1.UIJターンとは?採用に活かせる基本知識
UIJターンとは、都市部から地方へ移住して働く人材の流れを指す総称で、Uターン・Iターン・Jターンという3つのパターンを含んでいます。企業が人材不足を解消する手段としてだけでなく、地方創生や地域経済の活性化策としても注目されています。特に近年は、テレワークの普及や生活の質(QOL)を重視する働き手の増加により、UIJターンの関心は高まっています。
・Uターン:地方出身者が都市部で就職、経験を積んだ後、故郷や出身地に戻って働くケース。
・Iターン:都市部出身者や地方出身者が、自分の地元とは異なる地方へ移住して働くケース。
・Jターン:地方出身者が都市部で就職後、故郷ではないが出身地に近い地方都市へ移住するケース。
これらの動きは、単なる勤務地の移動ではなく、生活基盤の移転を伴うため、採用活動では「仕事」だけでなく「暮らし」や「地域コミュニティ」まで含めた提案が必要になります。
総務省の「地域おこし協力隊」や各自治体の移住支援金制度など、国や地方の支援策も整っており、企業がこれらの制度をうまく活用することで採用コストを抑えつつ優秀な人材を確保できます。例えば、東京都から指定地方への移住・就業で最大100万円(単身者は最大60万円)の支援金が受けられる「地方移住支援事業」もその一例です(※出典:内閣官房 地方創生2.0「移住支援金事業」2025年8月時点)。
このようにUIJターンは、都市部で得たスキルや経験を持つ人材を地方へ呼び込む有効な手段であり、採用の幅を大きく広げる可能性を秘めています。
2.なぜ今、UIJターンでシニア人材なのか
近年、UIJターン採用の対象として「シニア人材」に注目が集まっています。その背景には、地方企業が抱える深刻な人手不足と、都市部で豊富な経験を積んだ人材の活用ニーズが一致しているという事情があります。
経験値の高さと即戦力性
シニア層は長年のキャリアを通じて培った専門知識や実務スキルを持っており、採用後すぐに戦力として活躍できる可能性が高い層です。特に地方では、限られた人員で複数業務を担うケースも多く、幅広い業務に対応できる人材は重宝されます。また、顧客対応や現場マネジメントなど、年齢に裏打ちされた落ち着きや信頼感も強みになります。
若手育成・人材定着への貢献
シニア人材は、単に業務をこなすだけでなく、若手社員への教育や育成にも大きな力を発揮します。OJT(On-the-Job Training)や現場での指導を通じ、業務ノウハウや価値観を次世代に継承する役割を担えるため、組織全体の底上げにつながります。実際、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査でも、シニア人材を採用した企業の約6割が「若手社員の定着率向上」に効果があったと回答しています(※出典:JILPT「高年齢者雇用・就業の現状と課題」)。
社会的背景と価値観の変化
定年延長や再雇用制度の広がりにより、60歳を超えても働き続けることが一般的になっています。また、都市部の高い生活コストや通勤ストレスを避け、自然環境や生活の質を重視するシニア層が増加。こうした価値観の変化は、地方での就業・生活を前向きに検討する動きを後押ししています。
結果として、UIJターンとシニア採用は「地方企業の人手不足解消」と「シニア層の第二のキャリア形成」という双方のニーズを満たす、時代に即したマッチング手法となっているのです。
3.UIJターンでシニア人材を採用するメリット
UIJターンを通じてシニア人材を採用することは、単なる人手不足の解消にとどまらず、企業や地域に多面的なメリットをもたらします。ここでは代表的な利点を整理します。
地方企業における人手不足解消
地方の中小企業や農林水産業、製造業、サービス業などでは、若年層の人材確保が難しい状況が続いています。総務省の「労働力調査(2024年)」によれば、地方の有効求人倍率は全国平均を上回る地域が多く、特に技能や経験を必要とする職種で採用難が顕著です。都市部でキャリアを積んだシニア層は、このギャップを埋める貴重な人材源となります。
組織の多様性向上と業務品質の安定
シニア層が加わることで、組織の年齢構成が多様化し、経験や価値観の幅が広がります。これは新しい視点や改善策の発見につながり、業務の品質向上やリスク管理能力の強化にも直結します。特に品質管理や顧客対応のような「経験値がものをいう」分野では、シニアの存在は欠かせません。
地域活性化と企業イメージ向上
UIJターンによるシニア採用は、地域の人口減少対策や経済活性化にも寄与します。新たな住民として地域に溶け込み、消費や地域活動に参加することで、企業だけでなく地域全体の活力が高まります。また、地元メディアや自治体との連携を通じて「地域貢献企業」としてのイメージアップにもつながります。
採用コスト削減の可能性
自治体の移住支援制度や雇用助成金を活用することで、採用コストや教育コストを抑えられるケースもあります。例えば、厚生労働省の「高年齢者雇用開発特別奨励金」では、60歳以上の労働者を新規雇用した企業に対して最大70万円(中小企業の場合)の助成が行われます(※2024年度時点)。UIJターンの支援金制度と組み合わせれば、費用面でも大きなメリットが得られます。
このように、UIJターンでのシニア採用は、人材確保・組織強化・地域活性化の三拍子が揃う戦略的な選択肢と言えます。
4.UIJターン採用を成功させるための実践ステップ
