負担を軽減できます。「無理をしない仕組み」を作ることが、長期的に両立を続ける秘訣です。
このように、自分自身の生活管理と職場・地域との協力体制を築くことで、孫育てと仕事を無理なく続けることができます。
まとめ|孫育て支援はシニアの働き方を変えるカギに
シニア社員の「孫育て支援」は、単なる福利厚生にとどまらず、社会全体の働き方を大きく変える可能性を秘めています。日本社会は少子高齢化と共働き世帯の増加という課題を抱えており、祖父母が孫育てを担う場面は今後さらに増えるでしょう。その現実に応える形で企業が制度を整えることは、シニアが安心して働き続けられる土台づくりとなります。
社員にとっては「家庭を大切にしながら働ける」安心感が得られ、家族にとっては「育児の負担軽減」というメリットがあります。そして企業にとっても、シニア人材の定着率向上や採用力強化、さらには企業イメージの向上といった効果が期待できます。まさに「三方良し」の取り組みです。
また、導入には段階的な進め方が求められます。ニーズ把握から制度設計、試行導入、全社展開、継続的改善というプロセスを踏むことで、形だけではなく「実際に役立つ制度」として根付かせることが可能です。
これからの企業に求められるのは、年齢や家庭の事情に左右されず、誰もが自分らしく働ける環境を提供することです。孫育て支援は、その象徴的な施策といえるでしょう。シニアの経験と家庭の役割を両立させることで、社会全体に新しい働き方のモデルを示すことができます。
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