老後のお金が不安になったら|「家計簿」で生活を“見える化”して安心する方法

お金

1.なぜ「老後のお金」は不安になりやすいのか

老後のお金についての不安は、「実際に足りないから」だけで生まれるものではありません。多くの場合、その正体は 「今の生活に、いくら必要で、いくら使っているのかが分からないこと」 にあります。
年金やパート収入がある程度あっても、毎月の支出が把握できていないと、「このままで大丈夫なのだろうか」「将来、急な出費があったらどうしよう」と、漠然とした不安が膨らみやすくなります。

特にシニア世代になると、医療費や健康関連の出費、冠婚葬祭、家電の買い替えなど、予測しにくい支出が気になりやすくなります。その結果、「使いすぎているかもしれない」「節約しなければ」と感じつつも、何をどう見直せばよいのか分からず、不安だけが残ってしまうのです。

ここで大切なのは、「節約しなければ」と自分を追い込むことではありません。まず必要なのは、今の生活のお金の流れを“見える化”することです。
収入と支出の全体像が分かるだけで、「思っていたほど不安に感じる必要はなかった」「ここは気にしなくてよさそうだ」と、気持ちが落ち着くことも少なくありません。

その“見える化”を助けてくれるのが、家計簿です。
家計簿というと、「細かく書かないといけない」「毎日続けないと意味がない」と思われがちですが、実際はもっとシンプルで構いません。大切なのは、数字を完璧に合わせることではなく、自分の生活を把握すること。それだけで、お金に対する不安は少しずつ和らいでいきます。


2.家計簿は「節約」より「安心」のためにつけるもの

家計簿と聞くと、「出費を減らすためのもの」「我慢や節約をするための道具」というイメージを持つ方も多いかもしれません。ですが、特にシニア世代にとって大切なのは、無理に節約することよりも、安心して暮らすことです。

若い頃の家計管理は、「貯める」「増やす」が目的になりがちでした。一方、これからの生活では、「今の暮らしを無理なく続けられるか」「安心して毎日を過ごせているか」が重要になります。その視点で考えると、家計簿の役割も自然と変わってきます。

家計簿は、「削るため」ではなく、確認するためのもの。
・毎月、だいたいどれくらい使っているのか
・自分が安心できる支出の範囲はどこか
・無理をしていないか
こうしたことを知るための道具だと考えると、家計簿へのハードルはぐっと下がります。

実際、「節約しなきゃ」と思いながらつける家計簿ほど、続かなくなるものです。数字を見るたびに反省したり、自分を責めたりすると、家計簿そのものがストレスになってしまいます。それでは本末転倒ですよね。

一方で、「今の生活を知るため」「安心材料を増やすため」に家計簿をつけると、気持ちはずいぶん楽になります。「思ったより使っていなかった」「ここは安心して使っていい」と分かるだけで、不安が和らぐことも少なくありません。

家計簿は、生活を縛るものではなく、暮らしを支えてくれる味方です。
まずは「節約しなければ」という考えを手放して、「安心のためにつけてみよう」という気持ちで向き合ってみてください。


3.家計簿にはどんな種類がある?代表的な3つの手段

家計簿というと、「こう書くべき」「この方法が正解」と思われがちですが、実は家計簿に正解はありません。大切なのは、自分に合った手段を選ぶこと。そのために、まずは代表的な家計簿の種類を知っておきましょう。

紙の家計簿(ノート・市販の家計簿)

紙の家計簿は、昔から親しまれている方法です。ノートに手書きしたり、市販の家計簿を使ったりと、やり方はとてもシンプル。
「文字を書くのが好き」「数字を自分の目で確認したい」という方には向いています。書くことでお金の流れが頭に入りやすく、気持ちの整理にもつながるのが特徴です。一方で、計算が少し面倒に感じることもあります。


エクセルで管理する家計簿

パソコンを使うことに抵抗がなければ、エクセルでの家計簿管理も一つの方法です。あらかじめ表を作っておけば、合計金額を自動で計算できるため、「計算ミスが心配」という人には安心です。
ただし、パソコンを開く習慣がない場合は、つい後回しになってしまうこともあります。