UIJターン採用を成功させるには、単に求人を出すだけでは不十分です。求職者にとっては「仕事」だけでなく「生活環境」や「地域の魅力」も意思決定の重要な要素となるため、戦略的な準備と情報発信が欠かせません。以下は、地方企業がUIJターンでシニア人材を呼び込むための実践的ステップです。
1. ターゲット人材の明確化
まず、どのようなスキルや経験を持った人材が必要かを具体的に定義します。
・必要な職務内容や求める資格、経験
・年齢層や働き方(フルタイム、短時間勤務など)の希望
・地域で不足している専門分野や役割
特にシニア人材の場合、「経験年数」や「資格の有無」よりも「現場で即戦力になれるか」「若手を指導できるか」など、実践的な能力の見極めが重要です。
2. 情報発信・募集方法の工夫
都市部の求職者や移住希望者にリーチするためには、情報発信のチャネルを広げる必要があります。
・UIJターン専門求人サイトや移住支援ポータルの活用
・SNSや動画を使った職場・地域紹介
・移住フェアやオンライン説明会への出展
特に動画や写真を活用したコンテンツは、遠方の求職者が生活や職場環境をイメージしやすくなるため効果的です。
3. 移住支援や定着支援の充実
採用後の定着率を高めるためには、住居探しや生活インフラの案内など、移住のハードルを下げるサポートが不可欠です。
・引越し費用の一部負担
・社宅や借り上げ住宅の提供
・地域の医療、交通、生活情報の提供
・地域住民との交流イベント
総務省の調査によると、UIJターン希望者の約7割が「移住後の生活支援が充実していること」を重視しており(※出典:総務省「地域おこし協力隊及び移住支援に関する意識調査」2023年)、支援体制の有無が採用成否を左右します。
5.UIJターン採用の成功ポイントと事例から学ぶ
UIJターン採用を成功させる企業には、いくつかの共通点があります。ここでは、実際の事例を交えながら、採用の成果を最大化するためのポイントを整理します。
成功企業の共通点
1.地域と企業の魅力を一体的に発信
単なる求人情報ではなく、「地域での暮らし方」「働き方」「人とのつながり」を包括的に伝える企業ほど応募が集まりやすい傾向があります。例えば、長野県の製造業A社では、社員インタビューや地域の四季の映像をYouTubeで公開し、年間応募数を前年比150%に増加させました。
2.移住後の生活不安を解消するサポート体制
引越し費用補助、住居紹介、地域案内など、移住後の生活基盤を整えるサポートを行うことで定着率が向上します。北海道の観光業B社では、移住支援金制度の活用に加え、地元自治体と連携して新規移住者向け交流会を開催し、離職率を30%削減しました。
3.長期的なキャリアパスの提示
「採用して終わり」ではなく、再雇用制度やスキル研修を組み合わせ、シニア人材の長期的な活躍を支える企業は信頼を得やすくなります。愛媛県の物流C社では、60歳以上の社員向けに段階的な職務移行プランを提示し、平均勤続年数を5年延ばしました。
成功につながる採用媒体の選び方
UIJターン希望者にリーチするには、一般的な求人サイトだけでなく、「移住・地域特化型」や「シニア特化型」の媒体を組み合わせることが効果的です。
・地方創生、移住支援ポータル
「ふるさと回帰支援センター」「ニッポン移住・交流ナビ」「いいかも地方暮らし」、各自治体の移住支援ポータルサイトなど。
・シニア特化型求人サイト
「キャリア65」「マイナビミドルシニア」「はた楽求人ナビ」「シニアジョブ」など、経験豊富な人材向け媒体。
・ハローワーク+自治体の求人ページ
地元求職者だけでなく、UIJターン希望者向け情報も掲載されやすい。
・業界特化型求人サイト
農業、観光、製造など職種別に特化した媒体。
複数のチャネルを併用し、さらに企業ホームページやSNS、動画コンテ
失敗を防ぐための注意点
・募集条件が曖昧:求めるスキルや勤務条件を明確にしないと、採用後のミスマッチが発生しやすい。
・地域情報の不足:生活インフラや医療、交通などの情報不足は移住決定を妨げる要因に。
・定着支援の欠如:採用時の支援は手厚くても、入社後のフォローが不十分だと早期離職につながる。
これらの成功ポイントと注意点を押さえることで、UIJターン採用は単なる人材確保策ではなく、企業と地域の双方に利益をもたらす持続的な仕組みへと進化します。
6.まとめ|UIJターンで地方企業の未来をつくる
UIJターンは、都市部で培われた経験とスキルを地方に還元できる、企業と地域双方にとって大きな可能性を秘めた採用手法です。特にシニア人材においては、即戦力としての業務遂行力だけでなく、若手育成や組織の安定化といった付加価値をもたらします。
本記事でご紹介したように、成功のカギは以下のポイントに集約されます。
・ターゲット人材の明確化:求めるスキル、経験、働き方を具体的に設定する
・効果的な情報発信:移住支援や地域の魅力をセットで伝える
・定着支援の充実:住居や生活面での不安を解消する仕組みづくり
・適切な採用媒体の活用:移住特化型、シニア特化型、業界特化型を組み合わせる
また、UIJターンは単発の採用施策ではなく、企業ブランドや地域コミュニティとの信頼関係を構築する中長期的な取り組みとして位置付けることが重要です。制度や媒体を活用しつつ、入社後のキャリア形成まで視野に入れた戦略を立てることで、採用効果は大きく向上します。
地方企業がUIJターンを積極的に取り入れれば、人材確保の課題を解消するだけでなく、地域の未来づくりにも貢献できます。これからの人材戦略の一つとして、ぜひ取り組みを検討してみてください。
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