「パス型採用」とは?シニア人材の採用にも活かせる新しい採用手法を解説!

【企業向け】シニア採用

1.パス型採用とは?── 内定辞退者と“つながり続ける”新しい採用戦略

「パス型採用」とは、一度内定を出したものの辞退された候補者に対し、再度選考を受けやすくする“採用パス”を発行しておく新しい採用手法です。一般的なタレントプールのように幅広い母集団ではなく、「すでに一定の選考を通過した、企業との相性が高い人材」と再びつながることを目的としています。

たとえば、候補者が家庭事情や他社との比較で辞退した場合でも、「また働きたい」と思ってもらえれば、企業側は新たな募集をかけずに、質の高い再候補者を確保できるというわけです。

この採用手法は、2024年にシェアキャリア株式会社が発表したモデルで、内定辞退者に対して「再選考不要」「選考スキップ」などの特典を付けて、“また戻ってきやすい心理的ハードルを下げる”仕掛けとして注目されています【出典:PR TIMES|https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000156607.html】。

従来のように「辞退=終わり」ではなく、パス型採用では辞退後も関係性を維持することで、未来の採用機会を広げるという新しい考え方に基づいています。


2.なぜ今、パス型採用が注目されるのか?企業が直面する採用課題

採用活動において「内定辞退」は決して珍しいことではありません。リクルート社の調査によれば、新卒採用における内定辞退率は約60%(2023年時点)にも上ると言われており【出典:リクルート社「就職白書2023」】、中途採用においても「複数内定を比較して最終的に他社を選ぶ」といったケースは日常的です。

このような中で、企業が直面している課題は大きく3つあります。


1. せっかく内定を出したのに“無駄”になるコスト

書類選考・面接・評価・条件調整といったプロセスを経て、ようやく内定に至った人材が辞退することで、人事工数や選考にかけたコストがすべて損失になってしまいます。


2. 母集団の量と質が年々低下

少子高齢化や転職市場の流動性が高まる中で、企業はそもそも「応募者が集まらない」「求めるレベルの人材が来ない」という問題にも直面しています。過去に内定を出した人材こそ、信頼性の高い“潜在的な即戦力”です。


3. カルチャーフィットする人材はそう簡単には見つからない

実は、スキルよりも重視されるのが「カルチャーフィット」や「価値観の一致」。一度自社に興味を持ち、内定まで進んだ人材は、企業文化への理解や共感を得ている可能性が高く、ゼロからの選考よりもミスマッチが起きにくいのが特徴です。


こうした背景から、内定辞退者と関係をつなぎ直す「パス型採用」が注目を集めています。従来なら断ち切られていたはずの「内定辞退後の接点」に戦略的価値を見出すことで、企業は“再会のチャンス”を採用力に変えることができるのです。


3.パス型採用とシニア人材の相性が良い理由とは?

パス型採用は、内定辞退者と企業が“再びつながる”ことを前提とした採用手法です。そしてこの仕組みは、シニア人材との親和性が非常に高いと言われています。なぜなら、シニア世代が持つ働き方の志向やライフステージの変化が、この採用アプローチと見事に噛み合うからです。


1. 「そのときは無理でも、将来なら働きたい」というケースが多い

シニア人材の中には、健康・介護・家族の都合など、一時的な事情で「せっかく内定をもらったのに辞退せざるを得ない」という人が少なくありません。しかし、そうした状況が数か月~1年で変化することもよくある話です。

パス型採用は、そうした「将来的に働けるかもしれない」人材と、関係性を保ち続けることができるため、一度きりで終わらせない“機会の再創出”が可能です。


2. “人柄や経験”を重視した採用にマッチする

シニア人材は、年齢的にスキルの最新性では若手に劣る場面もありますが、長年の経験や落ち着き、人柄などが評価されることが多いです。パス型採用では、形式的な条件にとらわれず、「この人ならいつかお願いしたい」と感じた人に“再来パス”を渡せるため、企業にとっても“温めておきたい人材”を囲い込むことができます。


3. 企業側の心理的ハードルも下がる

「年齢がネックで本当に活躍してもらえるか不安」という企業の声もあります。しかし、すでに選考を通じて人柄や価値観に触れている内定辞退者であれば、再エントリー時の懸念も少なく、即戦力として迎え入れやすいのです。


このように、パス型採用は「一度の辞退=ご縁がなかった」ではなく、“またいつか働く”ための仕組みとして、シニア人材にとっても企業にとっても“柔軟で現実的な採用の選択肢”となります。


4.辞退後の“つながり”を育てる!パス型採用の具体的な実践方法

パス型採用は、「またいつでも来てくださいね」という気持ちだけでは成立しません。辞退後も候補者との関係性を保ち、“再エントリー”が現実的な選択肢として機能するような工夫と設計が必要です。ここでは、パス型採用を機能させるための具体的な実践方法を紹介します。


1. 辞退時に「パス発行」を明確に伝える

内定を辞退された際に、「今回は残念でしたが、あなたには再エントリーパスをお渡しします。いつでも再応募を歓迎します」といったメッセージを伝えることで、候補者に対するポジティブな印象を残せます。