スマホの家計簿アプリ

最近は、スマホで簡単に入力できる家計簿アプリも増えています。レシートを撮影したり、入力を補助してくれたりする機能があり、「手間をかけたくない」という方には便利です。
ただ、スマホ操作が苦手な方や、情報が多すぎると感じる方には、少し疲れてしまうこともあります。

このように、家計簿にはさまざまな手段がありますが、どれが一番良いかではなく、どれが自分に合うかが大切です。
「続けられそう」「負担にならなそう」と感じる方法を選ぶことが、安心につながる家計簿への第一歩になります。


4.紙・エクセル・アプリ|自分に合う家計簿の選び方

家計簿選びでいちばん大切なのは、「続けられるかどうか」です。機能が多いか、流行っているかよりも、自分の生活リズムや性格に合っているかを基準に考えると、失敗しにくくなります。

まず考えてほしいのは、「書くこと・入力すること」に対する感覚です。
たとえば、文字を書くのが好きで、ノートを開く時間が苦にならない方なら、紙の家計簿は相性が良いでしょう。書く行為そのものが、気持ちの整理や振り返りにつながることもあります。

一方で、「手書きは面倒」「計算が不安」という方には、エクセルが向いています。合計金額が自動で出るため、数字に自信がなくても安心です。ただし、パソコンを立ち上げる習慣がない場合は、続けにくくなる点には注意が必要です。

スマホの家計簿アプリは、「すきま時間にサッと入力したい」「できるだけ手間をかけたくない」という方に向いています。ただ、画面の情報量が多かったり、操作が複雑に感じたりすると、逆にストレスになることもあります。

選び方のポイントは、とてもシンプルです。

・毎日(または週に1回)触れそうか
・入力や記録が負担にならないか
・見返したときに分かりやすいか

この3つを満たしていれば、その方法は「あなたに合った家計簿」です。
途中で「合わないな」と感じたら、方法を変えても問題ありません。家計簿は、一度決めたら変えてはいけないものではないのです。

自分に合う手段を選ぶことは、「楽をすること」ではなく、「安心して続けるための工夫」です。そう考えると、家計簿選びそのものが、すでに不安を減らす一歩になっていると言えるでしょう。


5.家計簿に書くのはここだけでOK|最低限の項目

家計簿を始めるとき、多くの人がつまずくのが「何を書けばいいのか分からない」という点です。項目を細かくしすぎると、記入が面倒になり、続かなくなってしまいます。そこでおすすめしたいのが、まずは最低限の項目だけに絞ることです。

基本は、大きく分けて次の3つで十分です。

分類内容の例
固定費家賃・光熱費・通信費・保険料など
変動費食費・日用品・交際費・趣味など
医療・健康費通院費・薬代・健康用品など

固定費は、毎月ほぼ決まって出ていくお金です。ここを把握するだけで、「最低限いくら必要か」が見えてきます。
変動費は月によって増減する支出で、生活の満足度と関わる部分でもあります。
医療・健康費は、シニア世代にとって特に意識しておきたい項目です。別枠で把握することで、「思ったより使っていない」「このくらいなら想定内」と冷静に判断しやすくなります。

ポイントは、レシート1枚ごとに細かく分類しないことです。
たとえば、スーパーでの買い物は細かく分けず、「食費」としてまとめてしまって問題ありません。大切なのは正確さよりも、「全体の流れが分かること」です。

また、毎日書けなくても気にする必要はありません。
週に1回、月に1回でも、「このくらい使っているんだな」と把握できれば、それは立派な家計簿です。完璧を目指すほど、家計簿は続かなくなります。

「これだけでいい」と思えるシンプルさが、安心につながります。
まずは最低限の項目から始めて、慣れてきたら必要に応じて足していく。そのくらいの気持ちで取り組んでみてください。


6.家計簿をつけると「安心」が生まれる理由

家計簿をつけ始めてしばらくすると、多くの人が感じる変化があります。それは、「お金の不安が少し軽くなった」という感覚です。収入や支出の数字自体は大きく変わっていなくても、“分かっている”という状態が、気持ちを落ち着かせてくれます。

お金の不安は、「足りないこと」よりも、「分からないこと」から生まれがちです。
・今月はいくら使ったのか
・どのくらいまでなら使っても大丈夫なのか
・急な出費があっても対応できそうか
こうしたことが見えないままだと、必要以上に不安を感じてしまいます。

家計簿をつけることで、こうした疑問に一つずつ答えが出てきます。「このくらいなら問題なさそう」「ここは少し注意すればいい」と判断できるようになると、不安は漠然としたものではなく、整理できるものに変わっていきます。

また、家計簿は「使っていいお金」を教えてくれる存在でもあります。
節約ばかりを意識していると、「これは使っていいのかな」「また無駄遣いしてしまったかも」と、楽しみまで我慢してしまいがちです。しかし、家計の全体像が分かっていれば、「ここは安心して使っていい」と自分で納得できるようになります。

その結果、気持ちに余裕が生まれます。
お金のことで頭がいっぱいにならず、日々の生活や人とのつながりを、前向きに楽しめるようになる。これこそが、家計簿がもたらす一番の安心と言えるでしょう。

家計簿は、数字を管理するための道具であると同時に、気持ちを整えるための道具でもあります。安心して暮らすための土台として、無理のない形で活用していきましょう。


7.それでも不安が残る人へ|「少し働く」という選択肢

家計簿をつけて生活のお金が見えてくると、「思ったより大丈夫そう」と安心できる人がいる一方で、「やはり少し不安が残る」と感じる人もいます。どちらも自然な感覚です。大切なのは、その不安を無理に我慢したり、見て見ぬふりをしないことです。

もし家計を整理したうえで不安が残るなら、「少し働く」という選択肢を考えてみるのも一つの方法です。ここで言う「働く」は、フルタイムで頑張ることではありません。体力や生活リズムに合わせて、週に数日、短時間だけ働くような形も含まれます。

少しの収入があるだけでも、「毎月これだけ入ってくる」という安心感は大きな支えになります。また、お金のためだけでなく、人とのつながりができることや、生活にリズムが生まれることも、気持ちの安定につながります。
「誰かと話す機会が増えた」「外に出る理由ができた」と感じる人も少なくありません。

もちろん、働くかどうかは人それぞれです。体調や家庭の状況によって、「今は働かない」という選択も立派な判断です。大切なのは、家計簿で状況を把握したうえで、自分で選べる状態になること。不安に押されて決めるのではなく、納得して選ぶことができれば、それ自体が安心につながります。

家計簿は、「節約するため」だけの道具ではありません。
「働く」「働かない」「どのくらい働くか」といった、これからの暮らし方を考えるための材料を、静かにそろえてくれる存在でもあります。必要以上に自分を追い込まず、選択肢の一つとして、やさしく考えてみてください。


8.まとめ|家計簿は“これからの選択”を自分で決めるための道具

家計簿は、「節約を頑張る人のためのもの」でも、「数字が得意な人だけのもの」でもありません。特にこれからの暮らしを考えるシニア世代にとっては、安心して毎日を過ごすための土台となる道具です。

家計簿をつけることで分かるのは、「足りない」「我慢しなければ」という結論だけではありません。
・このくらいなら安心して使える
・ここは少し気をつければ大丈夫
・場合によっては、少し働く選択肢もある
といったように、自分で判断できる材料がそろっていきます。

また、家計簿のやり方に正解はありません。紙でも、エクセルでも、アプリでも、「自分に合っていて続けられること」が何より大切です。途中で方法を変えても構いませんし、完璧に書けなくても問題ありません。続けること自体が、安心につながります。

お金の不安は、誰にでもあります。でも、その不安に振り回されるか、落ち着いて向き合えるかは、「見えているかどうか」で大きく変わります。家計簿は、その第一歩を支えてくれる、心強い味方です。

まずは、できるところから。
今日の支出を一つ書いてみる、今月の固定費を確認してみる——それだけでも十分です。家計簿を通して、自分らしい暮らしを、自分の手で選んでいきましょう。

家計を見える化しても不安が残るなら、無理のない働き方を探すのも一つの選択です。シニア歓迎の仕事をまとめた求人サイト「キャリア65」はこちらから。

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