このとき、再選考が不要になる、もしくは面談を一部スキップできるなど、具体的な特典やプロセス簡略化を明示することが重要です。


2. 定期的な情報提供で関係を維持する

辞退者との関係を維持するためには、定期的な情報発信が有効です。たとえば以下のような方法があります。

・ニュースレターで会社の最新動向や採用情報を共有
・OB/OG向けの社内イベントや勉強会への招待
・季節の挨拶や人事異動などの“人間味ある”情報提供

これにより、候補者は企業との心理的距離を感じにくくなり、「戻るならこの会社」という印象を継続させることができます。


3. 再エントリーの導線を明確にする

「また来てね」と言っておきながら、いざ再応募しようとすると応募フォームが見つからない、という状況では意味がありません。

・パス保有者専用のエントリーフォームを用意する
・メール文末に“再応募はこちら”というリンクを設ける
・再応募時の流れを簡単な図やFAQで可視化しておく

など、“戻りやすい設計”を事前に用意しておくことがポイントです。


4. 温かなコミュニケーションを欠かさない

シニア人材の多くは、「この会社なら安心して働けそう」という“人”や“雰囲気”を重視します。そのため、パス型採用においても、辞退後のフォローで感じの良い対応をされるかどうかが再応募意欲を左右します

たとえば「○○様のような方にまたいつかご縁をいただけたら嬉しいです」といった、一人ひとりに向き合ったメッセージが、後々の再接点に大きく影響します。


このように、パス型採用は「出会いの一度きり」を“採用資産”として活かす戦略。候補者との関係性を「丁寧に育てる」ことが、次の採用成功につながっていくのです。


5.パス型採用を機能させるために企業が整えるべき3つの仕組み

パス型採用は画期的な考え方ですが、仕組みがなければ形骸化してしまうリスクもあります。内定辞退者と継続的な関係を築き、再エントリーを実現するには、企業側が社内体制を整えることが不可欠です。

ここでは、パス型採用を“実際に機能する仕組み”として定着させるために整備すべき3つの要素を紹介します。


1. 辞退者データベースの構築と運用

内定辞退者の情報を、通常の不採用者とは区別して管理する必要があります。

・辞退理由(転職先の状況や家庭の都合など)
・評価履歴(面接時の印象、強み・弱み)
・パスの有効期間や条件(再エントリー時に必要な対応など)

これらをクラウド上やATS(採用管理システム)で適切に管理することで、「今、再度声をかけてもよいかどうか」の判断がしやすくなります


2. 社内での意識統一とナレッジ共有

パス型採用を成功させるには、人事部門だけでなく現場マネージャーや役員クラスとの情報共有が不可欠です。

・パスを出した人材に対する「過去の評価」をチームで共有
・再エントリーの際の選考フローを簡素化する合意形成
・「なぜこの人は一度辞退したのか」という理解の共有

など、社内全体で「辞退者を再歓迎する文化」を醸成することが求められます。


3. 再エントリー制度の設計とルール化

再エントリーを実際に機能させるためには、選考プロセスや優遇措置の明文化が必要です。

例:
・再応募時は履歴書・職務経歴書の提出を省略可能
・面接を1回スキップ可能(前回の選考内容を参照)
・再エントリーは内定辞退から6か月〜1年以内に限る など

このようなルールを定め、パス保有者にも明示することで、企業と候補者双方にとって安心感のある再応募環境が整います。


これら3つの仕組みを整えることで、パス型採用は単なる“名ばかりの制度”ではなく、持続可能で戦略的な採用チャネルとして活用できるようになります。


まとめ|“一度の辞退”をチャンスに変える、これからの採用の考え方

これまでの採用活動において、「内定辞退」は企業側にとって苦い経験であり、ほとんどの場合その時点で関係性は終了していました。しかし、パス型採用はその常識を覆します。

一度内定を出したということは、企業にとってその人材が一定の信頼に足る存在であると認めた証です。ならば、「今回はご縁がなかった」で終わらせるのではなく、将来また“出会い直せる”土壌を残しておくことが、持続可能な採用戦略につながるのです。


パス型採用は「人と人との関係性を資産に変える」手法

特にシニア層においては、働くタイミングが一時的な事情で左右されるケースが多く、「今は無理でもいずれ働きたい」と考える人は少なくありません。

パス型採用は、そうした人々の気持ちに寄り添いながら、企業にとっても優秀な人材との接点を維持できる“Win-Win”の仕組みです。カジュアルな関係性の中で信頼を深め、必要なときに声をかけられる。まさに“辞退をチャンスに変える”柔軟な採用の考え方といえるでしょう。


採用は「一度きり」から「何度でも」へ

これからの採用においては、「タイミング」「環境」「心の余裕」など、候補者の多様な事情を受け止められる柔軟性が求められます。パス型採用は、そうした背景を理解しつつ、企業が自社に合う人材との関係を丁寧に紡いでいくための手段です。

“内定辞退者”を採用資産として捉える発想が、採用力そのものを底上げしていく。
それが、これからの時代にふさわしい採用戦略の一つとなるでしょう。

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